“世界のTK”高阪剛が語る「人類60億分の1」の男・ヒョードルの強さ「生殺しとはこのことだった」
“世界のTK”高阪剛が引退試合を行ったのが「RIZIN.35」(4月17日、東京・武蔵野の森総合スポーツプラザ)でのこと。あれからひと月、TKに話を聞く機会を得た。1994年にリングスでプロデビューを飾ってから、先日正式な引退を果たすまで、実に50戦を数える激闘を行ってきたが、中でも忘れられない相手が「人類60億分の1の男」とも呼ばれた“氷の皇帝”エメリヤーエンコ・ヒョードルだという。果たしてその真意は?
ヒョードルに黒星をつけた唯一の日本人
“世界のTK”高阪剛が引退試合を行ったのが「RIZIN.35」(4月17日、東京・武蔵野の森総合スポーツプラザ)でのこと。あれからひと月、TKに話を聞く機会を得た。1994年にリングスでプロデビューを飾ってから、先日正式な引退を果たすまで、実に50戦を数える激闘を行ってきたが、中でも忘れられない相手が「人類60億分の1の男」とも呼ばれた“氷の皇帝”エメリヤーエンコ・ヒョードルだという。果たしてその真意は?(取材・文=“Show”大谷泰顕)
――高阪さんは過去にさまざまな世界の強豪と闘ってきたわけですけど、これはと思ったファイターを上げるとしたら誰になりますか?
「これは何をどうしても……って思ったのはエメリヤーエンコ・ヒョードルですね」
――ヒョードル! 確かに「人類60億分の1」と言われた「最強」のファイターですけど、それでも日本人でヒョードルに唯一、黒星をつけたのはTKだけです。
「それはまだヒョードルの情報がそこまで入っていないとき(2000年12月)に試合をして、そんなに情報がない選手だったら、先に仕掛けていかないとっていう感覚がすごくあって。先に行かないと、もしいろんなことを習得している選手だったら、逆にプレッシャーをかけられても嫌だなと思ってやった結果、ちょうど向こうの攻撃とぶつかって、相打ちになったんですよね」
――ヒョードルが顔面をカットしたんですよね。
「あれはたまたまそうなったんですけど、その後のヒョードルは積み重ねて行って、どんどん強くなって。(2005年4月に)PRIDEで再戦したんですけど、そのときは何をどうしてもこれは……ってなって。生まれて初めて何をどうしたらいいのか分からなかったですね」
――TKはミルコ・クロコップやバルトをはじめ、さまざまなモンスター級のファイターと対戦していますけど、それとは全然違ったわけですか?
「他の試合もそうですけど、全部、勝てると思ってやっているんですよ。その辺、自分はバカなんですけど、やられていると思っても、勝てると思って試合をしているんですね」
――勝つ気でリングに上がっていると。
「ええ。でも(再戦した時の)ヒョードルに関しては、これはいったい何をどうしたらいいのか分からなかった。大まかな言葉で言うと、全部見透かされている感があって。確かあのときは片足タックルに行って、足を取ったんですよ。結構、簡単に取れたんですね。あ、これイケるじゃんと思ったら(左の)目ん玉を殴られたんですよ。そしたら目が潰れて視界がゼロになったんですね。二重ならマシなんですけど、完全にボヤけちゃって、見えなくなった。これヤバいなと思ったら、あとは好き放題に殴られて、なぎ倒されて。パウンドをバンバン食らって。だけどパウンドが、効くパウンドじゃないんですよ。要は眠らせてくれるパウンドじゃなかった」
――脳しんとうを起こして気絶させてもらったほうがよかった的な(苦笑)。
「そうかもしれない(苦笑)。ミルコのときは効かせてくれるパウンドだったから、なんか殴られているなくらいな感じだったんですよ。ヒョードルの場合は、脳しんとうは起こさないけど、めちゃめちゃ痛い。生殺しっていうのはこのことだなと」
――生殺し! ヘビー級の試合は特に、毎回、交通事故に遭いにいくような感じなのかなと思ったりしますけどね(苦笑)。
「まあ、そういうのが多いですね」
――やっぱり!
「自分は、試合の次の日は、ベッドから起きるのに30分以内に起きれた試合は1回もないんですよ。起き上がれないんですよね。たぶんカラダの首だ、背骨だってどっかの関節とか、いろんなところがズレちゃって。筋肉のこわばりももしかしたらあるのかもしれないけど、だいたい1時間弱はかかって、ようやく起き上がる感じなんですよ」