69年製「スバル360」、懐かしの名車が現役バリバリの秘密は? 執念と熱意の復刻

伝説の国産車が“現役バリバリ”で元気に走っている。1969年製「スバル360 スーパーデラックス」だ。58年に登場し、「てんとう虫」の愛称で親しまれ、日本の大衆車の象徴の1つとして知られる軽自動車の名ブランド。一部の部品は作り直し、3年以上の歳月をかけてあちこちから部品をそろえて“復刻”した。34歳の男性オーナーの執念に迫った。

69年製「スバル360 スーパーデラックス」。「てんとう虫」の愛称で親しまれている名車だ(一部加工を施しています)【写真:ENCOUNT編集部】
69年製「スバル360 スーパーデラックス」。「てんとう虫」の愛称で親しまれている名車だ(一部加工を施しています)【写真:ENCOUNT編集部】

「てんとう虫」の愛称で親しまれた伝説の“富士重工業”国産車 「プロジェクトX」がきっかけ

 伝説の国産車が“現役バリバリ”で元気に走っている。1969年製「スバル360 スーパーデラックス」だ。58年に登場し、「てんとう虫」の愛称で親しまれ、日本の大衆車の象徴の1つとして知られる軽自動車の名ブランド。一部の部品は作り直し、3年以上の歳月をかけてあちこちから部品をそろえて“復刻”した。34歳の男性オーナーの執念に迫った。(取材・文=吉原知也)

 富士重工業(現・SUBARU)が開発し、58年から70年までに生産された同ブランド。日本の乗用車の普及、モータリゼーションの発展に貢献したと言われている。

 男性オーナーの愛車は真っ白なボディーカラー。ヘッドライトがまん丸の目のようで、かわいらしいルックスだ。「4人乗りで、部品点数が少なく、乗り心地がいい」。この3条件がお気に入りという。

 18歳で自動車免許を取得し、実家のスズキ・ツインが最初に乗った車。そこからスバル・サンバー、アルファロメオ・アルファGT(2.0リッターモデル)、マツダ・NAロードスター、スバル・プレオRMと乗り継いできた。

 そもそもスバル360に興味を持ったのは、同車をテーマに取り上げたNHK「プロジェクトX~挑戦者たち~」を見て感銘を受けたことがきっかけ。「この車の歴史的価値、意義を実感しました」。先人の日本の技術者たちの熱意に、心を熱くした。

 4年前にオーナーズクラブのメンバーから中古で約80万円で購入した。一方で、旧車だけに、部品の欠品が多かった。本来付いているはずの部品で失われていたのは約10か所、劣化した部品は17か所、仲間の協力を得ながら、それを丹念に“再現”させた。

 フォグランプ部分は業者に依頼し、純製品のシリコン型をとって複製。金属、樹脂部品は再メッキ加工を施した。フェンダーのエンブレムは探して購入し、ドアと天井のモールは、当時の部品を入手。マフラーカッターはヤフオクで見つけ出した。「デスビ(ディストリビューター)のバネは伸びきってしまっているものが多く、バネ業者にお願いして同じ素材で作ってもらいました。4本4000円で安かったですよ」。シートも張り直し、エンジンも不備がなくなるまで手入れ。最後に取り掛かったのは、フロアマットの赤じゅうたん。「生地を買って、内装店にお願いして作ってもらいました。フロアマットが最後で、それが半年ぐらい前です」と説明する。

「もう気合です。執着心です」といい、約50万円をかけたレストア。ほぼよみがえらせたが、「もうやるところがなくなって、それはそれで寂しいんですよ」と胸の内を明かしてくれた。

 自身にとってのカーライフとは「人生に張り合いと広がりをもたらしてくれる」と語るオーナー。普段の街乗りはスバル360を運転しているが、高速道路の長距離ドライブやサーキットで走る際は、アルファGT(3.2リッターモデル)で“二刀流”の使い分けをしている。

 愛くるしいスバル360。街中を走っていると、若い人からは「かわいい」と注目され、当時を知る高齢の人からは「昔乗ってたよ、懐かしい」と声をかけられる。名車であることを実感するという。クーラーが付いておらず、「夏は止まると地獄です」。排気量も少なく運転するのは大変だ。それでも、「必死になって乗るから面白いんです。それに古い車は、どこかが壊れたら新しい目標ができますしね(笑)」。これからもずっと大事に乗り続けていくという。

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