「バキ道」板垣恵介氏が相撲の魅力に取りつかれた理由 「浮き世離れした話をたくさん聞きたい」

「週刊少年チャンピオン」で「バキ道」を連載中の漫画家・板垣恵介氏(63)が、今年で刃牙シリーズの連載開始から30周年を迎える。「バキ道」では現在、相撲VS刃牙軍団による全面対抗戦が行われている。これまで「最強」を求めてプロレスラーや格闘家、中国拳法家、侠客、毒の使い手、死刑囚…、はたまた古代の原人から宮本武蔵まで復活させて刃牙と闘わせてきた。板垣氏は、なぜ相撲に行き着いたのか。インタビュー前編では、最近公開になった話題の映画「相撲道」(坂田栄治監督)の感想も合わせて、相撲の魅力について幅広く話をうかがった。(取材・文=“Show”大谷泰顕)

著者近影【写真:(C)Mao Ishikawa】
著者近影【写真:(C)Mao Ishikawa】

カラダのIQが飛び抜けて高い天才たち

「週刊少年チャンピオン」で「バキ道」を連載中の漫画家・板垣恵介氏(63)が、今年で刃牙シリーズの連載開始から30周年を迎える。「バキ道」では現在、相撲VS刃牙軍団による全面対抗戦が行われている。これまで「最強」を求めてプロレスラーや格闘家、中国拳法家、侠客、毒の使い手、死刑囚…、はたまた古代の原人から宮本武蔵まで復活させて刃牙と闘わせてきた。板垣氏は、なぜ相撲に行き着いたのか。インタビュー前編では、最近公開になった話題の映画「相撲道」(坂田栄治監督)の感想も合わせて、相撲の魅力について幅広く話をうかがった。(取材・文=“Show”大谷泰顕)

――先生、今日は「相撲」をテーマにお話をうかがいに来ました。

「今、作品中で相撲を取り上げているので、相撲に関する質問が増えているんだけど、その度にこう答えている。あの人たちって体型からして洗練されたものが感じにくいのか、伝わりにくいんだけど、あの人たちは天才なんだと。特別な人たちだと。そして最近使っている表現なんだけど、カラダのね、IQがとてつもなく高い」

――カラダのIQ!

「飛び抜けて高い! そんな天才たちを(日本相撲協会という)組織で面倒を見て、稽古と食事と、あまつさえ昼寝までをさせて、そんな手厚い育成を施して(競争の末に)残った人たちでしょ。そんな超エリートの全力の10秒は、いったいどうやったら止められんだと。他のジャンルのボクサーでもいいし、総合格闘技のヘビー級でもいいけど、あの人たちの10秒って止められるんだろうか? まあ、止められないだろうな」

――考えただけでもすごそうですね。最近、「相撲道」という映画も公開されましたね。

「観ましたよ」

――感想をお聞かせください。

「さっきも話した通り、作品の中で相撲を取り上げているから、興味深く観ましたよ。『毎日が交通事故だ』と!」

――妙義龍関がそうコメントしていました。

「あれはうれしい印象的な言葉だった。それでね、けがはつきものとはいえ、壊れないんだもん、そう簡単には」

――あれだけぶつかり合っているのに。

「うん。そして、これは以前、九重親方の元大関・千代大海関から聞いたんだけどね。彼が言うには、幕内で無傷なヤツなんて1人もいないって」

――やっぱりそうなんですね。

「あれだけのカラダを作って、無事ではいられない。しかしそんな弱みも見せず、10秒なり20秒に全力を尽くしてみせる。その10秒ってどんなだろうと」

――確かに。

「そこはすごく興味があります(キッパリ)」

――映画では豪栄道関と妙義龍関の物語が描かれていましたね。

「2人は子どもの頃から知り合いなんだよね。知り合いというか意識してる同志なんだよね」

――先生的に「毎日が交通事故」もそうですけど、印象的だったのはどの場面ですか?

「稽古シーンだね。取組は迫力とか息遣いとかはすごいけど、稽古は地味だし、早朝から始まる。実際に見たこともあるんだけど」

――直接、相撲部屋に足を運んだことも?

「うん。2度ほど見せていただいているんだけど、早朝から見ていると、遅れてくる人ほど強いんだよね。実際には横綱みたいな強い人がいることは知っていながらも、さっきまで無敵で、こんなヤツに勝てるヤツが現れるんだ、と思いながら見ていると、さっきまで無敵だった力士が手も足も出なくなっちゃう」

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