新型コロナが脳卒中の引き金になる可能性も…専門医が解説する2つの病の因果関係

前大脳動脈解離による、くも膜下出血、脳梗塞で入院していたお笑いコンビ「爆笑問題」の田中裕二が27日に退院した。田中は昨年8月に新型コロナウイルスに感染し入院しており、にわかに新型コロナと脳卒中の関連性に注目が高まっている。日本脳卒中学会では昨年末、感染者が脳卒中を発症した際に重症化のリスクが上がる傾向があるとの調査報告をまとめたが、2つの病にはどのような因果関係があるのか。両者の関連を研究する埼玉医科大学国際医療センター脳卒中外科の鈴木海馬医師に聞いた。

「爆笑問題」の田中裕二は前大脳動脈解離によるくも膜下出血、脳梗塞で入院していた【写真:Getty Images】
「爆笑問題」の田中裕二は前大脳動脈解離によるくも膜下出血、脳梗塞で入院していた【写真:Getty Images】

専門家に聞く コロナで免疫機構が暴走し、炎症を起こす物質を大量分泌

 前大脳動脈解離による、くも膜下出血、脳梗塞で入院していたお笑いコンビ「爆笑問題」の田中裕二が27日に退院した。田中は昨年8月に新型コロナウイルスに感染し入院しており、にわかに新型コロナと脳卒中の関連性に注目が高まっている。日本脳卒中学会では昨年末、感染者が脳卒中を発症した際に重症化のリスクが上がる傾向があるとの調査報告をまとめたが、2つの病にはどのような因果関係があるのか。両者の関連を研究する埼玉医科大学国際医療センター脳卒中外科の鈴木海馬医師に聞いた。(取材・文=佐藤佑輔)

 脳卒中には、脳の血管に血栓が詰まる脳梗塞、脳の血管が破れる脳出血、くも膜下出血がある。このうち、脳梗塞の原因である血栓が、新型コロナ感染で増加すると鈴木医師は指摘する。

「コロナウイルスに感染すると体内には免疫機構が暴走して炎症を引き起こすサイトカインが大量に出ることが分かっています。これをサイトカインストームといいます。このサイトカインストームが起こると血液凝固機能に異常をきたし、血栓を形成するのです。よく、風邪のひき始めやインフルエンザでも関節の痛みというものがありますが、これも関節に炎症が起こっていることが原因と言われています。炎症は一般的な風邪でもあるものですが、コロナの場合はよりその症状が強いと考えられます。またコロナウイルス自体が血管の内皮細胞を障害して血栓が形成されるとも考えられています」

 このようにコロナウイルスに感染すると血栓形成を引き起こす状態が複数起こるため、より大きな血栓が脳血管の太い箇所に詰まり、より重症化しやすいのが新型コロナ由来の脳卒中の特徴だ。日本脳卒中学会が昨年2月から12月までに新型コロナに感染し脳卒中となった患者22人を調査したところ、18人が脳梗塞で、そのうち5人が死亡、10人が寝たきり重症化の割合が極めて高いことが分かる。

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