「あえて無色であり続けると決めている」 新原泰佑がやりたい役を作らず、求められた色に染まりたい理由

俳優・新原泰佑が、劇作家・寺山修司が遺した61年前にたった1度しか上演されていないミュージカル『獅子 THE LION-BEAT』(10月4日~20日、THEATER MILANO-Za、演出・杉原邦生)に主演する。新原にとって、初のミュージカル座長作。不思議な力を持つ男との契約でことば言葉を失う代わりにボクサーへと変貌する青年を、新原は身体と歌でどう立ち上げるのか。

インタビューに応じた新原泰佑【写真:舛元清香】
インタビューに応じた新原泰佑【写真:舛元清香】

ボクサー役でも「強そうじゃいけない」、初座長ミュージカル『獅子』で探る魔法の力とだらしなさ

 俳優・新原泰佑が、劇作家・寺山修司が遺した61年前にたった1度しか上演されていないミュージカル『獅子 THE LION-BEAT』(10月4日~20日、THEATER MILANO-Za、演出・杉原邦生)に主演する。新原にとって、初のミュージカル座長作。不思議な力を持つ男との契約でことば言葉を失う代わりにボクサーへと変貌する青年を、新原は身体と歌でどう立ち上げるのか。(取材・文=平辻哲也)


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 オファーを受けた当初、新原はこの作品の実在すら疑ったという。「幻の作品っていうだけあって、調べても出てこなくて。本当に実在しているのかどうか一度疑いました。この幻の作品を上演するにあたって自分を選んでいただいたことが本当にありがたいですし、光栄です」。

 貞夫は印鑑屋で働く普通の青年だ。しかし謎の男との取引で「ことば」と引き換えに無敵のボクサーへと生まれ変わる。新原はこのキャラクターに強いシンパシーを抱く。「ボクシングへの執着みたいなものは、多分本人の意識ではなく本能。無意識下で選択していった結果が今の貞夫だと思う。だけど意識的に諦めてハンコ屋になってる、この乖離が僕はすごく好きなんです」。

 そのシンパシーの背景には、新原自身の原体験がある。身体表現のルーツは4歳の時に始めたダンスだ。母親が通っていた地元のスタジオでキッズクラスに参加したのがきっかけだった。のめり込む原動力となったのは、持ち前の負けず嫌いな性格。

「この技ができなかったらダンスやめてやるって思った時期もあった。でもできるようになったら次の壁が来る」。目標をクリアしてはまた新たな壁に立ち塞がられる、その連続の中で「気づいたらダンスが好きになっていました」と振り返る。

 高校生になる頃には芸能界を意識し始めたが、当初から俳優を志していたわけではなかった。「ダンスができる表現の仕事がしたいというイメージで、具体的にお芝居というよりも表現に携わる仕事がしたいという目標があった」

 転機となったのは芸能事務所アミューズへの所属だ。作品を重ねて様々な人間を演じるうちに、芝居の魅力に取り憑かれていく。「元々ただのダンスバカとして生きてきた中で、ダンスの代わりではなく同じくらい高い位置に来るお芝居の魅力にはまっていった」。4歳から続けてきたダンスの執着心と重ね、「何を切ってでも肌身離さず持っていたいものが自分にもあるから、すごく共感する」と貞夫というキャラクターを語った。

演技の転機となった作品とは【写真:舛元清香】
演技の転機となった作品とは【写真:舛元清香】

演技の転機とは「この感覚は多分生でしか味わえない」

 挑戦は多岐にわたる。ボクシング、手話、歌――。「ことばを失う中で喋れなくなる可能性がある。でも歌う。今までと全く違う体の作り方が必要なんです」。喉を潰さないよう気を配ってきたこれまでの舞台とは逆に、今回は「喋れないのに歌う」という未体験の領域に挑む。

 けいこ入りに向け、ボイストレーニングとボクシングジムでの準備をすでに始めているが、勝手の違いに苦戦中だ。「使う筋肉が全然違う。ダンスではなったことのない筋肉痛になってます」。トレーニング用の縄跳びにも悪戦苦闘し、「小学生の頃は軽く飛べてたのに。時の流れを感じます」と苦笑いした。

 ボクサーとしての体づくりは、演出の杉原邦生と綿密にすり合わせている。求められているのは、単なる肉体美ではない。

「強そうじゃいけない。魔法の力でボクサーになっているから、作っちゃいけないんです。痩せてはいるけど強そうではない、筋トレをしてるわけでもない。だらしなさがあるのに魔法のように強い、そのバランスを探ってます」

 ことばを失った貞夫が、意思を伝える手段として用いるのが手話だ。新原にとっても初めての経験になる。「セリフはあるので、それをどう混ぜながら伝えるか。何も伝わらなければ本末転倒になる」。一方、心の声として響くのが☆Taku Takahashi(m-flo)が手がける楽曲群だ。「m-floさんの新曲が何十曲もあるようなもの。ポップスに古き良き音が混じり、そこにガツンとした詩が乗る。この構成感は本作でしか味わえない」。

 演技の転機となったのが、2024年の舞台『インヘリタンス-継承-』だったという。「彼らの人生を自分が肩代わりして共に歩んで楽しいと思えた作品」。生の舞台にしか味わえない感覚もあるという。「360度何にも隙がない、何も守るものがなくただ自分が立っている。この感覚は多分生でしか味わえない」。

 間もなく26歳。あえて「やりたい役」の目標は持たないと決めている。「同じような役が来たらそれがゴールになってしまう。だから僕は無色であり続けると決めてる。求められた色に染まったら、自分の新たな引き出しが増える。いろんな色に染まりたいから、あえて作らないようにしてます」。寺山修司の強烈な世界観の中で、新原がどんな色に染まるのか。

■新原泰佑(にいはら・たいすけ)2000年10月7日生まれ。埼玉県出身。近年の出演作は、ドラマ『御上先生』『25時、赤坂で』『ちょっとだけエスパー』、映画『ベートーヴェン捏造』『YOUNG&FINE』 、ミュージカル『梨泰院クラス』、舞台『球体の球体』『インヘリタンス-継承-』『ロミオとジュリエット』『ラビット・ホール』、音楽劇『「クラウディア」Produced by 地球ゴージャス』など。 今後は、2026年8月24日より放送開始のNHK ドラマ『税金で買った本』、10月から主演を務めるBunkamura Production2026ミュージカル『獅子 THE LION-BEAT』などが控えている。


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Bunkamura Production 2026 ミュージカル『獅子 THE LION-BEAT』
【東京公演】 10月4日(日)~20日(火)  THEATER MILANO-Za(東急歌舞伎町タワー6階)
【大阪公演】 11月7日(土)・8日(日)SkyシアターMBS
【公式サイト】https://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/shishithelionbeat/

ヘアメイク/岩村尚人
スタイリング/井田正明

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