出産を機に再びムエタイの世界へ 元女子世界王者の激動半生とインストラクターの今
立ち技最強の格闘技とも言われる、ムエタイ。そのムエタイで試合前に行う儀式「ワイクルー」が、近年、女性向けエクササイズとして効果的だと注目を集めている。元女子ムエタイ世界王者で、日本人初の「ワイクルーフィット」の生みの親でもあるRIKAさんの素顔に迫った。
父はムエタイの伝説的選手も、始めたきっかけはダイエット目的
立ち技最強の格闘技とも言われる、ムエタイ。そのムエタイで試合前に行う儀式「ワイクルー」が、近年、女性向けエクササイズとして効果的だと注目を集めている。元女子ムエタイ世界王者で、日本人初の「ワイクルーフィット」の生みの親でもあるRIKAさんの素顔に迫った。(取材・文=佐藤佑輔)
「子どもの頃は自分がムエタイをやって、ましてやチャンピオンになるなんて思ってもみなかった。運動音痴で、どんくさくて、人前でも話せないような子だったのに、気づけばムエタイで人生が変わってましたね」
ムエタイの本場、タイ・バンコク生まれ。ムエタイ選手として聖地ルンピニースタジアムやラジャダムナンスタジアムでランカー入りした父と日本人の母のもとに生まれたRIKAさんだが、子どもの頃はまったく興味を持てなかったという。
「タイでは夕食時にテレビをつけるとだいたいムエタイの試合をやってる。血みどろの試合を見ながら、『うわー、食欲なくすなー』としか思ってませんでしたね(笑)。私が日本の学校に通いたいと言って、中学から一家で日本に来たんですが、日本語の読み書きができない父は、母の支えもあって日本でムエタイのコーチを始めた。私が16歳のときに父が独立してジムを持ったんですが、意外と女性の会員さんもいるんだと思って、ダイエット目的の軽い気持ちで始めたんです」
本国タイではレジェンド的存在だった父のもと、ひたすら時間をかけて基本的な動きを叩き込まれたが、女性ということもあり、相手を立てての対戦は一向に許されなかったという。本格的に打ち込むというわけでもなく、なんとなく練習は続けていたが、大学を卒業した22歳のとき、ジムの先輩にそそのかされ“ノリ”で参加したタイでの大会が大きな人生の転機となる。
「気楽な気持ちで臨んだら、多少聞き取れるタイ語のアナウンスで『あのセンチャイ・トングライセーンの娘がついにデビューだ!』って聞こえてきて、『私のこと!?』って(笑)。プロを輩出したりして知名度も上がってきた頃だったので、実の娘が負けたらジムの名前に傷がつく。絶対に負けられないと思って、壮絶な泥仕合の末に何とか勝ちました。火事場の馬鹿力ですね、ハハハ」