「なんだこりゃ?」開発者驚愕 ローソンがAI活用でグルメ新商品 “意外性とおいしさの両立”は人間の力

あらゆる産業でAIの導入・活用が進む中、大手コンビニエンスストアが、新たなチャレンジに打って出た。ローソンが今月29日、「生成AIが発案した商品コンセプト」をもとに開発したスイーツ、ベーカリー、サラダの3商品を発売開始。早くも反響が広がっている。あえて過去の販売実績や市場データを使用せずに、生成AIにアイデア提案を“お願い”。人の手で試作を重ね、商品に仕上げた。開発担当者が「なんだこりゃ?」と驚く発想ばかりだったという。AIに指示するための文書「プロンプト」の一例も……。最先端の技術と向き合う開発秘話に迫った。

生成AI発案のローソン商品
生成AI発案のローソン商品

「AIの提案をそのまま商品化したわけではありません」

 あらゆる産業でAIの導入・活用が進む中、大手コンビニエンスストアが、新たなチャレンジに打って出た。ローソンが今月29日、「生成AIが発案した商品コンセプト」をもとに開発したスイーツ、ベーカリー、サラダの3商品を発売開始。早くも反響が広がっている。あえて過去の販売実績や市場データを使用せずに、生成AIにアイデア提案を“お願い”。人の手で試作を重ね、商品に仕上げた。開発担当者が「なんだこりゃ?」と驚く発想ばかりだったという。AIに指示するための文書「プロンプト」の一例も……。最先端の技術と向き合う開発秘話に迫った。

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「今回の取り組みは、生成AIに商品を作らせることが目的ではなく、生成AIならではの自由な発想を活用し、新しい商品開発の可能性を探るために実施しました」。同社開発担当者は、新たなトライをこう振り返る。

 まずは、生成AIが提案した「レモンタルトとピクルスの組み合わせ」から着想を得て開発した『レモンタルト(ピクルス風味)』(税込み270円)。なかなか奇抜な組み合わせだ。次に、「発酵素材を掛け合わせたあんバター」の発想に基いた『酒種あんバターヨーグルトパン』(税込み181円)。そして、「パフェのような見た目で楽しむサラダ」のアイデアを具現化した「混ぜて食べる 和風パフェサラダ(ビーフン入り)」(税込み475円)。ユニークな新メニューが並ぶ。

 実際に食べてみると、レモンタルトはレモンの酸っぱさとピクルスのスパイス感が面白い味になっており、パンもふわふわ食感で濃厚な味わいだった。SNS上でも「どんな味か気になる」「想像がつかない」「こういうAIの使い方、普通におもしろい」など話題に上がっている。

 生成AIによるアイデア創出を行い、自由な発想を起点に、商品開発者が試作や検証を重ねて完成させた商品。“人間が味や品質を磨き上げる”ことがポイントの一つだ。けっして丸投げではないという。それでは、このアイデア出しについて、どのようにAIを活用したのか。

「通常の商品開発では、市場動向や過去の販売実績を分析し、ターゲットとなるお客様やニーズを設定した上で商品コンセプトを検討しますが、今回はあえてそのプロセスとは異なるアプローチを取りました」

 具体的には「ベーカリー、デザート、デリカといったカテゴリーを設定した上で、『商品コンセプトやアイデアを考える段階』で生成AIに商品ジャンルやコンセプト、商品のこだわりなどを提案させました。一方で、原材料の選定、味わいや品質の確認、商品化の最終判断などはすべて当社の商品開発担当者が行い、人が商品として成立する形にしています」。

 まったく新しい発想を生み出すために、AIの力を借りた。「今回は『とにかく今までにない商品を考える』という考え方のもとで取り組んだため、アイデア創出段階ではあえて過去の販売実績や市場データを入力していません。通常の商品開発では、市場分析やターゲット設定、お客様ニーズの把握を経て商品コンセプトを考えますが、今回は既存の売れ筋商品や市場トレンドに発想が引っ張られないよう、『斬新さ』や『意外性』を重視したコンセプトの創出を目的としました」と説明する。

 使用したプロンプト例を教えてもらった。

「『なんだこりゃ!』と思わせる新商品を提案してください」
「今までにない組み合わせ・味・構造であること」
「ただし、食べ物としては成立していること(破綻しない)」
「禁止事項:普通の組み合わせ、流行の寄せ集め」

 興味深い“指示”の内容ばかりだ。担当者は「アイデアの創出(プロンプト)については、『今までにない組み合わせや味』『商品名や見た目を見た瞬間に驚きがあること』『意外性がありながらも食べ物として成立すること』『食べてみたらおいしいこと』といった観点で行いました。生成AIにはコンセプトの起点となる発想を求め、その中から担当者が実現性やおいしさを考慮して候補を選定し、試作と検証を重ねながら商品として仕上げています。なお、使用した生成AIの具体的な利用環境やプロンプトの詳細については、公開を差し控えています」と話す。

「生成AIを『開発者』ではなく、『アイデアパートナー』として活用した」

 AIがひらめいたアイデア。関係者の中でも、驚きに加えて、いい意味の“違和感”が広がったという。

「率直な印象は、『本当に商品として成立するだろうか』という驚きでした。例えば、『レモンタルトとピクルス』の組み合わせは、人の発想だけではなかなか出てこない組み合わせです。商品名や組み合わせを見た瞬間に、『なんだこりゃ?』と思うような発想が多く、まさに今回、生成AIに期待していた意外性が感じられました」

 一方で、単に奇抜なだけでは商品にはならない。ここからが、リアルな経験を重ねたプロの腕の見せどころだ。「そのため開発担当者の間では、『意外だけれど実際に食べたらおいしくなる可能性があるのではないか』『どのように仕上げれば商品として成立するか試してみたい』といった声が上がり、試作に進みました。AIの提案をそのまま商品化したわけではありません。生成AIが担ったのは商品コンセプトの発案までであり、その後の商品化プロセスはすべて当社の商品開発担当者が行っています。例えば『レモンタルトとピクルス』というアイデアについても、そのまま組み合わせれば商品として成立するわけではありません。レモンの酸味、ピクルスの酸味、クリームチーズのコクなどのバランスを何度も調整しながら試作を重ね、最終的においしく食べられる商品へと仕上げました」と強調する。

 実際に苦労した点はどんなところだったのか。

「AIが提示したアイデアを『意外性』と『おいしさ』の両立という形で商品に落とし込むことでした。AIは自由な発想を提案できますが、それを実際の商品として成立させるためには何度も試作や味の調整が必要で、特にレモンタルトについては、複数の酸味のバランス調整を重ねながら商品化を進めました」と明かす。

 ローソンが生成AIを活用した商品を本格的に発売するのは今回が初めてとなる。3商品については、関東・甲信越エリアのローソン店舗(約4700店)の店頭に並ぶ。

 実は本格発売に先立ち、AIを活用した商品開発の可能性を検証する取り組みとして、今年4月にベーカリーの実験販売を実施していた。「実験販売の具体的な数値は公表しておりませんが、商品化や発売に向けた課題の洗い出しや、お客様に受け入れていただける商品の方向性を確認することができました。こうした検証結果も踏まえ、今回は『意外性』と『おいしさ』の両立を図り、本格発売に至りました」とのことだ。

 生成AIをいかに効果的に人間が使いこなしていくか。ビジネスシーンでは、未来へのチャンスである一方で、大きな課題でもある。

 今回の新商品開発に携わったローソン担当者からは「今回AIを活用したのは主にアイデア創出の工程であり、味わいや品質の確認、商品化の判断などは従来通り、人が行っています。私たちは生成AIを『開発者』ではなく、『アイデアパートナー』として活用したと考えています」「今回の商品はいずれも、日頃の商品開発では思いつきにくい切り口だったことが印象的でした」「生成AIは、固定観念にとらわれない新たな発想のきっかけを与えてくれる存在だと感じています」といった、率直な感想が聞かれた。

 今後、生成AIをどのように活用していくのか。

 同社は「今回の取り組みを通じて、生成AIは人の発想の幅を広げる有効なツールになり得ると考えています。一方で、お客様においしい商品をお届けするためには、味づくりや品質管理、商品化の判断など、人の経験や知見が欠かせません。そのため今後も、AIがアイデアの起点となり、人が商品として磨き上げるという、パートナーとしての考え方を基本に活用していきたいと考えています」と言及。

 そのうえで、「今回は既存の発想にとらわれないアイデアを得るため、過去の販売実績や市場データを活用しませんでしたが、今後については、販売動向やお客様の反響を確認しながら、販売実績や市場データも活用した商品開発を検討していきます」としている。

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