娘の「最後の大学授業料を振り込んで契約」 50代女性、子育て終えて再燃した“サーキットの夢”

真っ赤なトヨタ86、ボンネットやボディー横にはおしゃれなデザインの“桜”が咲いている。持ち主は、桜井圭子さんだ。子育てが落ち着いた50代、現在は女性サーキットグループやオフ会主催などパワフルに活動している。若い頃はレースクイーンに憧れ、車業界で仕事をしてきた。夢だったサーキットに今、ドはまり中だ。愛車人生をフルスロットルで走り続けている。

2012年式の真っ赤なトヨタ86は初期ロットの貴重モデルだ【写真:ENCOUNT編集部】
2012年式の真っ赤なトヨタ86は初期ロットの貴重モデルだ【写真:ENCOUNT編集部】

ほぼノーマル仕様のこだわり、元レーサーに師事して筑波サーキットで練習の日々

 真っ赤なトヨタ86、ボンネットやボディー横にはおしゃれなデザインの“桜”が咲いている。持ち主は、桜井圭子さんだ。子育てが落ち着いた50代、現在は女性サーキットグループやオフ会主催などパワフルに活動している。若い頃はレースクイーンに憧れ、車業界で仕事をしてきた。夢だったサーキットに今、ドはまり中だ。愛車人生をフルスロットルで走り続けている。(取材・文=吉原知也)

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 2012年式の前期A型、初期ロットだという。17年に中古で購入した。「実は1台目として、86のA型のオートマに乗っていたのですが、マニュアルに乗りたいな、サーキットで走りたいなと思って、10か月ぐらいで乗り替えました。サーキット仕様にするためにベース車両を探していたら、走行距離1万6000キロだったこのクルマが見つかったんです」。1台目の購入時はまな娘の大学卒業のタイミングで、「最後の授業料を振り込んで、契約しに行ったんですよ」と振り返る。

 人生の新たな区切りで、スポーツカー。そんな桜井さんは、根っからのクルマ好きだ。日産、三菱で工場の受付として働き、ワイパーゴムなどの簡単な部品交換も担った。BMWの販売店で働いた経験もある。「当時はS13シルビアに乗っていたんですよ」と笑う。

 若い頃は夜な夜な山道に繰り出していた。「1000円分のガソリンを入れて、カラになったら帰ってくる。そんなクルマ遊びをしていました。自分のご飯の代わりにクルマのご飯にする感じです(笑)。レースクイーンになりたくて、車業界で働くようになりました。レースのサポートをする仕事にも憧れたんです」。ただ、サーキットで走って遊ぶ機会は少なかった。

 子育て中は軽自動車のターボのマニュアルに乗っていたぐらい。一段落してから、「サーキットを走りたい」。お金にも余裕が出てきて、若い頃の情熱が再び燃えたぎった。

「今はすっかり昼型になりまして(笑)。筑波サーキットのコース2000、コース1000、ジムカーナ場でドリフト練習の日々を送っています」。10月のシーズンインから3月まで、月2回ほど通う。元レーサーの師匠から厳しくも温かい指導を受けているといい、「いいタイムが少しずつ出せるようになってきました」と充実感がにじむ。

「若い女の子にも楽しい自分の時間を見つけてほしいです」

 愛車の仕様にはこだわりが。「ノーマルで見た目からは分からないけど、サーキット場で走ったら速い」。これがモットーだ。カスタムはほぼ足回りのみで、ノーマルエンジン。マフラーは後ろだけ交換し、コンピューターのリミッターカットを施したぐらいで、「それぐらいしかいじってない」。タイヤも17インチでなるべく太くしない純正に近い仕様で、「もともと持っているポテンシャル」を最大限に生かす走りを目指している。

 セッティングの知識が深まり、運転技術も向上。自分自身がレベルアップを遂げているが、それでも、同じ86での師匠の走りと比べると、約2秒の差があるという。「師匠からは『100%を使い切っていない』と言われます。タイムを縮めるために、アクセルをしっかり踏んで乗りこなせるように練習あるのみです。もちろん、サーキットの走りを存分に楽しんでいます。若い時の夢をかなえられました」と笑顔で話す。

 これからも「ずっと乗るでしょうね。よく、『手足のようになる』と言われるのですが、乗り始めた頃は分かりませんでした。今はこの感覚がつかめてきました。このクルマとしゃべりながら走っています」。

 サーキット仲間には同世代の人も多く、「趣味が何もない人生より、何かに情熱を傾けられるほうが楽しいですよね」と実感する日々だ。それに、サーキットグループを率いることにも深い理由が。「自分が若い頃はSNSもなく、サーキットの情報をなかなか知ることができませんでした。若い女の子にも楽しい自分の時間を見つけてほしいです。興味があっても、『どうやったらサーキットに行けるのか』を知らない子も多いです。入り口を見つけたことで実際にハマっている子もいます。若い子のために門戸を広げて、道を教えてあげられれば」という信念を持っている。

 もう1つ、描く未来がある。「娘はクルマにあまり興味を持っていないのですが、バネを交換するなどセットを変えると、横に乗ったら『部品、何かした?』と気付くんです。娘と一緒にツーリング、というのもいいですよね。いつか興味を持ってもらえれば」。桜井さんの夢は大きく、長く続いていくだろう。

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