サビ・穴だらけのボロボロから“お宝アメ車”が完全復活 レストア費用は「数百万円かかっちゃった」
日本で走っているモデルとしては激レアというアメ車に乗るのは、57歳の真面目な研究者。愛車は、1968年式ビュイック・リビエラだ。ボロボロ状態から、情熱のレストアで復活させた。宮鍋征克(まさかつ)さんは、生粋のアメ車ライフを存分に楽しんでいる。
「普段は研究所で過ごしていますが、休みになれば、アメ車趣味全開」 全米を駆け回った20代
日本で走っているモデルとしては激レアというアメ車に乗るのは、57歳の真面目な研究者。愛車は、1968年式ビュイック・リビエラだ。ボロボロ状態から、情熱のレストアで復活させた。宮鍋征克(まさかつ)さんは、生粋のアメ車ライフを存分に楽しんでいる。(取材・文=吉原知也)
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「派手なデザインじゃない。でも、シンプルながら、センスあふれるこのボディー全体の曲線がいいんですよ。50~60年代の優雅な時代のモデル。昔から好きで、ずっと欲しかったんです」。
シャンパンゴールドのボディーカラーが、洗練されたオーラを放つ。宮鍋さんが知る限り、このモデルは日本に2、3台しかないという。
これまで何十台もの米国車に乗ってきた無類のアメ車好きだ。若い頃は米国を駆け回って仕事をしていた。「21歳からロスに行って、車関係の仕事をしていたんです。日本の購入希望者からリクエストを受けて、車を探して、輸出をするシッパーの仕事で、自分で会社をやっていました。30数年前、全米を走り回って探していたんですよ」。仕事の相棒はもちろんアメ車だった。
この米国経験が現在も生きており、約10年前に米国から取り寄せたリビエラの個人輸入は難なくできたという。ただ、リビエラ自体を探すことには苦労した。「アメリカにも数が少ないので、大変でしたよ。完璧に仕上がっている中古車はかなり高くて、日本円で800万円~1000万円の値段になります。なので、ある程度修理が必要な個体を安く買って、それで自分で仕上げているんです。むしろ、自分でレストアするのが面白い。自分のお気に入りの仕様に仕上げるのが楽しいんですよ」と話す。
何より大変だったのは、レストアだ。エンジンはかかったが、見た目は“廃車寸前”だった。「穴だらけ、サビもすごくて、もうボロボロでした」。アメ車好き仲間たちの力強いサポートを得ながら、修理に取り組んだ。
「後輩の1人が自宅にアメ車専用のガレージを作っていて。そこに置かせてもらって、仲間数人と一緒にコツコツ整備をしました。特に苦労したのは、ルーフ。もともとレザートップ仕様で、レザーをはがしてみたら、穴だらけで驚きました。専用の素材を埋め込んで、塗装をやり直して。結局、全塗装しました。エンジンは生きていたので、本体はそのままですが、エンジン回りと電気系統はかなり手を入れました。キャブやラジエーターなど、すべて部品を交換しました」。仲間たちと仕事終わりの夜間や休日に作業に取り組み、半年から約1年かけて、見事に復活させた。
よみがえった伝統の1台。「リビエラは当時、キャデラックより高くて、トップの部類に位置づけられていた車。乗ってみると、やっぱりこの優雅さ、安定感。乗り心地は最高です」と、仕上がりに大満足だ。そして、「アメ車は、ほとんど雨の降らない西海岸のものはサビていなくて、東海岸はサビが多い。中古車の値段もだいぶ違うんです。このリビエラは東海岸のニューヨークの方を走っていたもので、サビだらけで、それだけに安かったんですよ。でも、だいぶ安く買ったのに、レストア費用は数百万円かかっちゃったかな」と笑う。
アメ車コレクションは、リビエラに加えて、シボレーC10トラックと、「世界に数台しかない」という、70年式ジープ・ワゴニア1414X。貴重な旧車で、しかも米国の部品となると、日本ではなかなか手に入らない。そこも米国滞在経験が生きてくる。今も盤石な現地の人脈を頼り、「向こうの仲間に探しまくってもらっているんですよ」。こうして、大事に大事に乗り続けている。
現在は、医薬品や健康食品の関連分野の研究職に就いている。日々研究にはげみ、学会に論文発表をする忙しい日々を送っている。「普段は研究所で過ごしていますが、休みになれば、アメ車趣味全開で、アメリカンに変わります。周りからよく『宮鍋さんのギャップがすごい』とよく言われるんですよ(笑)」。そんな宮鍋さんにとって、カーライフとは。「10代の頃から車が好きで、ずっとアメ車に乗ってきて、レストアで自分の好きなように仕上げるというスタイルを続けてきました。仕事についても今もアメリカに関わっていて、アメ車は僕にとって、共に歩んできた仲間ですね」と実感を込める。
そんな宮鍋さんは、まだまだ大きな夢が広がる。乗ってみたい車を聞くと、「これまでいろいろなスポーツカーにも乗ってきましたが、これからは“ちょっとマニアック”な方向を考えているです。プリムス・ロードランナーに乗りたい気持ちもあるけど、映画の『ワイルド・スピード』で人気になり過ぎちゃって、べらぼう高い。ちょっとマイナーな、例えば、リンカーンの古いモデルとか、そういった面白い車を探していきたいです」。少年のように目を輝かせた。