久本雅美、アラ古希でも驚異のセリフ覚え「後輩に嫌がられますけどね」 1日で舞台2作品に出演へ

今年で芸能生活45周年を迎えた久本雅美が、5月に東京・新橋演舞場で2本立て公演『お種と仙太郎』『明日の幸福』(5月9日~19日)に出演する。人情喜劇の二大名作で『お種~』は松竹新喜劇、『明日の~』は劇団新派を代表している。二大劇団の競演は2019年以来7年ぶりになる。どちらでも重要人物を演じる久本は、“アラ古希”でも元気いっぱい。インタビューでその前向きマインドに迫った。

頭脳、体力とも衰え知らずの久本雅美【写真:増田美咲】
頭脳、体力とも衰え知らずの久本雅美【写真:増田美咲】

5月に二大劇団の競演 どちらでも重要人物の役

 今年で芸能生活45周年を迎えた久本雅美が、5月に東京・新橋演舞場で2本立て公演『お種と仙太郎』『明日の幸福』(5月9日~19日)に出演する。人情喜劇の二大名作で『お種~』は松竹新喜劇、『明日の~』は劇団新派を代表している。二大劇団の競演は2019年以来7年ぶりになる。どちらでも重要人物を演じる久本は、“アラ古希”でも元気いっぱい。インタビューでその前向きマインドに迫った。(取材・文=渡邉唯恩)

「あ~、そうなんだ。45年になるんですね」

 インタビューの冒頭、今年で芸能生活45周年になる久本にお祝いの言葉をかけると、そんな返事が返ってきた。本当に失念していたようで、記者に再確認するように話し出した。

「えっと、22歳で上京してきて今67歳だから……ああ、本当に45周年だ。そういうこと、今までも全く意識してこなかったんですよね。50歳になった時は友だちがパーティーを開いてくれましたけど、芸能生活何十周年みたいなことは全然やったことがないんです」

 常に前を向いているから、周年イベントなどにこだわりが少ないのだろう。それが元気の源。今回の2本立て公演も、自身にとって新たな挑戦となる部分があるという。

「演目が違う公演を同時にやったことは、松竹新喜劇では何度かあるのですが、今回は松竹新喜劇と新派という二大劇団の別々の演目。昼の部と夜の部がある日は何回も切り替えが必要になります。こういうのは初めてなんじゃないかな? でも、そこは自然とできるような気がします。衣装もカツラも変わるし、共演者も違うので、心配はしてないですね」

 久本が演じる役どころは、松竹新喜劇『お種と仙太郎』でのお岩役。初演は1943年(松竹家庭劇により題名は『おうむ茶屋』)と歴史が古く、79年に故藤山寛美さんがお岩役を演じて大好評を得てきた名作となる。

「私は息子夫婦の仲の良さをうらやむあまり、嫁をいびり倒す姑役なのですが、それを見かねた娘夫婦の姑さん(波乃久里子)が私をいさめるために一計を案じる……というお話。永遠のテーマである嫁姑問題を笑いと涙で包む人情喜劇です。藤山寛美先生がおやりになった時は、男性がおばあちゃんを演じたわけですが、いで立ちからしても憎めないところがあったと思うんですね。でも、女性の私がいじめをするとリアルすぎるというか嫌味に見えたりするじゃないですか。そこをうまく演じないと、というのが一番のポイントですね。意地悪だけどチャーミングなおばあちゃんを演じられたらというのが、自分の中の挑戦になっていると思います」

 もう一つの演目『明日の幸福』は新派には珍しい喜劇作品。「ホームドラマの金字塔」とも言える作品をホームドラマの名手・石井ふく子氏が演出する舞台で、副題には「石井ふく子生誕百年記念」とある。久本が演じるのは3世代が同居する名家の大家族に長年仕える女中・リキ役だ。

「一つの家庭にずっと奉公している重鎮のような女中さん役です。かといって偉そうではなく、どこかひょうきんなところもある、わりと等身大の私に近い感じ。ただ、ご主人様からは大変信頼されていて、渋谷天外さんが演じる松崎寿一郎の髭を剃刀で剃るのも任されているんですよ」

 演出の石井氏とのタッグは昨年の舞台『花嫁~娘からの花束~』に続き、今回2度目。『花嫁』がホームドラマ舞台初挑戦だったことで、プレッシャーに押しつぶされそうになったと回顧する。

「私が外の舞台に呼ばれるのって、笑いを取るとか暴れ回ることを期待されていて、メインでしっとりする役はやったことがなかったんです。フラれる役なら何度もやったけど、惚れられて最後はお嫁に行っちゃう役だったから、不安もいっぱいありました。そのことを石井先生に打ち明けた時、『あなたらしくやっていいのよ』と言っていただけたんです。でも、自分らしく演じるって、とても難しいし、引き出しもないんですよね。一から組み立てるようないい体験でした。今回の女中役も同じですね。先生の世界観を崩さないように、余計なことをしないでどう楽しむかをチャレンジさせていただきたいです」

 久本は、稽古場に連日顔を出した99歳の石井氏から、細かい所作や間合いなどにもアドバイスをもらったことをうれしそうに明かした。

「先生に言われて一番響いたのは『心で芝居するのよ』という言葉でした。これだけ長く演劇界にいて、いろんな人や舞台を見てきてたどり着いたのが『心で芝居する』という境地。どう見せるかより、この人の心はどうなんだろうということですよね。当たり前のようで、なかなか難しいんですけど……」

「舞台は持久力、テレビは瞬発力」で、どちらからも必要とされる久本雅美【写真:増田美咲】
「舞台は持久力、テレビは瞬発力」で、どちらからも必要とされる久本雅美【写真:増田美咲】

舞台とテレビの二刀流で取れる「バランス」

 久本は今年、正月から松竹新喜劇の舞台に立ち、所属するWAHAHA本舗の公演では全国を回っている。読売テレビ・日本テレビ系『秘密のケンミンSHOW極』、日本テレビ系『ヒルナンデス!』などのレギュラー番組を持ち、超多忙だ。「年齢的にしんどさはないですか」と水を向けると、笑みを浮かべて即答した。

「大丈夫なんですよね~。それがなければバランスが取れないというか。舞台は持久力が必要で、テレビは瞬発力が必要。出会う方たちも違うので、両方させていただけるのは感謝しかないです。ありがたいことに今もセリフ覚えはすごく速いんです。一緒に出演する後輩たちには(速すぎて)嫌がられますけどね。ただ、ちょっと言いたいこともあります。同年代の友だちが見に来てくれて言われるには『よくセリフ覚えられるね』『大きな声が出せて、動き回れてすごい』ばっかりなんです。面白い、面白くないの話じゃないところが不満なんですよね~(笑)」

 おひとりさまを貫き、アラ古希を迎えた久本。「やり残したことはないか」と聞いてみた。

「それ、60代で考え出すとバタバタしちゃうらしいですね。私の場合はコロナ禍の時に『やっときゃ、良かった』と思って英会話をオンラインで習い始めたんです。でも、脳がついていかなくてアップアップ。3、4回で断念しちゃいました。そういう意味では、興味が湧いたらすぐに行動しようというのは今も根っこの部分にあります。よく聞かれる終活も全くやってないです。あとは結婚ですが、別に人生のパートナーを見つけられなかったことは全然後悔してないんです。選びきれなかったというか、選んでもらえなかったというか……。でも、今だって突然素敵な人が現れて『アメリカに行くぞ』と言われたら、『新しい環境、楽しそう』って、ついていっちゃうかもしれないですしね」

 理想の結婚相手を問うと、マチャミ節で返した。

「昔は刺激が自分へのエネルギーになると思っていたので『年下の若い子がいい。竹野内豊以外とは結婚する気はない』などと言ってましたけど、今は私のことをちゃんと分かってくれて、好きにさせてくれる方が一番かな。優しさと経済力があればいいです(笑)」

 最後に70代、80代の目標を聞くと、キリッとした表情でこんな答えが返ってきた。

「生涯現役が一つの大きな目標です。例えば、黒柳徹子さんは80歳を超えても自分の番組を持ち続けているのがすごい。森光子さんや杉村春子さんに代表作があったように、私にも『代表作ができたらいいな』というのはいつも思っています。生涯現役であるためにやっているのが、ボイストレーニングや体を鍛えるためのトレーニング。最近は殺陣も習い始めたんですよ」

 過去にこだわらない久本の言葉は、全て前向きで力強かった。

□久本雅美(ひさもと・まさみ) 1958年7月9日、大阪府生まれ。劇団東京ヴォードヴィルショーを経て84年に喰始(たべ・はじめ)、柴田理恵らと劇団WAHAHA本舗を結成。下積みを経て、数々の舞台、バラエティー番組、CMなどに出演。

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