武道館断念から10年 MINMI、再挑戦の舞台裏とファンから受け取ったエネルギー「何も躊躇する理由がない」

シンガー・ソングライターのMINMIが、10月8日に自身初となる日本武道館でワンマンライブ「MINMI LIVE at日本武道館 ~it’s not too late~」を開催する。何度も夢を描き、そして一度は断念した場所――。それでも、憧れのステージに立つことを諦めずに走り続けられたのは、信じてくれたファンの存在のおかげだった。初の武道館まであと1か月、MINMIの今の胸中に迫った。

インタビューに応じたMINMI【写真:藤岡雅樹】
インタビューに応じたMINMI【写真:藤岡雅樹】

2016年、武道館を断念して謝罪「申し訳ありません」

 シンガー・ソングライターのMINMIが、10月8日に自身初となる日本武道館でワンマンライブ「MINMI LIVE at日本武道館 ~it’s not too late~」を開催する。何度も夢を描き、そして一度は断念した場所――。それでも、憧れのステージに立つことを諦めずに走り続けられたのは、信じてくれたファンの存在のおかげだった。初の武道館まであと1か月、MINMIの今の胸中に迫った。(取材・文=小田智史)


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 2002年にシングル『The Perfect Vision』でメジャーデビューを果たして以降、日本の音楽シーンを20年以上走り続けてきたMINMI。意外にも、日本武道館での公演は今回が初となる。「『本当に初武道館なの?』と言っていただける」と本人も明かす。10年前の2016年、厳しい現実を前に、日本武道館の夢を一度断念していた。

「当時、ツアー最終公演を目前にして、興行やコンサート制作のプロの方から、『今のお客さんの入りを考えると武道館公演は厳しい。本当にチームとして挑戦できると思っているのか』という愛情あるお叱りをいただきました。その時、若きスタッフたちがみんな黙り込んで、下を向いてしまった姿を見て、『何としてでもやりますと言う人がいない中でやるのは厳しいんじゃないか』と思い、『辞めます』と言いました。武道館ツアーをやるからみんな来てくださいとファンの方には言っていたので、『(日本武道館でのライブを)できません、申し訳ありません』と謝りました」

 しかし、ファンたちは諦めずにMINMIを信じ続けてくれた。いつしか日本武道館はMINMIチームにとどまらず、ファンたちを含めた全員の夢になった。

「ファンの皆さんから『絶対に武道館へ行ける』『信じている』『自分たちが絶対に連れて行くし、応援する』という思いをたくさんいただいて、私自身もやろうと決めました。去年、末期癌と戦いながらツアーに来てくださったファンの方がいらっしゃって、全公演前(の席)で見てくださって、最後の最後の日まで、応援をしてくださいました。『絶対武道館!』とずっとメッセージもくださっていて、そのエネルギーをいただいたら、私は何も躊躇(ちゅうちょ)する理由がない。自分の夢というよりは、ファンの方たちの気持ち、そして武道館を夢見ているスタッフの気持ちに全力で応えたいと思いました」

米国移住後の“再スタート”について語った【写真:藤岡雅樹】
米国移住後の“再スタート”について語った【写真:藤岡雅樹】

LAでは小さなバーでアルバイト

 MINMIは2019年秋に3人の子ども(長男、次男、長女)と共に米国へ移住。「日本の音楽を世界へ届けたい」という思いから、25年4月にオレンジカウンティで「Freedom LA」を初開催し、大成功を収めた。以降も継続的に開催している。日本と異なる場所に拠点を置く中で、日本武道館に挑戦することには難しさも感じたという。

「自分的には武道館のキャパを埋める実力があるのかと言ったら、正直まだそこに達してないと受け止めています。今こうして7年ほど海外に行っていることもあって、ファンの方やお客様方と離れている部分を感じる中、再度自分の武道館のライブを知っていただいたり、チケットを買ってきていただくことのハードルの高さは痛感しています」

 もっとも、決して悲観しているわけではなく、自分なりに伝えたいことは明確だ。

「ただ、その中で挑戦していることに意味・価値があるということを伝えたい武道館ライブなので、落ち込んだり、不安に打ちのめされているわけではなく、デビューから24年経っても、こうして一つひとつ道を作っていくんだという感覚です。お母さんになっても頑張っている姿も含めて、皆さんの背中を押すようなきっかけになったらいいなと思っています」

 米国に移住後、「できる仕事はしたい」という気持ちから、ロサンゼルスの小さなバーでのアルバイトから“再スタート”を切った。その内容はピアノバーで歌うというものだが、「ストリートライブを20歳くらいでやっていたので、これこそが自分のベースだという気持ちもある」と振り返る。

「私はメジャーデビューする前、長くインディーズ活動をしていました。8年ぐらい大阪のバーやクラブで歌っていたので、まだ自分はアーティストとして原点にちゃんと戻れるんだなと感じました。どういう場所でも歌えるという姿勢があるんだなと、うれしくも、そして誇らしく感じたりもしました。未知の世界だったら不安だったかもしれません」

武道館公演への意気込みを語る【写真:藤岡雅樹】
武道館公演への意気込みを語る【写真:藤岡雅樹】

デビューからの24年の月日は「早い」

 ロサンゼルスに移住しての7年間で、新たな発見が「たくさんありました」と話す。

「単純に言葉が通じない異文化の地なので全てが不自由で、歌手としてはもちろん、1人の人間として皆さんに知っていただいていない中なので、ご近所の方から、“どこの何をやってる人?”という感じで見られます(笑)。私1人だけではなく、子ども3人もいるというところで、まず生活していくだけでも本当に簡単じゃないと思いました。でも、その経験の一つひとつに気づきがあって、子どもたちにとっても将来の何か肥やしになるとは感じています」

 来年でデビュー25年。これまでの月日の流れは「早い」と感じるという。

「もうそんなに経っているんだという感じですが、中身は本当に濃いですね。昔は曲のタイトルに『The Perfect Vision』と付けたくらい、ビジョンを描くのが大好きでした。でも、最近は直感とか、今を楽しむこと、今ベストを尽くすことをもっと大事にするスタンスになりました。だから、武道館で堂々と今の自分を表現したいなと思っています」

 今回の武道館公演はMINMIにとって、現在の“最高の自分”を披露する場となる。

「『昔、聴いていたよ』と言ってくださる方が多いですが、MINMIは新しい曲を出し続けています(笑)。久しぶりにMINMIを知ってくださった方にも、また改めて曲を聴いていただいたり、武道館に来ていただきたいです。これまで長く聴いていただいている方には本当に支えられていて、私も自分の人生をその時その時言葉にし、音楽にし、皆さんの何かパワーになったらいいなという思いでずっと届けてきました。今のベストのエネルギーをぜひ武道館に感じに来てください」

□MINMI(みんみ)シンガー・ソングライター/音楽プロデューサー。1990年代に大阪のレゲエ・HIP HOPシーンからキャリアをスタート。ジャマイカやカリブの音楽カルチャーを日本のポップスへ落とし込み、『The Perfect Vision』『シャナナ☆』『四季ノ唄』『睡蓮花』など数々のヒット曲を生み出す。アニメ『サムライチャンプルー』ED『四季ノ唄』は、Nujabesと共に世界中で支持を集め、Lo-fi Hip Hopやジャパニーズカルチャーを海外へ広げた代表作。また、“タオルまわし”文化を日本のライブシーンへ浸透させた存在としても知られる。野外フェス「FREEDOM」を立ち上げ、音楽・自然・仲間をテーマに国内外で活動を展開。デビュー24年を迎え、国内外を舞台に音楽を通じて新たな挑戦を続けている。

撮影協力:メズム東京、オートグラフ コレクション

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