ネット時代になぜ電話相談? 57年続く「テレフォン人生相談」制作陣が明かすこだわり
1965年にスタートし、57年がたった今もなおニッポン放送の看板番組として人気のある「テレフォン人生相談」。昔からほとんど変わることのない制作過程や長寿である秘訣、制作のこだわりについて同番組プロデューサーである長濵純氏とディレクターの宅野淳氏に話を聞いた。
1965年に放送スタート、ニッポン放送の看板番組
1965年にスタートし、57年がたった今もなおニッポン放送の看板番組として人気のある「テレフォン人生相談」。昔からほとんど変わることのない制作過程や長寿である秘訣、制作のこだわりについて同番組プロデューサーである長濵純氏とディレクターの宅野淳氏に話を聞いた。(取材・文=島田将斗)
SNSなどが普及したインターネットの時代になぜ電話相談なのか。時代は変われど「悩みをその日に解決する」をモットーに57年間つないできた変わらない思いが制作陣にはあった。
20分番組の中で、相談の中身が放送されるのは約14分。火曜日と水曜日の午後、相談電話を受け付けるところから“人生相談”はスタートする。「普通のリクエストと違って、『簡単なエピソードを書いて』ではないんです。きっちりと聞くことだけでも、悩んでいる人の心の安らぎになればと考えているので、一つの電話対応にものすごい時間がかかります」(宅野氏)と明かす。
実際に受付の電話に要する時間は約15分、ときには30分以上かかることもある。収録しない相談内容でも時間をかけるのは「丁寧に聞く」ことが趣旨であって、「たくさん受ける」を主眼にしてはいないという番組のこだわりだ。
受付された相談内容はカードにまとめられ、スタジオでその日にふさわしいものを収録していく。いざ収録となって初めて相談者に再度電話をつなぐという方式だ。
「電話受けをしている場所には、弁護士やカウンセラーといった複数のスタッフがいて、放送されない数々の相談にお応えしています。その中から『パーソナリティの加藤諦三先生などに話を回した方がいいんじゃないかな』という案件がスタジオに回ってきて、実際の収録となります。」(長濵氏)
短い放送時間だが、相談自体には倍以上の時間をかけている。「加藤先生の日には、平均50分、長い時には80分ぐらい話しているんですよ」(宅野氏)と実情を明かす。
相談内容を全て放送せずに14分に集約する。相談者の複雑な家庭環境に切り込んでいくことも多くあるこの番組の編集は骨が折れる仕事だ。
「編集箇所は300か所ぐらいあります。オープンリールで収録していた昔は、はさみで1か所ずつ切って、テープで端をつないで編集していたんですよ。気を付けているのは、匿名性を守らなければいけないということ。例えば住んでる場所や、人の名前、『5つ子なんです』とかの情報も人は限られてきますよね」(宅野氏)
情報漏洩は相談者の口からだけではないようだ。「例えば裏で流れている電車の音。○○線沿線だとか場所は特定できますよね。何が匿名性を守るキーワードになるかというのを考えながら編集していかないといけません」(長濵氏)と苦労を明かした。