観客が残る中で作業 ライブ会場の天井から照明備品が落ち女性直撃、明るみに出た「ルールの盲点」
コンサート会場で天井から撤収作業に伴う移動中に照明備品が落下し、事故に巻き込まれた女性がいる。まだ観客が会場内に残る中、あってはならないアクシデントはなぜ起きたのか。被害者の女性と、照明担当の運営会社に詳しい状況を聞いた。

頭上から大きな音とともに落下物が襲ってきた
コンサート会場で天井から撤収作業に伴う移動中に照明備品が落下し、事故に巻き込まれた女性がいる。まだ観客が会場内に残る中、あってはならないアクシデントはなぜ起きたのか。被害者の女性と、照明担当の運営会社に詳しい状況を聞いた。(取材・文=幸田彩華)
事故は今年5月、香川県内で開かれたコンサート終了直後に起こった。天井付近のキャットウォーク(移動経路)から照明備品の入ったバッグが落下し、2階席の通路にいた女性の頭部を直撃。女性は現在も頭痛やむち打ちに悩まされ、精神的な苦痛を抱えている。
被害に遭ったのは、あいさん。自身のSNSで「5/24日にとあるライブ会場内にて公演後、照明フィルムが数枚入った入れ物が天井から落下し2階席通路にいた私の頭部に当たりました」と報告した。
投稿への反響は大きく、コメント欄には「治療費・診断書費用」「通院交通費」「休業損害」「慰謝料」など、請求できる可能性のある項目についてのアドバイスも寄せられた。
当日、あいさんは仕事で車いす利用者に同行し、ライブを観覧していた。公演が終わり、退場するため2階席の通路に出たところ、突然、頭上から大きな音とともに落下物が襲ってきた。
「落下した時は、爆発音みたいなすごい音がしました。周りにいた人もざわめいて……。見た人は多数いると思います」
落下したのは、照明用のカラーフィルターが多数入ったトートバッグだった。
「運よく、真上から直撃したのではなく、薄いバッグが風を切るように斜めに落ちてきて、その途中に私がいたという感じだったようです。場合によっては大けが、死亡も考えられる事故だったと思います」
即座に警察や救急車を呼ぶ判断はできなかった。「私も当時はパニックになってしまい、冷静な判断や対応が欠けてしまっていました。反省です。落下物の写真は撮っておくべきでした」と自戒する。
事故直後、異変に気付いたイベント会社のスタッフが駆け寄り、「当たりましたか?」と声をかけてきた。あいさんは出口まで付き添われ、「翌日以降も痛みがあれば連絡してください」と、会社の連絡先を渡された。その際、自身の氏名と電話番号も伝えた。
そのまま会場を後にしたが、翌日、念のため病院を受診することを伝えようとこの会社に電話を入れると、思わぬ反応が返ってきた。
「電話をしても『何のことですか?』という反応でした。状況を説明すると『かけ直します』と言われましたが、折り返しの電話でも謝罪の言葉はなく、『治療費はお支払いいたしますので病院へ行ってください』という対応のみでした」
その後、公演の照明を担当した別の会社からも連絡があったという。
「電話がかかってきたのは2日後でした。『事故のことを把握するまでに時間がかかったので、謝罪の連絡も遅くなってしまいました』という内容のお電話をいただいた感じです」
観客が残る中で撤収作業 照明担当会社「弊社の安全管理上の課題」
ENCOUNTは事実関係確認のため、照明を担当した株式会社林オフィスに取材を申し込んだ。同社は事故の事実を認め、当時の状況について回答した。
同社は「5月24日の公演終了後の退場中において、キャットウォークより照明関連備品(色フィルター等を入れたバッグ)が落下したことは事実でございます」と説明。「お客様におかれましては、多大なるご迷惑とご不安をおかけしましたことを、大変重く受け止めております」と謝罪した。
一方、落下物が女性に接触した時の詳しい状況については、「お客様のプライバシー保護および現在個別に協議・対応中である事案のため、回答を差し控えさせていただきます」とした。
不可解なのは、観客がまだ会場内に残っている時間帯に、なぜ頭上で機材を持って移動していたのかという点だ。
同社の説明によれば、観客の頭上での作業や移動を制限するルールそのものが存在しなかったという。
「通常、会場の使用規定やレギュレーションに基づき安全管理を行っておりますが、本公演の会場(あなぶきアリーナ香川)において、事案が発生した移動経路におきましては、観客退場時の移動や荷物の携行方法に関する特段の個別規定が設けられておりませんでした」
なぜ照明備品は落下したのか。
「当日は終演後、全体の撤収・回収作業の工程に入っておりましたが、本件事故につきましては作業そのものではなく、作業に伴う移動中に発生いたしました。終演後、スタッフが常設ピンスポット(天井付近)箇所からグランドフロアへ移動するためにキャットウォーク上を歩行していた際、通路上にあった突起部にスタッフが肩に掛けていたトートバッグが引っ掛かり、肩から外れて客席側へ落下いたしました」
同社は今回の事故を受け、高所を移動する際の落下防止策を徹底するとともに、運用の見直しを進め、再発防止に努めるとしている。
「観客の皆様が完全に退場されていない時間帯において、高所を移動する際の落下防止措置が不十分であったことにつきましては、弊社の安全管理上の課題であったと真摯に受け止めております。今後は高所移動時における落下防止対策の徹底および運用の見直しを行い、再発防止に努めてまいります」
月日が流れても、被害者の体の痛みや事故のフラッシュバックが消えることはない。
「どんなアーティストのライブでも、こんな事は二度と起こらないよう、皆様が心の底から楽しんで帰れるように徹底してもらいたいです」
安全管理の徹底と再発防止が求められている。
あなたの“気になる”を教えてください