浅香唯、51歳になっても変わらない自分らしさ「誰かに元気を与えられたら任務完了」
歌手の浅香唯が23日、初の無観客配信となった昨年の35周年記念ライブを映像作品「YUI ASAKA LIVE 2020」としてリリースした。波乱に満ちた歌手人生を支えてくれたファンの目の前で直接歌う願いはかなわなかったが、画面を通して今も変わらないキュートな笑顔と元気を届けてくれた。そんな無観客ライブの裏話を通して、浅香唯のライブへのこだわり、そして大切なファンへの思いを聞いた。
極限の緊張を味わった35周年記念ライブ
歌手の浅香唯が23日、初の無観客配信となった昨年の35周年記念ライブを映像作品「YUI ASAKA LIVE 2020」としてリリースした。波乱に満ちた歌手人生を支えてくれたファンの目の前で直接歌う願いはかなわなかったが、画面を通して今も変わらないキュートな笑顔と元気を届けてくれた。そんな無観客ライブの裏話を通して、浅香唯のライブへのこだわり、そして大切なファンへの思いを聞いた。(取材・文=福嶋剛)
――昨年開催した35周年記念のライブ映像が作品化されました。当日は無観客配信となりましたが、それを感じさせない元気いっぱいのステージでした。
浅香「うれしいです。無観客でしたが、毎年ライブで使用している会場から配信したので今まで見てきた観客のいる景色を想像しながら、ステージに立てたのは大きかったです」
――ライブ当日は唯さんの誕生日(12月4日)だったということもあり、とてもスペシャルな内容となりました。毎回テーマを掲げてステージに立っているそうですが、今回はどんなテーマでした?
浅香「今回は配信ということで今まで私のライブを見たことがない人にも“これぞ浅香唯”というものを見せたいと思って、オリジナルに近い曲のアレンジで、衣装も振り付けも過去の映像を振り返りながら80年代を意識してやってみようと思いました」
――衣装も白を基調にアクティブな唯さんにピッタリの可愛らしいコーデでした。
浅香「そうですね。ライザップをやらせてもらったので、そんな雰囲気もあるような短パンと短いビスチェの組み合わせで、若いとき以来のお腹を出して歌ってみました。本当はアンコールでライザップのテーマ曲を流しながらCMの衣装を着て登場しようと考えていましたが、さすがに無観客のノーリアクションは悲しいのでやめました(笑)」
――終始笑顔のステージでしたがいかがでした?
浅香「実は今までにないくらい最後まで緊張しっ放しだったんです」
――まったくそんなふうに見えなかったです。
浅香「もともと緊張するタイプで、前日の夜に眠れないのは当たり前なんですが、今回は特にリハーサル前から緊張していて、歌詞を全く知らない歌をいきなり本番のステージで歌うというろくでもない夢を見ては目が覚めるといった感じでした」
――ということは開演直前は……?
浅香「思わず会場を逃げ出そうかなとか、そんな悪い想像ばかりしながら不安と緊張に耐えていました」
――バックステージは大変だったんですね
浅香「ところが、配信が始まる1分ぐらい前だったかな? あるスタッフさんが、『はい! そろそろヌルっと始まりますので!』って言ったんです。それで『え?“ヌルっと始まる”っていったい何のこと?』みたいな」
――さらにパニックですよね?
浅香「そう(笑)。それで、終わってから見返すと、最初にわざとぼかして徐々に鮮明に映し出されるみたいな、そういう技術的な言葉だったみたいで。でも緊張もクライマックスに達していた1分前によく分からないことを言われて、逆にそれが少しだけ緊張を和らげてくれたのかなって」
――ようやく緊張が解けて?
浅香「それがステージに出ていつもならお客さんの声援で落ち着くんですけど無観客だからそのまま緊張が続いたんです。ただ、どんな状況でも最後まで笑顔で歌おうと固く決めていましたから。それでも1曲目の『Melody』(88年11月発売の12枚目のシングル)は、とってもポップで明るい曲なのに、イントロが鳴った瞬間に体がギュっとなって、緊張で首が固まり回らなくなった(笑)」
――どの辺まで緊張が続きましたか?
浅香「今回は最後まで緊張しっぱなしでした。私、いつもライブの後半に差し掛かると、どんなに気をつけていてもよく足がつるんです。今回なんて始まって6曲目『TRUE LOVE』(89年1月発売の13枚目のシングル)でつりました(笑)」
――振り付けも動きもある曲なのに。
浅香「もう大変でした。ライブ後半にスタッフさんがサプライズでバースデーケーキを用意してくれて。普通はそこでめちゃくちゃ喜びますよね?ところが次の曲が初披露の新曲『LIGHT A SHINE ~月はずっと見ている』だったから、もうそっちでいっぱいで“心ここにあらず”でした(笑)」
――でもMCは、ノーリアクションの中で懸命にカメラの向こうに語りかけていましたね。
浅香「どこを見ながらしゃべっていいのかキョロキョロしていましたけど(笑)。いつもMCは事前に話すことを考えていて、でもお客さんの前に立つと途中でどこかに転がっていっちゃうんです。ただ今回はコロナ禍という大変な状況の中で、画面の向こうの皆さんは、どんな思いでこのライブを見てくれているのかすごく気になって。だから見てくれた人たちが、見終わった後に“頑張ろう”ってちょっとでもそう思ってもらえるようにMCをしたり、歌いたいって。そんな希望を持ってステージに立ちました」
――終わった瞬間どんな気持ちでしたか?
浅香「本当に体も心も尋常じゃない疲れ方というか。今回は特別な気持ちで臨んだライブだったのでやり切った感じがありますが、今後も無観客ライブをやってと言われても私自身は難しいかもしれません。と言いながらまたやるかもしれないけど(笑)」
――ステージとお客さんの熱量交換みたいな。そんなライブにこだわりたいと?
浅香「そうですね。私の場合はもう少し特殊かもしれないです。ずっとコンスタントに曲を出しているわけではないので、80年代とか90年代に作っていただいたすてきな曲を当時のまま大切に歌い続けていきたいという思いがあって、もう51歳だからといって年相応なステージングにすると、当時の空気を伝えることができないんです。そこは、すごくこだわっていて、だからそんな私の世界観を共有できたり、許してくれるファンの皆さんと一緒に作っていくようなライブですから」
――そんなファンへの感謝を込めた曲「ありがとう」(2015年リリースの30周年記念曲)を最後に歌いました。
浅香「この曲は、ものすごい時間をかけて何度も何度も書き直して歌詞を作りました。最初は遠回りな表現だったものを最後は正反対のストレートな表現に書き直しました。私たちって、ファンの人たちに支えられている世界で生きているので、なおのこと常に感謝を伝えていかないといけないと思っています」