13年間で東大合格者50倍 公立の“リアルドラゴン桜”、覚悟と自主性の指導法

「本校には『覚悟』をもって入学してきて下さい」「皆さんの学力があれば、十分に東大を目指せます」「ただし、覚悟と準備なしに実現はありえません」――。数年前、そう記された文書がネット上で拡散され、“リアルドラゴン桜”と話題になった公立高校がある。うわさにたがわぬ指導力で、この春、公立校では日比谷に次いで全国2位となる50人の東大合格者(うち44人が現役合格)を輩出した横浜翠嵐高校とはどんな学校なのか。“リアルドラゴン桜”の指導法に迫った。

この春50人の東大合格者を輩出した神奈川の横浜翠嵐高校【写真:ENCOUNT編集部】
この春50人の東大合格者を輩出した神奈川の横浜翠嵐高校【写真:ENCOUNT編集部】

「『覚悟』をもって入学してきて下さい」と書かれた文書がネット上で話題に

「本校には『覚悟』をもって入学してきて下さい」「皆さんの学力があれば、十分に東大を目指せます」「ただし、覚悟と準備なしに実現はありえません」――。数年前、そう記された文書がネット上で拡散され、“リアルドラゴン桜”と話題になった公立高校がある。うわさにたがわぬ指導力で、この春、公立校では日比谷に次いで全国2位となる50人の東大合格者(うち44人が現役合格)を輩出した横浜翠嵐高校とはどんな学校なのか。“リアルドラゴン桜”の指導法に迫った。(取材・文=佐藤佑輔)

「私も毎週楽しみに見てますよ。ただ、やはりドラマのようにはいかない。ここまで来るには随分と時間がかかっています。それに、そこまで東大、東大と言ってるわけじゃない。より高い目標を持ちなさいと言っているんです」

 篠塚弘康校長によれば、横浜翠嵐高校が本格的に進路指導に力を入れ始めたのは15~16年前。もともと東大合格者は毎年10人前後と、湘南高校と並ぶ県内有数の進学校だったが、年々合格者が減り2007年にはついに1人にまで落ち込んだ。危機感を抱いた当時の校長により、それまでの自由闊達(かったつ)な校風をあらため進路指導改革に乗り出したが、歴史ある伝統校ゆえに当初は反発の声も大きかったという。

「当時は生徒、保護者、OBのなかにも、生徒の自主性に任せるとする考えが多くあった。生徒総会などでも、随分もめたと聞いています。それでも辛抱強く改革を進め、今では翠嵐から難関大を目指したいという生徒が多く入ってくるようになりました」

 大学受験において、首都圏では長らく私立優勢の状況が続く。塾や予備校などのビジネスも盛んで、神奈川では高校受験生の9割以上が何らかの学習塾に通っているというデータもあるという。13年に横浜翠嵐高校に赴任し、同校の進路指導改革を中心的に担ってきた中村悠人総括教諭は、他県進学校や塾、予備校を積極的に視察。特に地方進学校で盛んに行われていたという学年集会をヒントに、年6回程度の進路集会と年2回の保護者進路説明会を定着させた。

「地方ほど受験は団体戦という意識が強い。私立も学校全体が一丸になって受験に向け動いています。たとえば、中高一貫では入学から5年間で基礎を学び終え、最後の1年は予備校のように応用問題をやり込んでいる。そこに3年間で追いつくには、やはりある程度の量とスピードをこなさなければなりません。受験という土俵で、公立を選んだ生徒たちに損をさせたくないんです」

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