27歳で子宮頸がん“一歩手前”の診断 悩んだ手術、病名公表に葛藤も…井口綾子が決めた覚悟「希望になれば」

タレントの井口綾子(29)が昨年10月、「子宮頸部高度異形成」と診断され、円錐切除術を受けたことをインスタグラムで公表。検診の大切さを訴えた投稿は大きな反響を呼んだ。芸能界という華やかな世界で奮闘する一方で、実は体の不調と切実に向き合っている。診断を受けた当時の心境、公表に至った真意、そして今回の経験を踏まえた今後の目標を聞いた。

インタビューに応じた井口綾子【写真:藤岡雅樹】
インタビューに応じた井口綾子【写真:藤岡雅樹】

昨年10月に「子宮頸部高度異形成」のため手術を受けたと告白

 タレントの井口綾子(29)が昨年10月、「子宮頸部高度異形成」と診断され、円錐切除術を受けたことをインスタグラムで公表。検診の大切さを訴えた投稿は大きな反響を呼んだ。芸能界という華やかな世界で奮闘する一方で、実は体の不調と切実に向き合っている。診断を受けた当時の心境、公表に至った真意、そして今回の経験を踏まえた今後の目標を聞いた。(取材・文=猪俣創平)

 インタビュー中、「不安」という言葉が何度も口をついた。神妙な面持ちが深い思いを物語り、これまでの経緯を静かに語り出した。

 子宮頸部高度異形成は、子宮頸がんの前段階にあたる状態。自覚症状がないことの多いこの病気が分かったのは、何気ないきっかけだった。

「2024年にレディースクリニックで診察を受けた時、たまたま勧められて、時間があったので子宮頸がん検査を受けたのが始まりでした。その結果が『精密検査が必要』だったので、検査に引っかかった時点で『がんになっちゃっているのかも』と不安になりました」

 まだ20代だったが、最悪の想像が駆け巡った。

「がんだったら子宮を全部取らないといけないのか、まだ結婚もしてないのに妊娠を諦めないといけないのかと……。もし子どもが欲しいという男性だったら結婚するのも申し訳ないですし。いろんなことを考えてしまって、とにかく不安でした」

 その後、大学病院で再検査を受け、下された診断は「中等度異形成」。「子宮頸部異形成」は軽度、中等度、高度に分類され、軽度と中等度は経過観察となる。

「まだ手術をする必要もないし、もしかしたら正常に戻るかもしれない状態だと説明を受けて、見守っていくしかないと。不安だったし、普通の生理痛でもすごくネガティブに考えてしまいました」

 1年後の検査で、「高度異形成」に進行していたことが分かった。放置するとがんへ進行する可能性が高く、手術を受けることになった。

「病変を切除する円錐切除術では、子宮の頸部を切除するので、将来的に切迫早産や切迫流産の可能性が普通の人よりも5倍になるという説明を聞きました。まだ妊娠・出産も経験していないのに、その手術しちゃっていいのかなと不安がありました」

 治療方法は一つではなく、レーザーで病変を焼く方法もあると知って迷いも生まれた。

「とにかく悩みました。円錐切除術だと、出産の時のリスクが高まりますし、自分が不妊なのかも分からないですけど、身近に不妊治療を受けて大変だった方も知っているので、もし私が不妊治療をしてやっと授かったと思っても、自分のせいで切迫流産になったり、子どもができない可能性もあると考えたら……」

病名を公表した理由とは【写真:藤岡雅樹】
病名を公表した理由とは【写真:藤岡雅樹】

病名公表に葛藤も「悲しい気持ちになる女性が少しでも減れば」

 不安や迷いを抱えながら身近な人に相談し、レーザー治療のリスクについても理解していった。

「一番上の兄とおばが医者なので、相談して産婦人科の方にも聞いてもらいました。レーザーだと病変を取り切れないし、妊娠中のホルモンの影響でがん化が進んでしまって、子どもは産めたけど取り返しのつかないことになる場合もあると聞きました。将来の妊娠のこととか不安もあって、男性の医師だけでなく、女性のお医者さんの意見も聞きました。健康体あっての妊娠だと思ったので、切る長さを担当の先生にも相談しました。最終的には切った方がいいと納得して、円錐切除術に決めました」

 術後、何かのきっかけやヒントになればとインスタグラムで公表に踏み切ったが、そこには葛藤もあった。

「女性の方は病気に対する知識がある人や、誰にでもかかりうる病気と理解してくれています。でも、あまり知識のない方、男女問わず、心ない偏見を含んだコメントが届くのではないかと懸念していましたし、実際にありました」

 それでも、後悔することはなかった。

「他の方が見て嫌な思いをするコメントは非表示にすることもありました。でも、私や経験した人が発信していくことで病気について知ってもらって、いろんな人が発信しやすい環境にできたらいいなと思います。何より、女性の方から『ちょうど昨日、診断が出て手術を受けることになってすごい不安な気持ちだったけど、この投稿を見て勇気が出ました』とコメントをくださる方や、検診の大切さに気づいてくださる方がいたのはうれしかったです」

 手術を終えた今も、不安が完全に消えたわけではない。ただ、その気持ちを支えたのは“同じ経験をした人の言葉”だった。

「今でも不安がゼロかと言われたらそうじゃないです。ただ、公表したことで同じ経験をした方々からのコメントで、『自分もその病気を経験して手術もして、出産とかも不安だったけど、いま子どもを2人産んで再発もなく過ごしています』というコメントもいただきました。実際に子どもが健康に生まれて問題がなかったと、経験者の方々のお話が希望になって、私も勇気をもらいました」

 公表後は、経験者として語るシーンが増え、仕事にもつながっている。

「フェムケア系のイベントに参加させていただく機会もありました。先日も『anan』さんのフェムケア特集で、レディースクリニックの院長さんとお話しする企画もいただいて、私だから話せる場が増えました」

 診断から手術、そして公表を経て、井口が強く感じたのは「分からない時が一番不安」という実感だった。

「その気持ちは自分が経験したから分かるので、そういう女性に向けて、勇気を与えられたらうれしいです。検診に行かずに異形成に気づかず、がんになってから分かった方もいらっしゃると思うので、そういう悲しい気持ちになる女性が少しでも減ればと、発信を続けられるようにしていきたいです」

「怖い」「不安」と真正面に向き合いながらも、同じ悩みを抱える人の背中をそっと押したい。経験者として、タレントとして、井口綾子は自分の痛みを“誰かのきっかけ”に変えられたらと、今後も信念を持って歩んでいく。

□井口綾子(いのくち・あやこ)1997年3月24日、神奈川県出身。青山学院大在学中の2015年に「FRESH CAMPUS CONTEST(フレキャン)」で準グランプリを受賞し、17年に「ミス青山コンテスト2017」で準ミス青山に選ばれる。大学在学中からファッション誌『Ray』の専属モデルを務め、18年に『週刊プレイボーイ』の表紙でグラビアデビューした。その後、グラビアアイドルとしての活動を中心に、数々のバラエティー番組やラジオ番組に出演。現在は父が経営する美容室チェーン「EXCEL美容室」に従事するほか、ニッポン放送『井口綾子 will run』(木曜午後9時)、ABCテレビ『まるどりぃ~ココだけの話~』(深夜1時)に出演中。

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猪俣創平

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