来る6月13日、東京ドームにて開催される「Yogibo presents RIZIN.28」。最大の注目は、参加者16人によって実施される「バンタム級JAPANグランプリ」である。東京ドームでは1回戦8試合のうち4試合が行われるが、この1回戦で朝倉海と闘うことが決まったのが渡部修斗（32）だ。渡部は小学校から柔道を学び、中学からはレスリングに傾倒していた根っからのグラップラー。2018年には「Fighting NEXUS」（ネクサス）初代バンタム級王座決定トーナメントを制し、王座を戴冠。父は「修斗」初代ウエルター級チャンピオンの渡部優一というサラブレッドだ。果たして、渡部はいかに朝倉を攻略するのか。渡部本人と「ネクサス」の山田峻平代表に意気込みを聞いた。（取材・文＝“Show”大谷泰顕）

――RIZIN初戦は20年8月の井上直樹戦（井上のリアネイキッドチョークに一本負け）でした。

渡部「最初は緊張しましたね。憧れっていうか、最初のオープニングセレモニーで緊張しちゃって。2回目の試合（21年3月、名古屋での田丸匠戦）の時は緊張しなくて（2R4分13秒、リアネイキッドチョークで勝利）。1回経験して、いつもと同じ試合なんだなっていうことが分かってきた感じです」

――田丸戦では、試合後に「試合前のYouTubeの予想で全部が自分の負けと書いてあってムチャクチャ悔しくて」と半ベソをかいたように訴えていたのがSNSで話題になっていました。

渡部「あの試合は仲間の期待に応えられたのがうれしかったっていうのと、自分のことを弱く、甘く見ていた人たちにアピールできました。今まで人に感謝したことはあるんですけど、『ひっくり返したぞ』っていうか『見たか！』はなかったんです」

――山田代表から見ても結構、たまっていた感じですか？

山田代表「勝つとか負けるっていう予想じゃなくて、負けろ、とか言われていたからね」
渡部「そうですね。だけど、負けるのはしょうがないじゃないですか」

――勝負事である限り、負けることもありますからね。

渡部「はい。それと親しくしている選手とかファンに何を言われてもあんまり気にしないんですけど、話したことも練習したこともない選手に言われるのはちょっと違うかなと思いますね。あなたは俺の何を知っているの？　って思っちゃいますね、正直」

――いろんな方がいますからね。

渡部「自分より実績のある選手で『あのレベルでRIZINに出れるんだ』とか『彼女（女子格闘家の青野ひかる）とイチャイチャしている』とか言っている方がいて。確かに彼女はセコンドで控室にいましたけど、『控室を見たけど、イチャイチャしていて』とか言っていて。完全な言いがかりだろうって。自分としては真摯（しんし）に向き合ってきたつもりなのに、そんなふうに見てるの？ って思いました」

――悲しくなった？

渡部「悲しいというか余裕ないのかなって。自分より有名だったり、実績のある格闘家がそんなことを言っているのを聞くと、そうとしか思えないんです。もし自分がこれから少しでも有名になっていったら、そういうことは言いたくないっていうか。あんまり人を陥れるようなことはしたくないですね。常に余裕は持っていたいと思います。自分がテレビで見ていた格闘家は違っていたから。そういうふうにはなりたくないとは強く今も思っていますね」

――それだけ納得がいかなかった？

渡部「そこまで言うんだったら、会場で会った時もそうやって俺に言ってきてよっていう感じになっちゃいますね」

――ちなみにRENA選手は自身のツイッターで「年上で失礼かもやけど、渡部修斗選手のマイクが可愛すぎた。また聞きたい笑」とツイートしていました。

渡部「RENAさんが反応してくれて、うれしいですね」

――ともあれ、田丸戦に勝ったことで、「バンタム級JAPANグランプリ」にエントリーされる道が見えてきました。

渡部「試合が終わったばかりだったし、あの段階ではその話には乗り気じゃなかったんですよ。あの週は胃腸炎になって体調を壊していて。試合後の会見も、ずっと下痢をしながら出ていたので、顔もゲッソリしていたんです。歩く時も胃がキリキリしてご飯も食べられなくて。だから、これとても次、試合できるのかなみたいな。そんな感じでした」
山田代表「（渡部が）出ていいんですかね？」って聞くんですよ。だから『これ蹴って何するの？』って言いましたね」
渡部「そう言われて、確かにそうだなって思って、挑戦しようってなりました」