UFCへの険しい道に挑む神田コウヤのプライド 知名度先行の格闘家を「見返したい」【RTU】

2月にDEEPフェザー級暫定王者となった神田コウヤ(パラエストラ柏)の格闘技イベント「ROAD TO UFC シーズン2」(5月28日、中国・上海・UFCパフォーマンス・インスティチュート)への出場が11日、発表された。イーブーゲラ(中国)と対戦する。プロデビューからの夢だった舞台へ一歩近づいた。誰でも出場できるわけではない少ない枠に選ばれた現在の心境を聞いた。

出場決定への思いを語った神田コウヤ【写真:ENCOUNT編集部】
出場決定への思いを語った神田コウヤ【写真:ENCOUNT編集部】

初の国際戦&国外戦へ「環境がやっぱり1番の敵」

 2月にDEEPフェザー級暫定王者となった神田コウヤ(パラエストラ柏)の格闘技イベント「ROAD TO UFC シーズン2」(5月28日、中国・上海・UFCパフォーマンス・インスティチュート)への出場が11日、発表された。イーブーゲラ(中国)と対戦する。プロデビューからの夢だった舞台へ一歩近づいた。誰でも出場できるわけではない少ない枠に選ばれた現在の心境を聞いた。(取材・文=島田将斗)

 今回の参戦が正式決定したのは3月ごろだった。これまでもオファー自体は届いていたという。

「昨年からライト級でオファーあったりはしました。あとはフェザー級ワンマッチでもオファーがありましたが、基準を満たせず出れないという形でした」

 そういった中での参戦。発表された日の自身が受け持つキックボクシングクラスでは、子どもから祝福を受けることもあったものの「負けたらダメなんだよ」と自分に言い聞かせるように答えていた。神田参戦のフェザー級はトーナメント方式だ。

「正直1回戦のことしか考えていないです。SASUKE選手も、イー・ジャー選手も出ます。強い選手しか出てこない。1回戦を勝たなければ、次につながらない。でも心境はDEEPのときと一緒です。牛久絢太郎選手に負けてから青井人選手、中村大介選手、五明宏人選手とやってきましたけど、負けたら終わりだと思ってやっていました」

 しかし、今回はキャリア初の国際戦。さらに初めて国外で試合をすることになる。不安はもちろんある。

「環境がやっぱり1番の敵。減量、リカバリーがどのような環境なのか気になっています。5月28日が試合で22日には入国しなきゃいけない。そのため、そこの調整は臨機応変に柔軟に対応していきたいです。いつも通りには、絶対にできないと思うので」

 他の競技の国際戦の舞台では食事などが口に合わないケースもある。

「半分不安はあります。でも、結局UFCが提供してくれます。そこは世界最高峰の団体なので信じたいです。(平良)達郎、(内田)タケルとか出たことのある選手に聞くと、最高のサポートだったと聞きました」

 他にも「コミュニケーションの部分は不安ですよね。何時集合とか言われたときに理解していないと困るだろうし。最悪、失格とかにはなりたくないです(笑)。計量オーバーとか最悪の展開ですね」と苦笑いしていた。

 今までRTUの舞台で計量オーバーしてしまった選手もいる。参戦にあたって「まずは1回戦」と口にしていた神田だったが早くも訂正した。

「まずは計量ですよね。クリアしないと戦わせてもらえない。戦いに行ったのに、クリアせず帰国することになったら道歩けないです。もしそうなったら格闘技を続けられる自信がないですね。国旗を背負うので、1番しちゃいけないこと。まずは適応したいです」

長いリーチは神田コウヤの強みだ【写真:ENCOUNT編集部】
長いリーチは神田コウヤの強みだ【写真:ENCOUNT編集部】

世界の舞台で戦い敗れたレジェンドたちを見て芽生えた「世界に負けたくない」

 野球で言えばメジャーリーグ、バスケならNBA。UFCはMMAの世界最高峰の舞台だ。神田にとってどんな団体なのか。出会いは中学生時代までさかのぼる。憧れではなく苦い思い出だった。

「PRIDEが消滅して、出ていた選手がUFCに参戦していたのでそのタイミングで知りました。最初のころのルールは野蛮だなと思いましたけど、マウリシオ・ショーグンがジョン・ジョーンズに負けたのがショックだったりしましたね。PRIDEの選手が負けてしまうのが……」

 PRIDE信者だった神田は羨望のまな差しで見ていたわけでは決してなかった。

「自分の中では憧れというよりは“外敵”、黒船のようなもの。それまであった幻想を取り壊してきた、ショックを与えてきた存在なんですよね」

 少年の夢を壊してきたUFC戦士たち。それもあって、子ども時代から世界に対しての「負けたくない」の思いは強い。

「(世界の舞台で)五味隆典さんとか青木真也さんとかが負けるのは悔しい。日本人でも世界と渡り合えるというのは、自分の戦いのなかで証明したいです」

RTUを選んだわけは「世界基準を知りたい」

 プロキャリア15戦。いろいろな思いでこれまで戦ってきた。デビュー当初は「無敗で」と思っていたレコードも振り返ってみれば4つの負けがついている。しかし、2022年5月からは3連勝。最強に挑戦する権利を勝ち取った。

「国旗を背負って戦うことができるので、本当にありがたいです。今の日本のMMA業界って『フォロワー数=命の値段』みたいになっていると思っていて、でも本当はそういうことではないというのを今回選ばれたことで実感できました」

 知名度が先行してしまう現状へ複雑な思いがあったようだ。

「RIZINでも3連敗しても、フォロワーが多いから試合が組まれる選手もいます。でも、自分はDEEPで3連勝したのに呼ばれなかった。今回RTUに選ばれたことで見てる人は見てくれているのだなと思いました」

 さらにこう続ける。

「自分よりフォロワーが多くて、UFC行きたいと公言している選手でも呼ばれていない。この場にすら立てないということはそういうことなのかなと。逆に自分より知名度がある選手をこの舞台で勝って見返したいと思っていますね」

 現在は27歳。「世界基準を知りたい」とうなずく。続けて「挑戦した人にしか分からないことがあると思うんです」と口にした。

 試合で成長するとはよく言う。それはどのような感覚なのだろうか。

「試合は予想だにしないことが起こります。そういうハプニングを乗り越えたときに強くなる。自分のケースでいうと青井戦。試合中に一発もらって左目が眼窩底骨折しました。でもその後に自分が肘を当ててKO勝ちをした。メンタル的な部分の成長が大きいと思います。練習で危険なことはできないです。肘打ちとか膝蹴りって試合でしか許されない。防具をつけていない状態で薄いグローブで本気で殴ってくる。そういう緊張感やリスクを背負って戦って乗り越えた先に成長があると思います」

 2023年は格闘家人生にとって大きな意味のある年となってきている。出場決定がゴールではない。UFC王者になる夢をかなえるため、戦いの中で成長していく姿をファンに見せつけたい。

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