高すぎる免疫力、妊娠にどう影響? 藤田ニコルが告白 専門医は「体外受精に限って」 卵子の数は個人差

モデルでタレントの藤田ニコルが不妊治療の末、第1子を妊娠・出産していたことを明かし、話題になった。藤田は、ブライダル検査で卵子の数が「40代後半」と同程度だったこと、さらに免疫力が高すぎるため体外受精で受精卵が着床しづらくなる可能性があると言われ、薬を服用していたことを告白した。卵子の数が少ないことや免疫力の高さは、妊娠にどのような影響を及ぼすのだろうか。杉山産婦人科グループの杉山力一理事長に聞いた。

妊娠と女性の健康状態は密接に関係している(写真はイメージ)【写真:写真AC】
妊娠と女性の健康状態は密接に関係している(写真はイメージ)【写真:写真AC】

卵子の数が少なくても「自然妊娠する力は一緒」

 モデルでタレントの藤田ニコルが不妊治療の末、第1子を妊娠・出産していたことを明かし、話題になった。藤田は、ブライダル検査で卵子の数が「40代後半」と同程度だったこと、さらに免疫力が高すぎるため体外受精で受精卵が着床しづらくなる可能性があると言われ、薬を服用していたことを告白した。卵子の数が少ないことや免疫力の高さは、妊娠にどのような影響を及ぼすのだろうか。杉山産婦人科グループの杉山力一理事長に聞いた。(取材・文=水沼一夫)

 藤田は、ブライダルチェックで卵子の数が「40代後半並み」だったとの結果を受け、残された卵子の数を考え、顕微授精へステップアップしたことを明かしている。

 卵子の数を推測するために用いられるのが、血液検査によるAMH(抗ミュラー管ホルモン)の測定だ。

 杉山理事長によると、卵子の数は生まれた時点で決まっており、個人差があるという。

「本人が持っている数って決まっているんですよ。で、少ないからといって毎月排卵しているので、妊娠する確率は悪くないんですよ。普通の人と一緒なんです」

 女性は卵子の数にかかわらず、基本的には毎月1個の卵子を排卵する。そのため、AMHが低いからといって、自然妊娠する力が低いことを意味するわけではない。

 では、卵子の数が少ないことによるデメリットは何なのか。

「もともと持っている数が少ないと、例えばですけれども、閉経が早いとか。あとは、体外受精するときに、注射を打って卵子をいっぱい作るんですけど、注射の効き目が悪いんですよ。だから、いっぱい欲しいと思っても、注射を打ってもいっぱいできないんです」

 体外受精では、排卵誘発剤などを使って複数の卵子を育てて採卵する。卵子の数が少ない場合、こうした治療で得られる卵子の数も少なくなる可能性があるという。

「質が悪いわけではないので、数が少ないっていうだけなんです」

 20代でも卵子の数が大幅に少ない女性もいることについて、杉山理事長は、こう説明する。

「10歳ぐらいで初めて生理が来た時に、その人の残りがもう何個って決まっているんですよ。だから生まれたときから少ないんだと思います」。生まれ持った「体質」のようなものだと指摘し、「視力がいい悪いみたいなのと同じ話です」と付け加えた。

 卵子の数が少なくても、自然妊娠には影響しないことは分かった。一方で、免疫力が高いことは、妊娠率にどう関連するのだろうか。

免疫抑制剤使用で「うまくいった」 最先端の研究とは

 これについて杉山理事長は、「(影響は)体外受精に限ってですね」と強調しつつ、体外受精における「胚移植」を例に説明した。

 受精卵を子宮に入れる胚移植では、受精卵が母体の免疫反応によって排除されることがないよう、免疫反応との関係が研究されてきた。

「普通は移植すると言うと、肝臓(移植)とか腎臓って免疫抑制剤を使うじゃないですか。移植って、自分の免疫力を抑えなきゃいけないんですよ」

 同じ理屈が胚移植にも当てはまるケースがあるという。

「僕たちの病院で、胚移植をする時に、昔から何回もうまくいかない人は、ちょっと免疫を測ってみて、極端に高い人は免疫を下げる薬を飲みながら妊娠するとうまくいったんです。普通は免疫力が高いっていいことなんですよ。でも受精卵を入れた時に、“免疫が働いて邪魔されちゃうと嫌だね”という話で」

 免疫が高すぎると、受精卵を異物だと判断してしまい、人によっては着床しない可能性がある。この治療法は杉山産婦人科グループが先駆者で他院に広まったものといい、「うちの病院が今、世界中に発信していて結構海外の学会でも招へいされるぐらい、『この方法はいいね』って言われてるんですよ」と明かした。

 杉山理事長によると、血液検査で「Th1」「Th2」と呼ばれる免疫に関する指標を測定する。免疫反応が強いと判断された場合には、免疫を抑える薬として「タクロリムス」を使うことがあるという。ただし、杉山理事長は、この検査がすべての不妊女性に行われるわけではないと説明する。

 子宮の状態等に問題がなく、グレードのいい受精卵を戻しても妊娠に至らない原因不明の不妊で実施されるという。

「体外受精までやって受精卵を見て、いい受精卵が妊娠しないっていうのが、本当の原因不明なので。だから体外受精までやって、初めて免疫の検査になります。自然妊娠の人に免疫検査をやったことはないですね」。杉山産婦人科グループの場合、実際にこの検査を受けているのは全体の5%ほどで、自由診療で行われている。

AMHは早期の検査を推奨も…注意したい若年層のリスク

 当然ながら、免疫力が高いこと自体が病気というわけでもない。

「あくまで『いい受精卵が着床しない人』の検査です。だから免疫高いイコール不妊じゃないです。普通にしていれば、免疫が高いから子どもができないっていうことはないですから。不妊の一項目じゃないと僕は思います」と強調した。

 不妊治療は、卵子の数や免疫の問題など、女性であってもその段階になって初めて知る体の情報が多いことが課題として挙げられる。「もう少し早く知っていれば……」と悔やんでも、時間は戻せない。将来子どもを希望している女性はどうすればいいのか。

 杉山理事長は、結婚や妊娠を具体的に考えていない段階でも、自分の体の状態を知っておくことには意味があると話す。

「『プレコンセプションケア』が今の日本の少子化対策のキーワード。まず気軽に1回、検査に行ったほうがいいと思うんですよ。治療までやるってなると気が重いので『検査』という感じで。それこそ結婚前から行ってもいいと思います」

 プレコンセプションケアとは、前もって性や妊娠に関する正しい知識を身につけ、自身の健康状態を確認することを指す。東京都は講座を受講した18歳以上40歳未満の男女に、精液検査やAMHなどの検査費を最大3万円まで助成している。

 一方で、杉山理事長は、思春期の子どもが一律の健康診断などで卵子の数などを調べることは、リスクがあると主張する。

「例えばですけど、10歳で検査を受けて数字が悪いって分かったときに、その子、絶望的になっちゃう可能性もありますよね。知識がないまま。だからリスクもある。それを啓発してよかったって思える人と、知らないほうがよかったっていう人が出ちゃう。やっぱりあくまで希望の人がやるっていうことなんですよね」

 妊娠を巡る問題は、年齢だけでも、卵子の数だけでも、免疫力だけでも決まらない。必要以上に不安がるのではなく、適切なタイミングに自分の体の状態を知り、将来の選択肢を考えておくことが重要だと杉山理事長は結んだ。

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