ウィキペディア編集者ってどんな人? あなたの知らない“ウィキペディアン”の生態

日々のちょっとした調べものに、仕事の際の情報収集に、あるいは暇つぶしに、お世話になっている人も多いであろうウィキペディア。知っての通り誰でも編集に参加できるインターネット上のフリー百科事典だが、実際に編集をしたことがあるという人はあまり多くはないだろう。ボランティアでのウィキペディア編集を“趣味”とする「ウィキペディアン」とはどのような人々なのか。TBS系「マツコの知らない世界」で「ウィキペディア日本語版の世界」について解説した「さえぼー」こと武蔵大・北村紗衣准教授に、謎に満ちたウィキペディアンの生態を聞いた。

「マツコの知らない世界」にも出演したウィキペディアンの北村紗衣准教授【写真:本人提供】
「マツコの知らない世界」にも出演したウィキペディアンの北村紗衣准教授【写真:本人提供】

「妖精さんの草取り」「死神」…知られざるウィキペディアの世界を解説

 日々のちょっとした調べものに、仕事の際の情報収集に、あるいは暇つぶしに、お世話になっている人も多いであろうウィキペディア。知っての通り誰でも編集に参加できるインターネット上のフリー百科事典だが、実際に編集をしたことがあるという人はあまり多くはないだろう。ボランティアでのウィキペディア編集を“趣味”とする「ウィキペディアン」とはどのような人々なのか。TBS系「マツコの知らない世界」で「ウィキペディア日本語版の世界」について解説した「さえぼー」こと武蔵大・北村紗衣准教授に、謎に満ちたウィキペディアンの生態を聞いた。(取材・文=佐藤佑輔)

 ビギナーの編集間違いを直す「妖精さんの草取り」、有名人の訃報をすぐさまページに反映させる「死神」など、独特のウィキペディア語録でも話題となった北村さん。ウィキペディア編集の魅力に目覚めたのは大学院生のとき、留学先のイギリスで英語版の翻訳を始めたことがきっかけだった。

「それまでは一般の方と同じように調べもので見てましたが、奨学金で留学したのでそのぶんくらいは社会貢献をしようと。語学力を生かして、英語版の記事の日本語翻訳から始めました。記事を編集すると、関連する未編集の項目が赤リンクで表示されるので、これもやらなきゃ、あれもやらなきゃと連鎖的にハマっていくような感じ。まあ、山に登ったりブログを書くのと変わらない、趣味の一種です」

 統計データでは、平均して月5000件ものペースで記事が増え続けているウィキペディア。アカウントを取得すれば誰でも編集に参加できるが、記事作成には細かい決まりも多く存在する。

「一番は特筆性を満たしているかどうか。たとえば、地域の部活動のチームや友達同士で組んだバンドなどは、特筆性があるとは言えず、記事にはできません。直接関係のない団体による二次出典が複数存在するかがポイントで、たとえば競技団体の資料しかない発足したてマイナースポーツは微妙なところですが、新聞などのメディアで取り上げられた実績があれば特筆性があると言えます」

 現在、ウィキペディア日本語版を複数回編集しているアクティブユーザーは1万5千人ほどだが、継続的に活動していてベテランといえるのは数百人ほどと推定される。大半は編集をしても1回限りというライトユーザーだ。注目される事象やスキャンダルが起こった際には、イタズラやデタラメな内容の編集を行う“荒らし”行為や編集合戦も頻発するという。

「幼稚なものだと記事内容をすべて『あああああ』に書き換えたり、まったく事実と異なるものや誹謗中傷の類もあります。ユーザー投票で選ばれた管理者には、迷惑行為を繰り返すアカウントをブロックする権限がありますが、日本語版の管理者は現在わずか40人ほど。とてもパトロールが追いつかず、ほとんど見られないマイナー記事の中には荒らされたものが数年放置されていることもあります」

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