小川紗良、長編映画で初監督&作家デビュー…恩師・是枝監督から「自然と影響を受けている」

役者、文筆家として活躍する小川紗良(25)の初の長編映画「海辺の金魚」が25日に、東京・新宿シネマカリテほかで公開される。本作は、身寄りのない子供たちが暮らす家で育つ少女(小川未祐)と心の成長を描く人間ドラマ。25歳の誕生日を迎えた小川が本作への思い、今後の抱負を語った。

長編映画で初の監督を務めた小川紗良【写真:ENCOUNT編集部】
長編映画で初の監督を務めた小川紗良【写真:ENCOUNT編集部】

小川未祐主演の映画「海辺の金魚」で長編初監督「信頼のできる人たちと作っていました」

 役者、文筆家として活躍する小川紗良(25)の初の長編映画「海辺の金魚」が25日に、東京・新宿シネマカリテほかで公開される。本作は、身寄りのない子供たちが暮らす家で育つ少女(小川未祐)と心の成長を描く人間ドラマ。25歳の誕生日を迎えた小川が本作への思い、今後の抱負を語った。(取材・文=平辻哲也)

 早稲田大学在学中、自主製作映画3作品全てが映画祭入選を果たした小川。「卒業後、これから長編を取っていきたいと思っていた時に、小川未祐さんと再会したんです。未祐さんは(小川監督の短編)『最期の星』(2017)の主役で、話しているうちにもう1回、彼女と映画を作りたいなって思ったのが始まりです。未祐さんはりんとした空気感と、たたずまいの美しさ、目線の強さに一瞬で惹かれたんですが、撮影した時は18歳。大人と子供の間ですごく揺れ動いているアンバランスさが魅力でした」

 主人公は身寄りのない子どもたちの暮らす家で育った18歳の花(小川未祐)。翌春には施設を出る決まりで、そこで暮らせる最後の夏を迎えていた。そこに8歳の少女・晴海(花田琉愛)が入所してくる。かつての自分を重ねた花は、晴海と過ごすうちに今までになかった感情が芽生えてゆく。

 撮影は是枝裕和監督の「ワンダフルライフ」「誰も知らない」「奇跡」を始め、西川美和監督の「永い言い訳」や河瀬直美監督の「二つ目の窓」を手掛けてきたベテランの山崎裕氏。「子供たちの姿を誰に撮っていただくか考えていたときに、最初に浮かびました。さすがに恐縮だなと思ったのですが、直接お願いに行ったら、引き受けてくださったんです」

 子供たちの姿を通して社会問題を描く作りには、是枝監督の影響も強く感じ取れる。「大学4年間、授業を受けていました。山崎さんも、是枝さんの作品をやってきている方ですし、自然と影響を受けている部分はあるかと思います。実際に、子供たちの撮り方、触れ合い方は改めて是枝さんに相談しました。それを受けて、私も撮影前から子どもたちと積極的に遊んだり、地元のスーパーや(量販店の)しまむらに買い物に行ったりしました」

 撮影は2年前の夏、自身が観光大使も務め、第2の故郷のように親しんでいる鹿児島阿久根市が全面協力してくれた。ヒロインと親交を深める少女、晴海役を始め、子役は地元でのオーディションで決定。「学生時代も中編を取っているので、つながりや知っている場所はたくさんあったのですが、改めて地元の人に協力をお願いして、山崎さんも一緒にロケハンをしました。地元の子たちは演技経験はありませんが、自然体な姿が逆によくて、作品の世界観を広げてくれました」と振り返る。

 初の商業映画でも、手探りで作り上げた。「商業映画と言っても撮影中は配給や上映も決まっておらず、予算のない中でとにかく信頼のできる人たちと作っていました。プロデューサーは大学の先輩で東映の社員。今回、個人的にやってくださったのですが、そのご縁で東映ビデオさんが配給してくださることになりました」と明かす。

次のページへ (2/3) 撮影後は本作の小説家にも初挑戦「1人でずっと掘り下げていくことでまた違う広がり方」
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