プロレス会場で“よく見る”実業家を直撃 コミッショナー推挙の声も上がる敏腕社長
「プロレス大会やイベント会場で、この人をよく見かける」と最近、話題なのが「激落ちくん」、「バルサン」を始めとする総合家庭用品メーカー、レック株式会社の代表取締役社長・永守貴樹氏である。
毎週金曜日午後8時更新 柴田惣一のプロレスワンダーランド【連載vol.146】
「プロレス大会やイベント会場で、この人をよく見かける」と最近、話題なのが「激落ちくん」、「バルサン」を始めとする総合家庭用品メーカー、レック株式会社の代表取締役社長・永守貴樹氏である。
ある時はリング上で選手を激励し、またある時は会場実況席で解説を務めるなど大活躍。プロレス団体の大会サポートはもとより、ホームセンターをはじめドラッグストアなどの店舗でのプロレス、はたまた自社工場でのプロレス……団体の大小を問わず、プロレスといえばこの人がいる。最初は「あの人は誰?」だったが、だんだん認知度が上がってきた。
プロレス団体のサポートやプロレス大会、イベントを開催するのは売り上げ向上のためというが、レック商品を購入したレシートで、試合も観戦できる上に選手とも触れ合える。ファンにとってもたまらない。
ここ数年でプロレス団体やプロレスラーとの交流が増えたという永守氏。実はプロレス観戦歴は40年以上と長い。小学校低学年のときに登場した初代タイガーマスクに衝撃を受けた。金曜午後8時のプロレス中継に心躍らせ、翌日には学校でプロレスごっこ。プロレスが身近にあった時代だ。
新日本プロレスの激闘に加え、全日本プロレスの強豪外国人レスラーにワクワク。スーパーヘビー級の外国人よりも大きいジャイアント馬場さんや、互角に渡り合うジャンボ鶴田さんの大きさに驚かされた。
レスラーたちがテレビのバラエティー番組に出演し、タレントたちと並んだときの身長の高さだけでなく、体のブ厚さにまたまた衝撃を受けたという。
レスラーを目指した時期もあった。柔道に励んだりしたが、身長は173センチ。「キッパリとあきらめた」と本人は笑う。
大学を卒業し銀行を経て2012年にレック株式会社に入社。翌13年には社長に就任し、赤字だった会社を黒字経営にするなど手腕を発揮してきた。
「挑戦・実践・価値創造」を掲げ「挑戦し続けることで、お客様の生活を豊かにしていきます」という永守氏。会社を躍進させるために、白羽の矢を立てたのが大好きなプロレスだった。
多くのライバル商品が並ぶ棚からレック商品を選んでもらうためには、どうしたらいいのか。シェア拡大のためには、何をすべきか。
ホームセンターやスーパーの駐車場スペースにはプロレスのリングがぴったり。買い物レシートを握りしめたお客さんはもちろん、プロレス団体、プロレスラー、そして空いた空間を有効できるお取引先、もちろんレックもハッピーになれる。いわば「売り手良し」「買い手良し」「世間良し」の「三方良し」。近江商人の心得ではないか。
生活商品を手にし使うのは、主に主婦を中心とした女性たちはもちろん、買い物には子どもがついてくる場合も多い。ホームセンターにはお父さんが車を運転してやってくる。ファミリー向けに何かないか。老若男女、幅広い層が楽しめるのがプロレス。子どもたちはどんどん大きくなる。世代が受け継がれプロレスファンが増加する。
「すべては商売のためです」と言い切るが、根底には深いプロレス愛がある。小学生の頃から熱くなったプロレスへの思い入れが伝わってくる。一枚の買い物レシートをきっかけに、新たなファン層が開拓され、大会を開催することで団体も選手も活躍の場が増える。思わぬ場所でのゴングは、企業にとっては社員への福利厚生の一環にもなる。
盛り上がる会場での厳しくも温かい視線、選手たちとの食事会での何ともうれしそうな表情……永守氏の周辺にはプロレスLOVEがあふれている。
大好きなプロレスで仕事も発展させる。何とも充実した人生だ。
「コミッショナーはどうですか?」と言われることもあるという。「いやいや」と謙遜する永守氏だが、その剛腕ぶりを見れば、ひょっとするかも知れない。