『イナイレ』漫画家・やぶのてんや氏が語る転機 「行き詰まり」から辿り着いたデフォルメ表現

大学在学中に「手塚賞」を受賞し、アシスタント経験を積みながら連載作家を目指していたやぶのてんや先生。順調なキャリアに見える一方で、本人はストーリー漫画に対する行き詰まりを感じていた。そこでコメディーへと舵を切り、見事「赤塚賞」をも得るのだが、その道程で作風の輪郭をつかんでいった。熱く、笑える、やぶの漫画誕生の転機をたどる。

インタビューに応じたやぶのてんや氏【写真:ENCOUNT編集部】
インタビューに応じたやぶのてんや氏【写真:ENCOUNT編集部】

ストーリー漫画からの転身

 大学在学中に「手塚賞」を受賞し、アシスタント経験を積みながら連載作家を目指していたやぶのてんや先生。順調なキャリアに見える一方で、本人はストーリー漫画に対する行き詰まりを感じていた。そこでコメディーへと舵を切り、見事「赤塚賞」をも得るのだが、その道程で作風の輪郭をつかんでいった。熱く、笑える、やぶの漫画誕生の転機をたどる。(取材・文=関口大起)

「ずっとストーリー漫画を作ってきたのですが、描いていて、少し行き詰まりを感じるようになったのです」

 若手漫画家の登竜門・手塚賞を受賞し、人気作家のもとでアシスタントを務める。連載作家に向けて着実に歩んでいるようにも思えるやぶの先生のキャリアだが、本人は違和感を抱えていた。

「もともとコメディー好きでもあったので、もう少しライトでギャグに寄せた話を描くのも悪くないなと。そこでアシスタントをしながら赤塚賞にも応募したんです」

 そうして見事、赤塚賞の佳作を受賞する。ジャンルを変えてすぐに結果をつかむ先生の才能には驚かされるばかりだが、謙遜しながらこう話す。

「受賞作が増刊号に掲載されたら人気が出なくて、連載につながるようなことはなかったんですけどね。ただ、担当さんがサッカー関連の記事ページのイラストを依頼してくれて、そのイラストが好評だったことから『うるとら☆イレブン』とサッカー漫画の作画を担当することになったのです。当時はJリーグブームで、ストーリーがありながら、サッカーの基本戦術などを学べる内容の作品でした」

コメディーへの挑戦で得たもの

『うるとら☆イレブン』での連載獲得からも分かるとおり、やぶの先生のアクションは単なるコメディーへの転身ではなかった。ストーリー漫画、そしてコメディーにも向き合ったことで、自身の強みと向き合うことができたのだ。

「シリアスとコメディーを行き来する感じが好きなんです。だから僕の作品には必ずその要素を入れたいと思っています。思い返せば中学生の頃にジャッキー・チェンの映画が大好きで、その影響があるのかもしれません」

 そして、この時期にもう1つ定まっていったのが、2頭身・3頭身のデフォルメ表現だという。

「実は、当時も今もサッカーに造詣が深いわけではないんです。長くサッカー漫画を描いてきたので愛着は湧いていますし、資料として映像を見たりはしますけどね。ただサッカーのイラストや漫画を描くことになった当初は、ちょっと困ってはいた。でも、そこで考えたのが“自分の描きたい方向に引き寄せる”ということだったんです」

 先生にとって、その1つが2頭身でキャラを描くことだった。もともとそういったスタイルのイラストが好きであり、クセの少ない絵柄でも特徴的に魅せられる点も気に入っていたという。それから、キャラクター性が分かりやすくなったり、子どもにも受け入れられやすくなったりするところも先生の感覚にフィットした。

 これらの気づきが、のちの『デジモン』シリーズや『イナズマイレブン』シリーズにも生かされていることは言うまでもない。行き詰まりを経て転身し、その先で得たものが、先生のシグネチャーとなったのだ。

○新刊情報
10月28日
『イナズマイレブンGO』完全版上巻
『イナズマイレブン 英雄たちのヴィクトリーロード』2巻
11月28日ごろ
『イナズマイレブンGO』完全版下巻

関口大起(https://x.com/t_sekiguchi_)

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