紅白で2年連続ギネス記録、三山ひろしがけん玉極めるまでの10年間 落語にも挑戦の源
NHK紅白歌合戦でのけん玉ギネス記録挑戦で知られる歌手、三山ひろし(41)。2017年から挑戦を開始し、昨年大みそかには自身を含む126人が連続で成功させ、2年連続でギネス記録を更新した。“けん玉歌手”として唯一無二の存在感を発揮する三山の、けん玉にかける並々ならぬ情熱に迫った。
けん玉歌手誕生のきっかけは10年前のバースデーイベント
NHK紅白歌合戦でのけん玉ギネス記録挑戦で知られる歌手、三山ひろし(41)。2017年から挑戦を開始し、昨年大みそかには自身を含む126人が連続で成功させ、2年連続でギネス記録を更新した。“けん玉歌手”として唯一無二の存在感を発揮する三山の、けん玉にかける並々ならぬ情熱に迫った。(聞き手・角野敬介)
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――改めてけん玉を始めたきっかけを教えてください。
「毎年、ファンの皆様との僕のバースデーイベントがありまして。10年前のイベントのときに、どちらかという演歌、歌謡曲のファン層はちょっとご年配の方が多いんですが、そういった方と一緒に何か遊びたいなと思ったんですよ。ゲームっていうわけにはいかなかったんですよね。何か、皆さんが昔子どものときやってた遊びっていうことで、ベーゴマとか竹馬とかいろいろあって、その中にけん玉があった。けん玉をただやるだけじゃ面白くない。どうやら、けん玉検定なるものがあるらしいと聞きまして。三山ひろしがその検定を受けて、ライブ当日までに一体どこまでいけるものかっていうのを見てもらおうというのがきっかけでした」
――すぐに上達したのでしょうか。
「僕の誕生日は9月の17日なんですけど、9月に入った瞬間から稽古を始めた。そうしたらその17日間のその稽古の中で、僕がけん玉にはまっちゃって。どこまで行けるか自分でも自分の才能を確かめたいと思ってやり始めたら、10級から準初段までいっちゃったんです。けん玉検定は10段までなので、半分です。それで極めていけばもしかしたら、何かものになるんじゃないかと思って。そこからです。今年でけん玉歴は10周年になります」
――現在は指導員の資格も持っていらっしゃる。
「今は2級指導員です。けん玉を皆さんに楽しんでやってもらおうという検定を受けてもらえる、その認定状を出せる資格が2級指導員。資格を取ったら、けん玉協会からけん玉大使になってほしいとのお話と。さらに『初めてでも絶対できる!三山ひろしのけん玉教室』(2016年)っていう本も出しましたね」
――今も毎日練習はしていますか。
「練習は毎日やっていますね。短くてもいいんで、毎日触るっていうは心がけています。ちょっとした技を練習するのもいいですし、今特訓してる技を練習するのでもいいですし、1分でも5分でも、やるときは1時間やるときもあります。なんでもそうですけど、毎日継続してやっていくっていうことが大事です」
――けん玉は何本お持ちですか。
「いただくものもありますし、自分で買うものもありますし、多分60~70本くらいは……。未開封のものもありますし、もう一目ぼれして、箱からも出さずにそのまま飾ってあるのもあります。けん玉って同じような形をしてるようで、全部違う。もっと言えば同じ商品でも木目が違ったり、ひとつとして同じものがないんです。見ているとね、かわいいんですよ。なんか抱っこしたくなる感じです。ちょっと大きいサイズになってくると、本当にちっちゃい子どもと同じくらい。あの丸いところが顔みたいで、本当かわいいんですよね。気持ち悪いですか?(笑)」
――まさに“けん玉歌手”ですね。今後、目指す場所を教えてください。
「今は4段ですが、最終的には10段まで上り詰めたい。どこまでいけるかっていうのを試したいです。“けん玉道”ですから、剣道や柔道とかと一緒で、これも道なんです。極めていくことで、自分が“演歌道”という道を進んでいく上でもプラスになるんじゃないかなと思って、今やっています」
――けん玉の奥の深さは、どんなところに感じますか。
「けん玉というのは、再現性のスポーツと言われています。つまり同じことを同じようにやれば絶対に成功するんですよ。ところが例えば照明の具合だとか、いつもと場所が違ったりすると、急にできなくなってしまう。そういう意味では本当に正確性が求められる競技でもあり、かつ自分のメンタルも鍛えることができるスポーツだと僕は思っています。あとは人生にも密接に関わり合ってくる。単なる遊びではあると思うんですけど、その遊びの中から教えてもらうものもたくさんあって、けん玉協会の初代会長の藤原一生先生がおっしゃっている言葉があって、“慌てず、焦らず、諦めず”、この“3つのあ“が大事だよと。この“3つのあ”って、人生にとっても大事なことだと思いませんか。3つの基本を、僕はけん玉から教えてもらった。それを自分の歌の道に生かし、現在があるわけです。最初は確かにイベントで始めたことなんですけど、自分の人生に影響を与えるものになっています」
――紅白歌合戦の舞台での“けん玉チャレンジ”が恒例になりました。プレッシャーは並大抵のものではなかったと想像できます。
「最初にやると聞いたときには、本当にそんなことできるのかと思いました。最初の年(2017年)は124人でやったのですが、最初の方で失敗したんですよ。(やる前は)難しいなとは思いながらも、心の中ではできるできると思っていました。でも前代未聞の挑戦で、まして年末の大きな番組での生放送。けん玉の世界ではプロフェッショナルの方が集まっているんですけど、テレビに出てやるってのは初めての方も多かった。やっぱりうまくいかなかったですね。僕も落胆しましたけど、僕以上に、失敗した方がとっても気に病んでいた。正月三が日は眠れなかったと聞きました。
だから、これは何としてもリベンジしたい。もう1回チャレンジさせてあげたいって。その思いを翌年(2018年)にかなえることが出来たときの喜びっていうのは忘れられないものになりました。全員の喜んだ表情といいますか、人って本当に喜ぶとこうなるんだなっていうのを感じました。涙も出るし、味わったことのない感動でした。1人でやっていても、絶対にあんなにも大きな感動は生まれなかったと思います」
――まさに一丸で勝ち取った感動だったわけですね。
「124人全員が同じ気持ちで、成功に向かって走っていったからこそです。もっと言えば紅白のスタッフの皆さんもそうですし、出演者の方も全員が『頑張ってくださいね。絶対成功させましょう』って、舞台に出るときみんなが声をかけてくれるんです。五木ひろしさんなんかはもう、『よかったなぁ』って僕の頬をパチパチって、自分の孫をかわいがるような感じで喜んでくれて。みんなが待ち望んでいたことを、喜びとしてかなえられたのは、もう他の喜びには変えられないものがありました。特殊な世界ですよね」