無敗のRIZIN女王・伊澤星花が選んだ体外受精 “妊娠でベルト返上”の壮絶な裏側…昨年3試合も合間に手術「大変だった」

RIZIN女子スーパーアトム級王者でDEEP2階級制覇王者の伊澤星花(28=Roys GYM/JAPAN TOP TEAM)が12日、格闘技イベント「RIZIN LANDMARK 13 in FUKUOKA」(福岡・マリンメッセ福岡A館)のケージに登場し、第1子妊娠とベルト返上を発表した。ENCOUNTでは、発表を控えた伊澤に単独インタビューを実施。妊娠に至るまでの壮絶な舞台裏や、今後のキャリアへの思いを聞いた。

夫婦2人、ゆっくりディズニーに行った伊澤星花とCORO
夫婦2人、ゆっくりディズニーに行った伊澤星花とCORO

団体とも相談しながら進めてきた

 RIZIN女子スーパーアトム級王者でDEEP2階級制覇王者の伊澤星花(28=Roys GYM/JAPAN TOP TEAM)が12日、格闘技イベント「RIZIN LANDMARK 13 in FUKUOKA」(福岡・マリンメッセ福岡A館)のケージに登場し、第1子妊娠とベルト返上を発表した。ENCOUNTでは、発表を控えた伊澤に単独インタビューを実施。妊娠に至るまでの壮絶な舞台裏や、今後のキャリアへの思いを聞いた。(取材・文=島田将斗)

 いまはまだ大きな心境の変化はないという。それでも、手や頭が写ったエコー写真を見れば「ここにいるんだ」と我が子の存在を実感する。いつもひょうひょうとしている伊澤だが、ファンへの直接の報告を目前に控え、「なんか緊張しますね」と珍しく肩に力が入っていた。

 伊澤は2023年3月に格闘家のCOROとの結婚を発表。そのころから母親になる覚悟を持ち始め、RIZIN・DEEP側とも相談しながらライフプランを進めてきた。

 アスリートとして選んだのは、比較的スケジュールの計画が立てやすい「体外受精」。昨年は3試合をこなし、後進育成企画「伊澤星花チャレンジ」を開始するなど多忙な日々を送る中、その合間をぬって本格的に準備をしてきた。しかし、その道のりは一筋縄ではいかなかった。

「病院にはケガをした時とかインフルエンザの時しか行ったことがなかったんです。でも婦人科系のクリニックに通ったら、病気ほどじゃないけど、異常みたいなものが見つかって。妊娠しやすい体にするために、全身麻酔の手術を受けて取り除いたりしました」

「体外受精」は計画を立てやすい一方で、排卵誘発、採卵、精液採取、受精など、工程が多く身体的負担の大きい治療でもある。普段は涼しい顔をしている絶対王者が「結構大変だった」と本音を明かした。

「飲まなきゃいけない薬もあったり、卵子を採ったり、それを試合の合間にやらないといけなくて。通院の回数もコンスタントで多かった。『次は3日後に』というケースもありました。それに保険適用されてはいるんですけど、それでも結構お金もかかりましたね」

伊澤星花の愛犬とマタニティーマーク
伊澤星花の愛犬とマタニティーマーク

産後の体への不安も「ダメージがすごいあると」

 過酷な治療を乗り越え、今年1月に晴れて妊娠が判明したが、検査結果が出るまでの間は不安で仕方なかったという。

「本当できてるかできてないかを、ひたすら悩み続けるというか……。完全に受精して成長してる胚ではあるんですけど、それが着床するかどうかなので。人生で一番ネットで検索したかもしれないです(笑)。『調べない方がいい』と見ても調べちゃう。2週間目に妊娠検査があったのですが、気になりすぎてその前日に病院に行ってしまいました」

 出産は9月末を予定している。今回ベルトを返上することになったが、すでに「もう最短で取り返しにいこうと思います」と力強く意気込み、いまもできる限りの練習を続けている。

「妊娠する前から、妊娠とアスリートの研究をしている大学教授に話を聞いたりしていました。妊娠中は逆に男性ホルモンが増えてくるので、筋肉が付きやすいという話を聞いて、高強度なものはやらずに気を付けながら運動をしている感じですね。産後は体が変化していると思いますが、よりいい体になるように目指してやっています」

 そう前向きに語るが、格闘家として不安がゼロなわけではない。出産という未知の領域への思いも吐露した。

「生んだときのダメージがすごいあると聞きますよね。生む前と生んだ後で骨盤のゆがみが全然違うと。いま想像している感覚と産後の感覚は絶対違うと思うので心配です。気持ち的には生んでコンディションを作れればすぐに試合に出たいですけど、いまはまだ考えられないですね」

 絶対王者の産後の競技復帰で思い出されるのは、2007年の女子柔道・谷亮子氏の復帰だ。谷氏は2005年に長男を出産し、その2年後の世界選手権で優勝を果たし「ママでも金」という名言を残した。伊澤も「もちろんママでもベルトですよ」と笑いつつ、育児と競技の両立についての率直な思いを明かした。

「誰かに勇気を与えるとかそんな恩着せがましいことは言うつもりないですが、自分は自分のために子どもが欲しいから子どもを作って、もっと上に行きたいから格闘技を続ける。まあ自分のエゴなんですけど、それが誰かの希望になったらうれしいですよね」

 自身の復帰を力強く見据える一方で、“伊澤不在”の間、留守を預かるライバルたちへのメッセージも忘れない。絶対王者が長らく君臨し続けたことで盤石となっていた女子戦線だが、今回の王座返上により、新たな覇権争いが幕を開けることとなる。

「ベルトが動くというタイミングがすごい久しぶりだと思います。その中でベルトが誰の手にいくかっていうのが、格闘技で一番盛り上がるところですよね。その中で試合で見せるのはもちろんですけど、試合前からいっぱい盛り上げて、ストーリーを作ってほしいと思います」

 伊澤がベルトを手放したことにより、女子格闘技界は新たな群雄割拠の時代へ突入する。激しい競争から誰が抜け出し、空位の王座に就くのか。そして、その行方とともに、母としてさらに強くなって戻ってくるであろう「最強のママファイター」伊澤星花の帰還を、いまから楽しみに待ちたい。

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