ボロボロでサビだらけ→驚愕ビフォーアフター ベスパをレストア、ボディー溶接「ほぼ手作り」

ボロボロでサビだらけのベスパが完全復活――。ボディーは溶接・加工して、ほぼ「手作り」というから驚きだ。原動力は「謎の自信」。41歳男性整備士のrilly(@rilly95178291)さんが、3か月かけて取り組んだ魂のレストア物語とは。

修理前のベスパ・スプリントヴェローチェの車体【写真:rilly(@rilly95178291)さん提供】
修理前のベスパ・スプリントヴェローチェの車体【写真:rilly(@rilly95178291)さん提供】

エンジンは8回分解、約35万円の費用で完了「絶対直せる謎の自信に満ち溢れてた」

 ボロボロでサビだらけのベスパが完全復活――。ボディーは溶接・加工して、ほぼ「手作り」というから驚きだ。原動力は「謎の自信」。41歳男性整備士のrilly(@rilly95178291)さんが、3か月かけて取り組んだ魂のレストア物語とは。(取材・文=吉原知也)

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 1978年式のベスパ・スプリントヴェローチェ。サビと腐食が見受けられる状態から、修理過程、そして、輝くクリーム色の“完成形”まで、ビフォーアフターが写真ではっきりと分かる。rillyさんは「ボロボロで安かったから全く悩まなかったなぁ。絶対直せる謎の自信に満ち溢れてたからワクワクだった むしろレストア途中の方が沢山悩んだ」とツイート発信。「# 今のバイクを買う時にどれだけ悩んだ」のハッシュタグを受けた投稿だ。

 rillyさんは2級整備士兼溶接工で、工場長を務めており、普段はタンクローリーの整備を主な仕事としている。

 バイク乗りの経歴は筋金入りだ。18歳くらいでホンダ・スーパーカブに乗り、「映画『さらば青春の光』に影響を受けて20歳で50ccのベスパ、22歳頃にエストレア、その後、望月峯太郎さんの漫画『バイクメ~ン』でトライアンフに憧れて大型免許を取りに行きましたが、たまたま手に入れた350ccのt-90に乗りました。その後はラビットs301を買い、鉄スクーターのよさに気づき、2022年6月に鉄くずとも言える今のベスパを買いました」とのことだ。

 ベスパに関しては「50sに乗っていた頃からGSの憧れが強く、手に入れたくても出合いがなく、今に至ります。たまたま安く見つけたラージボディー。自分の技量を試したくて、サビで誰も買わないであろう個体を買いました」。フルレストアは、自分への挑戦でもあった。

 苦労の絶えない作業の連続だった。

「鉄のモノコックボディーの構造です。ステップボードの溶接に加えて、腐りは全部切除して1ミリの鉄板を溶接し、切り貼りして(ボディー部分の)アールを作りました。かなりいろいろな鉄板が溶け込んでます(笑)。ボディーの溶接で困ったことは、そもそも薄く、作業が難しい上、サビた部分の溶接が乗らないなど大変なことばかりでした」と振り返る。

 さらに、「塗装の下はほぼ手作りボディーになっています。中心の空洞部分は切開し、サビ止めを塗って、ふたをしてます。色は昔乗っていた思い入れのあるシトロエン2cvのクリーム色を調色してもらい、塗装を施しました」。こだわりを詰め込んだ。レストア自体は約3か月で完了。部品代のみで、約35万円ほどの費用をかけた。「感動したのは、ボロを買ったその日にエンジンが始動できたこと、そして、レストア後の試走の時の感動は今でも忘れません」と実感を込める。

整備士のrillyさんは執念のレストアでベスパを復活させた【写真:rilly(@rilly95178291)さん提供】
整備士のrillyさんは執念のレストアでベスパを復活させた【写真:rilly(@rilly95178291)さん提供】

「愛情を持って育ててあげること。また、現行のバイクのように壊れないバイクを作ることは可能です」

 実績のある整備士として、復活までの道のりの詳細について教えてくれた。

「原動機のレストアに関しましては、150ccから177ccにボアアップし、それに伴いシール、ベアリングの交換、クラッチ、ギヤの新調、ワイヤーからメーター、コイル、ライニングも全替しています。ほぼ新車に近いくらいの部品交換をしています。一番大変だったことは、いけるだろうと思って組み上げた後に気づく不良品等です。エンジンはかれこれ8回は分解しました。組み上げてからキックがガリガリと降りないので、バラしてキックピニオンを交換したり、3速がギヤ抜けするのにバラし、そうと思えば2速がダメだったりして」。そのうえで、「貧乏整備をしないことが大事です。2度と分解しないでもいいように、古いパーツは目視で状態が分からないなら交換しておいた方がいいということです。配線は間違いなく全部新品に引き直した方がいいです。後々に結局交換することになるので」とアドバイスを送る。

 物を大事にすること、自分で修理して大切に乗ることについてのメッセージを聞いた。

「物を大切にするということは、維持できるかどうかに関わってくるのではないかと思います。私はかれこれいろいろなバイクに乗り継いできましたが、全て所有は1台のみです。1台にかけることで費用も愛情も注げると思います。旧車を選ぶならパーツの出ている車両を選ぶことでしょうか。珍しい単車も数ありますが、現行でパーツが充実している車両は多くはないかもしれません。私が実践している長く乗るコツはこの2点です。整備知識等は後からついてきますので、愛情を持って育ててあげること。また、現行のバイクのように壊れないバイクを作ることは可能です」。

 さらに、自己流の楽しみもあるという。オリジナル部品の制作だ。

「私は物作りが好きで、このベスパではサブタンクの自作、これに加えて、シルバーアクセサリーを施した燃料タンクキャップ、ステンレスツールボックス、給油時のゴミ混入防止のフィルター等を作りました。あったら便利で、見たことのない部品を自作しております。鉄スクーターはワンオフカスタムのしやすい車両じゃないかと思っています。SNS等でもアップしていますが、同じベスパ乗りの方からも要望があったりしますので、自分の車両をモデルにワンオフパーツを制作して、それを気に入っていただける方、流用できそうな車両をお持ちの方にご提供できればと思っています」。バイク修復の極意、そしてユニークな楽しみ方。rillyさんの次なる“レストア作品”にも注目だ。

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