eスポーツ選手と“家族”の関係 キャリアの分岐点で背中を押した言葉「お前はまだやれる」

役者を目指して上京し、今はデジタルカードゲーム「シャドウバース」のプロ選手として横浜F・マリノスeスポーツ(以下、F・マリノス)に所属するバーサ(22)。目標を切り替えて“下積み”からプロにまで駆け上がり、昨シーズンは福岡ソフトバンクホークスゲーミング(以下、SHG)の一員としてリーグ優勝にも貢献している。そのキャリアの背景にある家族の理解とサポート、そして移籍を経て再認識したファンへの思いに迫った。今回は後編。

バーサが迷ったときに背中を押したのは父親の言葉だった【写真:ENCOUNT編集部】
バーサが迷ったときに背中を押したのは父親の言葉だった【写真:ENCOUNT編集部】

キャリアに悩んだときに背中を押した父親の言葉「まだ山口に戻ってくる段階じゃない」

 役者を目指して上京し、今はデジタルカードゲーム「シャドウバース」のプロ選手として横浜F・マリノスeスポーツ(以下、F・マリノス)に所属するバーサ(22)。目標を切り替えて“下積み”からプロにまで駆け上がり、昨シーズンは福岡ソフトバンクホークスゲーミング(以下、SHG)の一員としてリーグ優勝にも貢献している。そのキャリアの背景にある家族の理解とサポート、そして移籍を経て再認識したファンへの思いに迫った。今回は後編。(取材・文=片村光博)

 18歳で山口から役者を目指して上京したものの、声優養成所での1年間を終えてオーディションでは不合格。夢をあきらめ切れずに過ごす中で、シャドウバースのプロリーグが発足し、新たな目標に向かって走り出した。

 当初の目標から切り替えて、発足間もないプロリーグの選手を目指す。その決意は揺るぎないものだったが、客観的に見れば家族からの反対があってもおかしくない状況でもあったはずだ。しかし、家族はバーサの思いを尊重し、挑戦を見守ってサポートしてくれた。

「最初は『分からない』『シャドウバースのプロって何?』という反応でした。ただ、反対はされなかったですね。両親とも子どもには自由にさせたい主義で、何をやってもいいというスタンスでした。プロになってからはいつも試合を見てもらっていて、『俺、やっているよ』と伝えるとすごく喜んでくれます。

 父はもともとバンドをやっていたんですが、家族に反対されて実家の酒屋を継ぐことになったんです。自分ができなかった分まで、子どもには自由にさせたいのかなと。直接言われたことはないですが、『絶対そうだろうな』というのは伝わりますね」

 父親からは毎試合後に電話があり、プレイへの指摘もされる。バーサは「結構、変わった父ではありますね」と照れ笑いを浮かべるが、敗戦に落ち込むときにはメンタルサポートにもなっているという。

 そして、昨シーズン終了後には、プロ選手を志したときに続いての大きな転機がやってきた。前所属のSHGとの契約が満了となり、プロ選手として新たなチームを探すのか、それともまったく別の道に進むのか。思い悩んでいたタイミングで背中を押してくれたのは、父親の言葉だった。

「今回、FA(フリーエージェント)宣言を出したことにも、父の後押しがあったんです。自分自身、選手を続けていくか別の道に行くのかすごく迷っていたんですが、父からは『だまされたと思ってFA宣言を出せ。まだ山口に戻ってくる段階じゃないし、お前はまだ東京でやれる』と言ってくれました。そして背中を押されてFA宣言を出して、F・マリノスに入れた。すごく大きな後押しでした」

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