“教育”に進化するeスポーツ 強豪・クラーク記念国際高で取り戻した公務員の夢

サブカルチャーのメッカ・秋葉原の校舎に、クラーク記念国際高等学校(本校・北海道深川市)が「eスポーツコース」を設置したのは、3年前の2019年4月だった。今年3月、第1期生17人が卒業を迎え、15人が大学に進学した。通信制、全日制を含む全国の高校生の大学進学率が60%弱であることを考えると、88%は驚異的な数字でもある。

eスポーツコースの生徒に向けて指導を行う鬼島さん【写真:中島洋尚】
eスポーツコースの生徒に向けて指導を行う鬼島さん【写真:中島洋尚】

1期生の約9割が大学へ! eスポーツはすでに“教育”へ進化

 サブカルチャーのメッカ・秋葉原の校舎に、クラーク記念国際高等学校(本校・北海道深川市)が「eスポーツコース」を設置したのは、3年前の2019年4月だった。今年3月、第1期生17人が卒業を迎え、15人が大学に進学した。通信制、全日制を含む全国の高校生の大学進学率が60%弱であることを考えると、88%は驚異的な数字でもある。(取材・文=中島洋尚)

 進路の内容もバラエティーに富む。高校の専門授業で学んだイベントプロデュースの技術・知識をさらに掘り下げる目的で経営学部を選んだ生徒もいれば、陸上などリアルのスポーツと比較して科学的な分析実績が少ないeスポーツの分野の研究をするため、スポーツ科学研究科のある大学を選んだものもいる。今年9月の海外大学進学を目指し、学習を続ける生徒もいる。

 3年前からコース責任者を務めた笹原圭一郎教諭は「(1期生に)大学、大学と、進路を押し付けたことはありませんでした。eスポーツを学ぶうちに、『ゲームだけをしていていいわけではない』という現実に気づいたり、違う夢を見つけたりして、今の自分に足りないものを学べる進路を選んだのでは」と分析する。

 4月、1期生の一人で、昨年の全国高校eスポーツ選手権優勝メンバーとして活躍した鬼島至雄(きじましゆう)さん(18=神奈川大)が、後輩たちを指導するチューターの立場で母校に戻ってきた。「昨年“王者”という称号をクラーク国際として手に入れたからには、その称号をずっと守ってほしいという気持ちが大きいですね」(鬼島さん)。授業初日の挨拶では、尊敬の眼差しで先輩を見つめる生徒の前で、「優勝してくれないと困る」と少しあおるように、“王座の継承者”としての自覚を促した。

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