GAEA　JAPAN（ガイア・ジャパン）が旗揚げから26年、団体解散から16年の時を経て復活した2021年6月13日、東京・大田区総合体育館での「GAEAISM―Decade　of　quarter　century」。長与千種（Marvelous＝マーベラス）と里村明衣子（センダイガールズプロレスリング＝仙女）の師弟がリング上で久しぶりの再会を果たした一方、両者が育てたガイアイズムを引き継ぐ若い選手たちが、団体対抗戦で壮絶な火花を散らした。

　ガイアの至宝AAAWシングル＆タッグ王座の管理権をかけたメインのイリミネーション6人タッグマッチ（桃野美桜＆門倉凜＆星月芽依VS橋本千紘＆岩田美香＆DASH・チサコ）は、仙女がドラマチックな勝利で、自ら懸けた仙女のベルトも守ってみせた。試合後、リング下からこの勝利を見届けていたのが、長与から離れ、15年前に仙女を旗揚げした里村だった。そのときの表情が実に印象的だったのだが、この瞬間、里村はどんな思いで弟子たちの勝利を見守っていたのだろう？

「同業者からしても橋本、チサコ、岩田、カッコいいな！と思いながら見てましたね。これなら完全に任せられると思いながら見ていました。半年前に限定出場を発表、仙女を後輩たちに託すとしたんですけど、そのときは早すぎるくらいがちょうどいいかなと思っていたんですが、内心、やっぱり不安があったんです。実際、私がイギリスに行っている間にも社内でいくつか問題があったりして、やっぱり自分が入らないとダメなんだというときが何回かありました。それでも自分たちで解決してくれって感じで放っておいたんですよ（笑）。でもこの1年間、コロナ禍もあって、そういう経験が彼女たちの意地になっていったんだと思います。それが結果になって、あのときはもう完全に、仙女を彼女たちに任せられるんだと思いましたね」

　コロナ禍で試合数が激減した。里村個人にはWWE（NXT　UK）との契約が持ち上がり、日本にいる時間が少なくなった。さらには6月12日、地元・新潟で行われる6月27日の大会を最後にイギリスに拠点を移すことを発表。仙女所属に変わりはないが、WWEでの活動がメインとなるため、日本で試合をする機会はさらに減少するだろう。が、里村不在と、マーベラスとの対抗戦ぼっ発が、橋本を筆頭に若い選手たちに火をつけた。里村の師・長与率いるマーベラスには負けたくない。その気持ちがかえってこの期間で爆発寸前まで高まっていたのだ。里村は言う。

「（GAEAISMでは）実力以上の試合を見せてもらいました。たとえば橋本なんか、パワースラムとかフィニッシュのオブライトとか、練習してたときより高い、一番の完成度で披露できたんだと思います。そこは本人の意気込みと、試合が思うようにできなかったり、団体対抗戦への意地、いろんな思いがその日に集結したんじゃないかと思いますね」

　とはいえ、この1年、里村には試行錯誤の連続だった。試合ができない分、試合以外の活動にも積極的に動いた。

「選手のモチベーションを下げてはいけない。それを第一に考えました。選手のモチベーションが下がるってことは、私自身も下がりますし。具体的には仙女の給料を下げない（笑）。下がればやる気に響きますからね。それに、暇を作らない。暇になってしまうとヘンなこと考えちゃうんで（笑）」

　GAEAISM開催への不安と自団体への不安が重なった1年。本来なら昨年4月15日後楽園ホール、旗揚げと同日同場所での開催が予定されていたが延期となり、その後はソーシャルディスタンスに配慮した50％での動員が求められた。が、すでに1000枚以上のチケットが売れていたため、主催者サイドは客数を減らさず、より大きな大田区総合体育館での開催に踏み切った。「（ビッグマッチ仕様になり）そこはさすがGAEAだと思いましたね！」と里村。ビッグマッチを連発してきたGAEAの面目躍如と言ったところだ。