映画祭はリアルでこそ意味がある 行定勲氏がくまもと復興映画祭を開催した理由とは
行定氏「話しをする時は必ずマスクをつけて」
「ソワレ」(外山文治監督)のヒロイン、熊本出身の新進女優の芋生悠(いもう・はるか)は高校3年生だった16年3月、前身の菊池映画祭で行定監督の短編「うつくしいひと」を見て、感銘を受けた1人だ。「上京してから5日後に地震がありました。いつか熊本のお役に立ちたいと思っていましたが、何もできないと思っていました。こうやって、(女優として)映画祭に戻ってこられたことが感慨深いです」と話していた。
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「令和2年7月豪雨」では県南の球磨川水系が氾濫し、64人の死者が出た。映画祭では、この被災者を支援しようと、熊本出身の俳優、高良健吾がチャリティーTシャツをプロデュース。熊本のシンボルである熊本城、市電、熊などがデザインされたTシャツはほぼ完売という大人気で、上映後に各出演者、監督が行ったサイン会には長蛇の列ができた。このサイン会も透明アクリル板を介して行うなどコロナ対策を講じた。一方、参加できないファンのために、Q&Aやセレモニーのオンライン配信も行った。
期間中の3日間は通常通り、監督、出演者との懇親会も行われた。行定氏は「食事を取ったり、お酒を飲む時はマスクを取ってもらって構いませんが、話しをする時は必ずマスクをつけてください」と注意喚起を促し、参加者もマスクをつけたり、外したりを繰り返しながら、談笑を楽しんだ。
行定氏は「このご時世に通常開催に踏み切るのはかなり冒険でしたが、たくさんの観客からの『開催してくれてありがとう』の声をいただき、我々の想いは届いたと胸を熱くしています。これも、ゲストの皆様、スポンサーの皆様、熊本県と熊本市、そして、スタッフ関係者の皆様のお力添えのおかげです」「反響も大きく、友人が主催する山形ムービーフェスティバルは、奈良(河瀬直美が手掛ける「なら国際映画祭」)、熊本の成功に触発されて、オンラインから通常開催に切り替えることにしたと連絡をいただきました。こういう連鎖が映画界を元気にしていくのだと思います」とコメントしている。
映画祭期間中の4日には、市内キャバクラから22人のクラスター発生が発覚。その後も、接待を伴う飲食店から新規感染者が増え、10月7日には、リスクレベルを2段階引き上げ、「レベル4特別警報」としている。しかし、映画祭開催から約2週間がたった10月17日現在、映画祭関係者のコロナ感染の報告はない。