肉体と肉体の激突 大日本プロレスのストロングBJにプロレスの醍醐味を再認識

大日本プロレスはデスマッチの団体というイメージが強い。確かに、蛍光灯や画びょう、ガラスボード、コンクリートブロックなど数々の凶器を駆使したデスマッチは日々過激になり、ファンの熱狂ぶりもすさまじい。

岡林裕二(右)のチョップが野村卓矢を襲う【撮影:柴田惣一】
岡林裕二(右)のチョップが野村卓矢を襲う【撮影:柴田惣一】

大日本は「ストロングBJ」も熱い

 大日本プロレスはデスマッチの団体というイメージが強い。確かに、蛍光灯や画びょう、ガラスボード、コンクリートブロックなど数々の凶器を駆使したデスマッチは日々過激になり、ファンの熱狂ぶりもすさまじい。

 現在、シングルリーグ戦「一騎当千」が開催されているが、今年はデスマッチ部門。命知らずのデスマッチ戦士たちの、刺激的な闘いが繰り広げられている。

 派手なデスマッチに目が行きがちだが、通常ルールの「ストロングBJ」も熱い。特に岡林裕二と野村卓矢の抗争が、ヒリヒリしている。

 プロレスリングBASARAの阿部史典と「アストロノーツ」を組み、BJWタッグ王座を保持する野村。「ハンドルを握ると人が変わる」「酒を飲むと人が変わる」という例えがあるが、野村の場合は「リングに上がると人が変わる」だろう。普段は口数も少なく、温和で優しいタイプだが、その豹変(ひょうへん)ぶりはすさまじい。

 栃木県出身の野村は、那須与一ゆかりの源氏の家系だという。那須与一は源平合戦・屋島の戦いにおいて、70メートル先の船上で揺れる平家の扇を一矢で射抜き、源氏の士気を高め勝利をもたらした武将だ。

 野村は「強くなりたくてプロレスラーになった」と胸を張るように、勝気全開のハードなファイトを得意としている。日々、闘いと強さを追求している大日本の未来だ。

 一方の岡林は自衛隊出身。人間離れしたパワーとスタミナを誇り、ゴーレムと評され、高知県出身らしく明るい豪傑。常に安定した豪快な試合とひたすら元気な人柄で、人気を博している。

 実は野村が入門テストを受けた時の試験官が岡林だった。「落としてやろうと思ったのに、食いついて来て、こいつは根性があると思った」と振り返る。タッグでもシングルでも対戦の機会が増えたが「先輩の顔に張り手して来るなんて、信じられない。自分の若い頃はようできんかったわ」と目を丸くする。

 とにかく野村は気おくれすることなく、お構いなしに先輩に張り手を連発、時にはグーパンチをお見舞いしていくのだ。

 岡林は入江茂弘と「混ぜるな危険」というタッグを結成している。頑丈な肉体が凶器で、底なしのパワーとブルファイトで「混ぜるな危険」と名付けられているが、実は野村の方が危険ではないかと思わされることもしばしばだ。

 岡林は後輩との対戦であっても、指導するという気持ちは吹っ飛ぶ男だ。真っ向から立ち向かい、2人の激突は清々しいほどに激しいやり取りになる。

 飛んだり跳ねたりの華麗な空中戦、インサイドワークを駆使したベテラン選手の老かいな闘い、楽しいコミカルな試合。いろいろな種類のファイトスタイルがあるが、この2人の試合を目の当たりにすると「プロレスは闘いなのだ」という基本的なことを再認識させられる。

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