大手鉄道会社が“本気”の獣害対策、社内公募で実現 小田急がハンター派遣事業に取り組むワケ
全国的にクマやシカ、イノシシなどの獣害が問題となるなか、小田急電鉄が始めたハンターと猟場のマッチングサービス「ハンターバンク」が注目を集めている。小田急が2018年から始めた事業アイデア公募制度で、いち早く事業化が実現したという同サービス。いったいなぜ、鉄道会社が獣害対策に取り組むのか。企画の発案者に一連の経緯を聞いた。

狩猟に興味がある人と、獣害に困っている地域や事業者をマッチング
全国的にクマやシカ、イノシシなどの獣害が問題となるなか、小田急電鉄が始めたハンターと猟場のマッチングサービス「ハンターバンク」が注目を集めている。小田急が2018年から始めた事業アイデア公募制度で、いち早く事業化が実現したという同サービス。いったいなぜ、鉄道会社が獣害対策に取り組むのか。企画の発案者に一連の経緯を聞いた。
ハンターバンクは、狩猟に興味はありつつも機会や場所に巡り合えていない人と、獣害に困っている地域や事業者をマッチングするサービス。狩猟に必要な道具は小田急が用意し、会員は活動エリアとなる地域で現地運営パートナーと協力して箱わなを設置、会員同士でチームを構成して協力しながら管理を行う。わなの管理にはICT(情報通信)技術を活用。トレイルカメラで日々わなの様子を確認できるほか、チームで相談して決めたエサのまき方や量を現地運営パートナーに伝え、エサまきや見回りを委託することも可能で、現場に行けなくても狩猟の魅力を体験できるという。獲物がかかった際には、現地運営パートナーのレクチャーを受けながら解体作業を行い、解体後の肉は持ち帰ることができる。
「狩猟に興味を持っているけどなかなか一歩が踏み出せない人や、狩猟免許を取ったは良いものの実際に猟はしたことがないというペーパーハンターと、獣害に困っている地域をつなげるというサービスです。特に、都心にお住まいの方は狩猟免許を取得しても近くになかなか猟場がない。狩猟を始める入口の仕組みづくりができればと思っています」
そう説明するのは、小田急電鉄株式会社のデジタル事業創造部で、ハンターバンク事業を主導する有田一貴さん。大学時代はワンダーフォーゲル部に所属、当時から神奈川・丹沢山地でシカの増加に伴う食害やヒルの増加といった問題に関心を抱いており、入社後、社内で事業アイデア公募制度が開始された際、真っ先に企画を提案した。
「なぜ鉄道会社が獣害対策を? と思われるかもしれませんが、弊社のような私鉄は沿線の地域と共に発展してきた歴史があります。単なる運賃収入だけでなく、不動産や生活インフラの提供など、沿線の街づくりを地域と一緒に担ってきた部分も大きい。人口減少が進むこれからの時代、沿線の魅力や価値を発信し、いかに維持・発展させていくかも鉄道会社の課題の一つです。
地域の社会課題を解決するという意味で、小田急沿線の獣害は無視できない問題ですし、列車との衝突事故やそれに伴うダイヤ乱れや車両の破損など、直接的な影響もある。我々小田急グループも獣害を受けている当事者として、向き合う必要があると考えました」
現在は沿線の小田原エリアに留まらず、埼玉、千葉、山梨といった関東近郊や、遠く離れた京都にも事業を拡大。獣害に悩む各地域の事業者などからの切実な思いに応えているという。2022年の事業開始から4年で累計参加者は1000人を超え、小田原エリアでは昨年度イノシシ64頭を捕獲。中にはハンターバンクをきっかけに地元猟友会に所属したハンターもおり、地域のハンター不足解消にも貢献している。
「我々が行っているのは狩猟の裾野を広げる事業。全国各地でハンターの高齢化が進むなか、新規参入者を増やすきっかけの一つになれば」と有田さん。鉄道会社が仕掛ける前例のない取り組みは、地方を悩ませる獣害問題解決の糸口となるか。
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