若き逸材たちを掌で転がす「円熟のキラー」 王道プロレスを進化させた男は強い

「円熟のキラー」秋山準・51歳がプロレス界に改めて存在感をアピールする。

さまざまな手を打ってきた遠藤哲哉の常に一歩先をいく秋山準(左)【写真:柴田惣一】
さまざまな手を打ってきた遠藤哲哉の常に一歩先をいく秋山準(左)【写真:柴田惣一】

ノアにとって約10年ぶりの日本武道館大会開催

「円熟のキラー」秋山準・51歳がプロレス界に改めて存在感をアピールする。

 ノア2・12日本武道館大会で丸藤正道と組み、清宮海斗(24)、稲村愛輝(28)と対戦。返す刀でDDT2・14カルッツかわさき大会で、KO-D無差別級王者・遠藤哲哉(29)に挑戦する。

 中1日で、息子のような若手選手との連続対戦にも、余裕たっぷり。毒舌はさえまくり、すっかり飲み込んでいる。

 とはいえノアで対戦する20代コンビは、「若手に胸を貸す」レベルではない。清宮は2018年にGHCヘビー級王座に君臨し、ノアの先頭に立った逸材。稲村もデビュー3年目とはいえ、恵まれた体を前面に押し出したファイトで、急浮上しているエース候補だ。

 丸藤が「若い選手の心をバキッと折ってしまうのが秋山さん」という通り、円熟したとはいえ、とんがりまくっている。1992年に全日本プロレスに入門し、2000年のノア旗揚げに参加した。29年のキャリアを誇っている。

 普通は年齢とともに丸くなるものだが、秋山は違う。えぐさ、激しさ、厳しさ、恐ろしさ、冷徹さ……年を追うごとに増すばかり。秋山自身も、「朝起きた時の気分で、その日の機嫌が決まる。俺の怖さは、どこで怒りが爆発するのか、分からないところかな」と自己分析するが、いずれにせよ、2月12日「鬼の秋山」が登場するのは間違いない。

 ノアにとっては約10年ぶりの待望の日本武道館大会開催だが、秋山はノアに13年間、在籍していたのだ。清宮と稲村の体に嫌というほど「ノア魂」をたたき込むはず。

 DDTの2・14川崎大会に向けても、王者・遠藤をほんろうしている。秋山の兄貴分・小橋建太に教えを請うた遠藤を「小橋さんのところに行った時点で俺の勝ち」と一蹴。「DDTをさらなる高みに持っていくのが俺の仕事」とベルト奪取を確信している。

 遠藤は「小橋さんから青春の握り拳を伝授された。これから、小橋さんが取り組んだ特訓シリーズを受け継いでいけたら」と豪語。数々の独特の特訓で心身を鍛え「鉄人魂」を磨き上げた小橋のすべてを吸収するという。加えて秋山を誰よりも知る小橋から、秋山の弱点も教わったようだ。

 昨年のD王公式戦で、秋山は遠藤に敗れている。その上、遠藤は秋山対策に万全を期している。ところが、「チャンピオンが小橋さんを立会人に呼んでくれたようだが、俺は小橋さんが立会人を務めた試合には、ほとんど勝利しているよ」と冷たく笑い飛ばした。

 遠藤が頼った小橋も、秋山には「勝利の神」なのだ。遠藤の仕掛けをことごとく切り返し、逆に自分のラッキーアイテムとしてしまうのだから、秋山のしたたかさは、さすがとしか言いようがない。

「ノアの星」清宮、稲村も「DDTのエース」遠藤も、手玉に取っている秋山。2・12日本武道館大会、2・14川崎大会、たった3日で「円熟のキラー」が、日本プロレス界の主役の座をいただく。

次のページへ (2/2) 【写真】いつもと違うヘアスタイルの秋山準に小橋建太も苦笑い
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