WWE女子部門を変えたリック・フレアーの実娘シャーロットが熱い支持を集める理由
WWEの日本人スーパースター“カブキ・ウォリアーズ”のアスカ&カイリ・セインが女子タッグ王者に君臨している。その歴史的快挙に説得力をもたらしているのが”ある相手の存在”だ。プロレスとはどんな相手と戦うのか、たとえばベルトの価値がそうであるように、対戦相手との試合内容によってレスラーの価値が上下すると言っても過言ではないだろう。
父親ゆずりのスター性と実力
WWEの日本人スーパースター“カブキ・ウォリアーズ”のアスカ&カイリ・セインが女子タッグ王者に君臨している。その歴史的快挙に説得力をもたらしているのが”ある相手の存在”だ。プロレスとはどんな相手と戦うのか、たとえばベルトの価値がそうであるように、対戦相手との試合内容によってレスラーの価値が上下すると言っても過言ではないだろう。
2019年12月15日の「TLC」でメインを張ったアスカ&カイリ組が挑戦者として迎え撃ったのは、シャーロット・フレアー&ベッキー・リンチ組だった。2人は15年7月、ステファニー・マクマホンの号令によって“女子革命”をスタートさせた主要人物である。以来、モデル級のルックス重視と言われた”ディーバ路線”を実力主義に改革。その大きな成果が、2019年4月に行われたプロレス界最大規模の祭典「レッスルマニア35」だった。元UFC女子王者のロンダ・ラウジ-VSシャーロットVSベッキーの女子トリプルスレットマッチがこの日のメインを飾った。女子の試合がレッスルマニアのメインを締めたのは史上初で歴史的快挙だった。
シャーロットとベッキー。この2人がメインで戦うのはもはや珍しくはない風景。とはいえ、カブキ・ウォリアーズが王者として彼女たちを挑戦者として迎えるとは、少し前まではとてもじゃないが信じられない画期的出来事だ。なにしろシャーロットは、16回世界王者に君臨し、日本のオールドファンには馴染みのある”ネイチャーボーイ”リック・フレアーの実娘という超サラブレッド。リック・フレアーはかつて全日本プロレスにNWA世界王者として何度も来日した伝説のレスラーだ。個人として、またユニットとしてもWWE殿堂(ホール・オブ・フェイム)入りも果たしている、世界のプロレス史に欠かせない大物中の大物なのである。
父の敗北を間近で見てレスラーデビューを決意
では、フレアーの遺伝子を継ぐシャーロットとはいったいどんな人物なのか、ここで掘り下げてみようと思う。1986年4月5日、ノースカロライナ州“シャーロット”に生まれた彼女は、もともとプロレスラーになることには興味を持てなかったという。だが、2008年の「レッスルマニア24」で父リック・フレアーの”地球規模的引退試合”と言われるショーン・マイケルズ戦を生で見て心を打たれる。その後1年半後に父がカムバックするとWWE入りを目指すようになる。12年5月にWWEと契約を交わし、13年7月にWWEの傘下団体「NXT」でデビュー。当時のNXTで初マットを踏んだ事実からも、いきなり「ロウ」や「スマックダウン」でデビューするような二世タレント扱いの特別待遇ではなかったことがうかがえる。
リングネームを“シャーロット”と名付けられた彼女は父を受け継ぐ恵まれた体格ですぐに頭角を現わす。父の得意技だった“足4の字固め”をブリッジし発展させた“フィギュアエイト”をひっさげNXT女子戦線の中心人物になると、2015年7月にWWEの一軍番組「ロウ」に昇格を果たした。しかもこれは、WWEにとって新機軸スタートのタイミング。冒頭にも触れたステファニーがディーバ革命を宣言し、シャーロットのほかにベッキー・リンチ、サーシャ・バンクス、また一足早く昇格していたペイジらとともに”実力主義”の闘いを展開していく。
2015年7月19日「バトルグラウンド」でのPPVデビューで勝利を飾ると、ディーバ路線を象徴していたベラ・ツインズと抗争。9月20日「ナイト・オブ・チャンピオンズ」でニッキー・ベラの長期政権を陥落させディーバズ王座を奪取、父が祝福に駆けつけた。
その後、「チャンピオンはフレアー一家のお嬢ちゃん」と挑発されペイジとの抗争がスタートする。シャーロットの名門出身はあまりにも有名だが、ペイジもプロレス一族出身であることは当時ほとんど知られていなかった。実家が英国の家族運営団体であることは、19年公開の映画「ファイティング・ファミリー」で広く知られることになる。