桜庭和志の「マーケティング」と「観客論」 新イベント「QUINTET」 を立ち上げた理由
桜庭の「マーケティング」と「観客論」
――過去の苦い経験が生きたんですね。
桜庭「僕も高校の時に団体戦をやっていましたけど、負けたら泣くし、勝ったらメチャクチャ嬉しいし。グラップリングでそれがやれないかなーと」
――それもあって勝ち抜き戦にしたわけですね。
ターザン「勝ち負けをお互いに共有し合うわけですね、お互いが。そこに感情が入ってきて」
桜庭「例えば、同じチームの仲間が2人抜いてくれたら、めちゃくちゃ嬉しいんですよ」
――そうなりますよね。ラスベガスでも大会をやっていますよね?
桜庭「それはUFCの殿堂入りした時(17年6月)に『QUINTET』の話をしたら、結構喜んでくれて、やりましょう、みたいな感じだったんですよ」
ターザン「頭が柔らかいね、向こうは」
桜庭「外国には、日本でいう抜き試合(勝ち抜き戦)みたいなものはなかったらしいんですけど、実際にやってみたら『なんでこんなに面白いの?』って」
――評判になったんですね。
桜庭「高専柔道(※五輪競技の講道館柔道とは別の流派)は15対15の勝ち抜き戦もやっているらしいんです」
――15対15!
桜庭「でも、さすがにそこまでの人数の抜き試合はできないなあと」
ターザン「そんなのやったらデスマッチですよ!」
桜庭「あ、はい(笑)」
――実際、「QUINTET」は「チームサバイバルマッチ」と副題をつける前は「チームデスマッチ」にしたかったと聞きました。
ターザン「じゃあ負けたほうは、団体の『死』みたいなもんじゃないですか」
桜庭「だから今、僕がいろんなところで説明しているのは『甲子園』だと」
ターザン「負けたら終わりだよと」
桜庭「ホントは10チームくらいでやりたいんですけど、時間の制限もあるので、今は4チームでの勝ち抜き戦にしているんですけど」
ターザン「今の桜庭さんの話を聞くと、2つ言えるんですよ」
――2つ?
ターザン「物事をやるのに、格闘技そのものの本質よりも『マーケティング』を考えていると。それと『観客論』を考えている」
――マーケティングと観客論!
桜庭「やる分には、柔道でも柔術でもレスリングでも、やる人は面白いんです。でも、それを見せるにはどうしたらいいか。その時にたまたま金鷲旗を見たら、『これは面白い!』と思って。
ターザン「格闘技の場合は、やる側ありきっていうのが大前提で、同じジムの人が見に来るのがあるんだけど、本来、見に来るのは素人の、一般の人が来るんだよ。だから素人が分からないと意味がないんだよね」
桜庭「はい。知っている人が知らない人を連れてくるじゃないですか」
ターザン「そう!」
桜庭「だから大雑把にいうと、半分くらいは知らない人かもしれない」
ターザン「半分よりもっと多いかもしれない」
桜庭「その人たちに見せて、競技人口を増やしていければ、どんどんレベルアップしていくじゃないですか」
ターザン「僕の今の考え方っていうのはね。日本は狭すぎると。規制も多いし。だからどんどん海外に出て、女性も海外の人と恋愛して結婚したほうがいいと言いまくっているんだけど、『QUINTET』も外国のほうがバーン! と行く予感がするんだけどねえ」
桜庭「結構、同じような感じでマネしているところもあります」
ターザン「出てくるでしょう?」
桜庭「でも『QUINTET』のルールっていうか本質が分からず、柔術的な感じでやろうとしているんです」
ターザン「見た目だけをマネしているんですね」
――「QUINTET」だと、例えばAチームの一番強そうな選手とBチームの一番弱そうな選手が試合をして、引き分けに持ち込んだら両者失格になって、Bチームが有利になったりする。
桜庭「そうそうそう」