体形いじり、「ブス・デブ」文化…東京と大阪で感じた温度差 「もう180度違うんですけど」

「下北沢角座 松竹芸能お笑いフェスティバル」が13日より7日間にわたり、東京・下北沢のシアター711で行われる。漫才、ものまね、落語など関西からも大御所が集まる松竹芸能のお祭りイベント。ENCOUNTでは注目の女性ピン芸人をピックアップ。15日のライブに登場する坊あかねは4月に大阪から上京したばかり。コミカルな妄想恋愛ネタを磨き、ネクストブレークを狙っている。

勝負ネイルを披露した坊あかね【写真:ENCOUNT編集部】
勝負ネイルを披露した坊あかね【写真:ENCOUNT編集部】

大阪とは「180度違った」東京の笑いの質

「下北沢角座 松竹芸能お笑いフェスティバル」が13日より7日間にわたり、東京・下北沢のシアター711で行われる。漫才、ものまね、落語など関西からも大御所が集まる松竹芸能のお祭りイベント。ENCOUNTでは注目の女性ピン芸人をピックアップ。15日のライブに登場する坊あかねは4月に大阪から上京したばかり。コミカルな妄想恋愛ネタを磨き、ネクストブレークを狙っている。(取材・文=水沼一夫)

 ふくよかな体つきに、親しみやすい笑顔。坊あかねは見た目そのままの明るいお笑い芸人だ。

 芸名ではなく、本名。「覚えていただきやすくてそのままにしています。祖父が高野山のほうの生まれて、そのあたりでは聞いたことがある苗字みたいです。ちなみに祖父の名前は坊ひろみです」。

 芸能界を意識したのは高校の頃。「テレビが好きでずっと見ていたので、こんな楽しいことしてお金もらえたら一番最高やんっていうまっすぐなアホな考えでした」。お笑いより、女優になりたい希望があり、演技を学べる学校に通った。「ずっと島崎和歌子さんになりたくて。きれいでバラエティーも面白い女優になりたかった」。オーディションでは女優としての声はかからず、松竹芸能に「芸人としてなら、うちに来てもいいですよ」と誘われ、お笑いの世界へ飛び込んだ。

 子どもの頃は人見知りをする一方で、仲間内で先生のものまねを披露するなど、人を喜ばすことが好きだった。「みんなの前でやる勇気はなかったんですけど、楽しいことはしたいなと思ってて」。中高はバレーボール部に所属。ポジションはセンターで自称「弱小高校のエース」。チームの中心的な存在だった一方で、他校からは「『飛ばない』で有名でした。『あのブロッカー飛ばないよね』ってうわさされてましたね。飛んではいるんですけど、ヤクルトぐらいしか飛んでない。自分ではめっちゃ飛んでるつもりだったんですけど(笑い)」。

 現在はそのころより10キロ重い。ぽっちゃり3人組で「ザ・トキメキハニーズ」としてアイドルデビューしたこともある。

「体重は増えました、勝手に。もともと標準よりは大きくて、これ食べるとかあれ食べるとか言っていただく機会が多かった。ライブでもこれ持って帰っていいよって言われることもありましたし、食堂でバイトしてたときは『私の分も食べて』って言っていただいて、まかないを2人分食べてたときがあって、それでですね。その人のせいです、食堂のおばちゃんのせいです」と笑う。

 最初はピン芸人ではなく、コンビを組んで約5年活動した。目立った成果といえば、「『細かすぎて伝わらないモノマネ』の番組に出させてもらったことぐらいですかね。あとはもう、大阪に閉じこもっていました」。本業だけでは食えず、新大阪駅の土産屋やコンビニなどでアルバイトを掛け持ちした。

 芸人生活は「めっちゃ楽しいんですけど、難しいです」と表現する。コンビ時代から、ネタ作りを担当。構想を練るのは、散歩のときで、「ちょっとかっこいい言い方なんですけど、ボケが降ってきて書いていました。川沿いに住んでいたので、ずっと歩いたりとか、知らん住宅地入っていったりとかしてました」

 一方で、苦労したのは、大阪特有のいじられ方に慣れることだったという。

「大阪はブス文化・デブ文化がまだ根強く残っていて、難しかったですね。4月に上京したんですけど、東京に来て思うのはそういういじりってもうないんやな、ほぼゼロなんやなってめっちゃ思いました」

 お笑いの本場・大阪では体形いじりも日常茶飯事。「入ったばかりのときはめちゃくちゃありました」。相方がしゅっとした小柄な女の子だったため、なおさらいじられた。周囲から積極的に勧められ、ネタにも取り入れた。「直接的な言葉はあまり使わなかったんですけど、『使っていったほうがいいよ』っていろんな方に言われたので、見た目は取り入れていました」。はまったときは爆笑だったが、うまくいかないことのほうが多かったという。

「東京では『あんまりやらなくてもいいかも』って言われることのほうが多くなりました。もう180度違うんですけど。戸惑い? いや、私はこっちのほうが合っているなって思いました。うまく切り替えられています!」

15日のライブに登場する
15日のライブに登場する

妄想から生み出すコミカルな恋愛ネタで勝負 

 代わりに磨いたのが、かわいさを前面に押し出す芸風だ。「自分が一番やってて楽しくてやりやすくて、いいなって思って。他に誰もやっている人はいないなって思ったので」。ピン芸人になるタイミングの2年前から取り入れているネタで、「かわいいで勝負しようと思っています。明るく元気に、かわいいことをしています」と強化している。

 扱うテーマはすべて男女の恋愛に絡める。例えば、持ちネタの「手相ラブストーリー」は、好意を寄せる男性の手相を見るふりをしながら、かわいく笑いを誘っていく。「“うまいことかわいく言う”っていうネタが多いです。ダジャレみたいなのが多いですね」。15日のワンマンライブでは、「キスシーンのネタもあります」と胸をときめかせながら仕込んでいる。

「ネタは全部願望です。でも現実であったら変すぎるので、ネタに昇華しています」。日頃から妄想を欠かさず、ネタ作りに生かす。「やってこなかった恋愛を妄想したりしていますね。こういうことを言ったらかわいいやろうなとか、こういうこと言ってほしいなあとか、ずっと妄想しています。女子高生を見たら自分が女子高生やったら……とか考えたりもしますし、OLの人を見たらOLとかですね」

 大阪では年配のおじさんが喜んでくれたが、「東京に来て、若い女の子とかからもかわいいと言われることは増えましたね」と手応えをつかむ。

 目標は阿佐ヶ谷姉妹のような存在で、「誰にでも愛されるかわいい芸人になりたいです」。お笑いの道に進んだことは後悔していない。「軸はピン芸人なんで、THE WもR-1も行きたいなと思っています」と野望は大きい。15日のライブに向け、「つめあとを残す」との意味を込めた派手なネイルをかざし、「松竹芸能に入ってなかったら、たぶん何か女優になりたい変な大阪の女で終わっていたと思うので、こういうライブにも出させていただけてめっちゃ幸せです。本当にいっぱいの人に見ていただきたいです、かわいいので!」とアピールした。

□坊あかね(ぼう・あかね)1995年2月14日、大阪府出身。中高はバレーボール部に所属。卒業後、俳優養成学校を経て、20歳で松竹芸能と契約。2021年4月、「ザ・トキメキハニーズ」を結成しアイドルデビューもしている。松竹芸能のおしゃれ番長の異名も。160センチ。

○…「下北沢角座 松竹芸能お笑いフェスティバル」は全24公演で、横山ひろし・春けいこ、アメリカザリガニ、団長安田、駆け抜けて軽トラなど松竹芸人が勢ぞろい。16日のヒコロヒーのソロライブ「試し卸し叩き」や19日の「茶光の落語を金子がコントにするライブ」も注目。坊あかねは「こんなにお祭りみたいなのは、毎日来ても楽しいんやろなって思いますね」と豪華な顔ぶれを推した。

◆坊あかねツイッター
https://twitter.com/2percent_bo?lang=ja

◆坊あかねインスタグラム
https://www.instagram.com/2percent_bo/

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