生駒里奈「『生駒ちゃん、すごいじゃん』って思ってもらうのが目標」 ホラー作品で新境地「いい経験に」

南の島に伝わる怨念(おんねん)とメタバースを融合させたホラーの巨匠・清水崇監督の最新作『忌怪島 きかいじま』(6月16日公開)。VR研究チーム「シンセカイ」のメンバーでプログラマー深澤未央を演じた俳優・生駒里奈は「私がやることによって、どうやってバランスよく物語を進められるか。そこに挑戦できることを目標に頑張りました」。達成感を尋ねた。

映画『忌怪島』で深澤未央役を演じた生駒里奈【写真:荒川祐史】
映画『忌怪島』で深澤未央役を演じた生駒里奈【写真:荒川祐史】

映画「忌怪島/きかいじま」で従来の“生駒ちゃん”脱却

 南の島に伝わる怨念(おんねん)とメタバースを融合させたホラーの巨匠・清水崇監督の最新作『忌怪島 きかいじま』(6月16日公開)。VR研究チーム「シンセカイ」のメンバーでプログラマー深澤未央を演じた俳優・生駒里奈は「私がやることによって、どうやってバランスよく物語を進められるか。そこに挑戦できることを目標に頑張りました」。達成感を尋ねた。(取材・文=渡邉寧久)

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「いただいたチャンスは全部やります」。それが仕事に対する生駒の流儀でありスタンスだ。とは言え、今作の場合、生駒にはふたつの気がかりがあった。ひとつは「ロケ地への不安」、もうひとつは「引きの演技」だった。

「ロケ地を聞いたら、奄美大島に行きます、って。え!?とびっくりしました」という生駒は、南の島に行くことも人生初だったという。

「夏と日焼けがとにかく苦手で、さらには暑いのも苦手だから大変じゃん……」という当初の印象は、現地入りするとガラリ一変。「私、秋田生まれなので日本海しか知らなくて、海って磯の匂いがしてベタベタするイメージがありました。奄美大島は全然磯の匂いがしないし、海水もサラサラしていて。なんだ、いいじゃんって(笑)。でも、日焼けと虫刺され対策で長袖を着ていました。楽屋に蚊がいると逃げ回っていましたね」と振り返る。かばんの中には虫よけグッズをたくさん忍ばせ、ロケ地入りした。

 撮影中に一度帰京したが、奄美大島には都合2週間弱滞在した。

「奄美大島と言えば、ビッグII(ツー)なんです。ホームセンターやスーパーが融合した最強のお店があって、スタッフさんもみんなとりこになりました。自然もいいんですが、時々都会も恋しくなる。ビッグIIに行けばなんでもありました」と、ロケ中で見つけた憩いの場を紹介。そこで買い求めたオリジナル商品「ビッグIITシャツ」は「今もあります、お気に入り!」と笑顔で伝える。

 丸1日オフの日には、共演者の平岡祐太、祷キララ、川添野愛と4人で「大島紬村」に足を運び、地元を満喫した。

「田んぼみたいなところで体験できる泥染めがあるんですが、みんなで裸足になって、泥の中に足を入れて盛り上がりました。他のキャストのTシャツも分担して作ったんですが、高校のときに修学旅行に行けなかったので、修学旅行に行っている気分でした」と仕事以外で充実感も味わえた。

撮影中、主演の西畑大吾には特に感心したという【写真:荒川祐史】
撮影中、主演の西畑大吾には特に感心したという【写真:荒川祐史】

「引きの演技」を常に頭に

「ロケ地への不安」は共演者とのワチャワチャしたオフタイムなどもあり、見事に霧散した。もうひとつの気がかりは「引きの演技」だ。その真意を、生駒が明かす。

「衣装合わせのときに、監督が、私が演じる役の人柄や『シンセカイチーム』の人間関係や、監督の頭の中に宇宙のように広がっているイメージを教えてくれました。それをいただいて、こういう感じかなとチューニングした感じです」という基本演技に、「普段の自分よりもテンションを2個、3個上げつつも、普通の人でいようとしました。癖が強いキャラクターが多く、同じように癖を出してもけんかになると思ったので、そこはみんなの芝居を見ながら作っていました」と、演技の引き算を常に頭の中で行っていたという。

「私、そういうのがやりたかったのでうれしかったです。というのも、“生駒ちゃん”の印象もあるし、舞台でも作品でもありがたいことに真ん中に立たせていただくことが多い分、引くってことが分からなかった。どうやって引いて、周囲と調和して、バランスを取るかということに挑戦してみたかったので、いい経験になりましたね」

 自分の中の引き出しから、これまでとはちょっと違う“生駒ちゃん”を出し入れするスキルを、今作で生駒は手に入れることができた。

 共演者とは年齢も近く、「最初は緊張していましたが、奄美大島の陽気な雰囲気もあり、仲良くなれました」と、チームの人間関係も生駒には心地よかった。特に感心したのは、主演の天才脳科学者・片岡智彦を演じるアイドルグループ・なにわ男子の西畑大吾だったという。

「アイドルをやって、俳優をやって、という境遇が似ていると感じました。アイドル時代の当時言えなかった悩みもお話して、共感してもらえたのがすごくうれしくて。彼は奄美大島と東京を行ったり来たりしていて、でもしっかり芝居を作っているし、仕事に向かう姿勢を含めてみんなで頑張ろうと思わせてくれる方だった」と絶賛を惜しまない。

 アイドルグループ・乃木坂46の卒業から約5年。映画や舞台、ドラマで新境地を開き続ける生駒だが、「3年ぐらいやって、仕事もなくなって、辞めるんだろうなという気持ちでの卒業でした」と不安含みの本音を漏らす。そんな予想に反して、引っ張りだこの現状に、「自分って意外とやるじゃん!」と自身にA評価を付ける。

「この映画のメンバーもそうですが、舞台を通して知り合った友達や、人との出会いがあった。そんな中で仕事をさせていただいているのが毎回奇跡だと思いますし、ありがたいし、考えていたより何百倍も楽しい日々を過ごしています」と周囲への感謝を忘れない。

 一作ごとに、俳優・生駒里奈を塗り替え、周囲の期待に応えたり、意表をついたりしながらの日々。先々に見据えるのは、自分でもまだ出会ったことのない未知の俳優・生駒里奈だ。

「すてきな作品に出会えて、自分を俳優にしてくれた人たちに『頑張ったね』って思ってもらえることが一番の目標です。舞台でも映画でもドラマでも『生駒ちゃん、すごいじゃん』って思ってもらうのが目標です」

【映画『忌怪島/きかいじま』ストーリー】
シャーマンが住む南の島でVR研究を行うチーム「シンセカイ」。脳科学者やプログラマーで組織された彼らの周囲で、不可解な出来事が相次ぐ。島を覆う怪奇現象と死。その背後に“イマジョ”と呼ばれた赤い女の存在がちらつき出す。呪われた島を舞台に現実と仮想世界を行き来する2つの恐怖を描くホラー作品。

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