小柳ゆき、会話下手が歌手になった理由「人前で歌うと心の距離が縮まった感じが」

『あなたのキスを数えましょう』『愛情』『be alive』など数々のヒット曲を持つ歌手の小柳ゆきが、約3年ぶりにシングル『BREAK THROUGH』をリリースした。テレビ朝日系音楽番組『BREAK OUT』(水曜深夜1時26分)の10月度エンディング曲に決定し、小柳が作詞、作曲を手掛けた。デビュー24年目を迎え、「音楽と向き合うことが心から楽しい」と語る小柳の今に迫った。

3年ぶりのシングル『BREAK THROUGH』で作作曲を手掛けた小柳ゆき【写真:徳原隆元】
3年ぶりのシングル『BREAK THROUGH』で作作曲を手掛けた小柳ゆき【写真:徳原隆元】

3年ぶりのシングル『BREAK THROUGH』で作詞作曲に挑戦

『あなたのキスを数えましょう』『愛情』『be alive』など数々のヒット曲を持つ歌手の小柳ゆきが、約3年ぶりにシングル『BREAK THROUGH』をリリースした。テレビ朝日系音楽番組『BREAK OUT』(水曜深夜1時26分)の10月度エンディング曲に決定し、小柳が作詞、作曲を手掛けた。デビュー24年目を迎え、「音楽と向き合うことが心から楽しい」と語る小柳の今に迫った。(取材・文=福嶋剛)

 小柳は2019年に個人事務所を立ち上げた。理由は「より音楽活動に集中できる環境を整えたい」だった。コロナ禍を経て、ライブやイベントなど全国で歌う機会も増えてきた。そして、観客と近い距離でフレンドリーなステージを重ねている。

「デビューしてから歌うことの楽しさは今も変わりませんが、独立してより一層、そういった環境を作ることができています。私自身も『楽しんでいる』という感覚を持ちながら音楽と向き合っていて、思わぬところからお話をいただいて新たな目標が生まれたりしています。それによって次につながる発見もあり、『この先、何が起きるのか分からない』というワクワク感があります。面白くて楽しいです」

 取材当日、小柳は都内でフリーライブを行った。小柳が代表曲の『あなたのキスを数えましょう』を歌い上げると、心を震わされて涙する観客が多くいた。

「とってもありがたいです。もともと私は人と会話することがすごく苦手で、それに代わるコミュニケーションが歌でした。子どもの頃から人前で歌うと目の前の人たちと心の距離が縮まった感じがしていました。そして、『歌ってこんなに楽しくつながることができるんだ』と思い、歌手になろうと決めました。それからお客さん一人一人の表情や反応を見ながら、その場所、その時間でしか共有できない歌を歌いたいと思って、ずっとやってきています。ようやく、そんな理想に少しずつ近付いてきたかなって思うようになりました。でも、普段の私は変わらず会話下手なので、ステージに上がる直前に自分のスイッチを切り替えているんです」

 小柳のターニングポイントとなったのが、昨年にリリースしたカバーアルバム『RARE TASTY』だ。Official髭男dismやMrs. GREEN APPLE、アニメ『呪術廻戦』のテーマ曲『廻廻奇譚』といった最新のJ-POPから大先輩にあたる浅川マキ、谷山浩子のポップスまで幅広くカバーしたことで、シンガーとして大きな刺激をもらった。

「あえて一筋縄では歌わせてくれないような難しい曲ばかりを選んで挑戦してみたんです。それぞれの曲のキャラクターを演じながら歌うという表現が楽しくて。その後の全国ツアーでも、今までとは違う新鮮さを味わいながらステージに立たせていただきました」

 新曲『BREAK THROUGH』は、そんな前作の流れを受け継ぎながら、さらに新しい試みにもチャレンジしながら作詞作曲を手掛けた。

「カバーアルバムで得たことを次の作品に生かしたいと思い、今までの自分にはない新しいものを作りたいと思って、キーボードとパソコンを使って曲を作り、後から歌詞を書きました。まずはビートの構成から作り始め、アレンジャーの鳥越啓介さんと一緒に考えていくうちにどんどんやりたいことが広がっていき、はじめは管楽器を入れようと思ったところに弦楽器を入れてみたり、曲も『ワンハーフ』と言って、2番が存在しない構成にして、かなり時間を掛けながら完成させました」

 冒頭から闇を切り裂くドラマチックな展開で、主人公が力強く前に進んでいく様子が音と歌声で描かれている。

「1枚のイラストを頭の中で想像しながら曲を作りました。サウンドを色にたとえると深みのある真っ赤な色(深紅)。そんなイメージから広げていきました。困難な現実という壁に直面した際、見なかったフリをするのか?それともぶち当たりながらも一歩踏み出すのか。その一歩を踏み出すことで、少しでも変わることがあるのではないかと。そんな今を打破(=ブレークスルー)していきたいという思いを歌詞にしました。歌入れは比較的スムーズでした。前作『RARE TASTY』のレコーディングで発見したことがきっかけで、『結構、低い声も出るぞ』と気づかせてもらい、今回は己の作品ではあまり歌ってこなかった低い声域のパートも取り入れました。」

10月に大阪と東京でライブ『カミナヅキの音楽会2023』を開催【写真:徳原隆元】
10月に大阪と東京でライブ『カミナヅキの音楽会2023』を開催【写真:徳原隆元】

小柳流のストレス解消法は「筋トレ」

 新曲を携えて10月には『カミナヅキの音楽会2023』と題し、メルパルクホール大阪と日経ホール(東京)の2か所でライブを開催する。

「10月は秋祭りが多い時期なので、今回は日本の秋の香りを感じてもらえるような、そんな雰囲気のライブにしたいと思っています」

 最後に曲作りなど煮詰まった時のストレス解消法を聞くと、「筋トレです」と答えた。

「大そうなトレーニングじゃないんですが、小柳流のルーティンがあります。筋トレをすると体中にエネルギーがみなぎってくるんですよ(笑)。やる気スイッチが入って、筋トレ中にアイデアや答えが出てくることも結構、多いんです。今回の曲は筋トレで“ブレークスルー”しました(笑)」

□小柳ゆき 1982年1月26日、埼玉県生まれ。現役高校生のシンガーとして、「あなたのキスを数えましょう~You were mine~」で99年にデビュ-。NHK紅白歌合戦には3回出場。2002年、サッカーW杯の決勝戦前夜祭イベントでは、世界的アーティストのBOYZ II MENと共演した。近年はフル・オーケストラ単独公演を開催するなど、ライブを中心に活動の幅を広げている。

小柳ゆき【カミナヅキの音楽会2023】
<大阪公演>
開催日 10月14日(土)
会場 メルパルクホール大阪
時間 午後4時開場/同5時開演

<東京公演>
開催日 10月21日(土)
会場 日経ホール
時間 午後4時開場/同5時開演

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