20歳・瀧七海が意識する「素材」としての自分 トレードマークは“黒髪ロング×凛とした眉”

舞台『るつぼ The Crucible』(3月14日から上演中)で2度目の舞台に挑む瀧七海は、これからの成長が楽しみな20歳だ。黒髪ロングに凛とした眉には、“瀧七海という素材”を活かしてほしいという思いが込められていた。何事にも真っすぐに向き合う瀧が思い描く今後とは――。

インタビューに応じた瀧七海【写真:藤岡雅樹】
インタビューに応じた瀧七海【写真:藤岡雅樹】

飛び込んだ舞台の世界「一気に見える景色が変化」

 舞台『るつぼ The Crucible』(3月14日から上演中)で2度目の舞台に挑む瀧七海は、これからの成長が楽しみな20歳だ。黒髪ロングに凛とした眉には、“瀧七海という素材”を活かしてほしいという思いが込められていた。何事にも真っすぐに向き合う瀧が思い描く今後とは――。(取材・文=中村彰洋)

 瀧にとって、2年連続での舞台挑戦となった今作。2作目にして、物語の展開を左右する重要な役を担うこととなった。これまでは映像作品を中心に出演していた彼女にとって、舞台は自身の演技の幅を広げるための挑戦だった。

「もともと舞台に興味があって、映像とはまた違った面白さを感じていました。私も舞台に携わりたいと思い、オーディションを受けさせていただきました。生でのお芝居を経験して、成長していきたいと、自分へ挑戦状をたたきつけた感覚です」

 初舞台は、2025年のパルコ・プロデュース2025「エドモン~『シラノ・ド・ベルジュラック』を書いた男~」。当時はとにかく不安な気持ちが大きかったとこぼす。

「毎日同じ作品と向き合い続け、同じことを繰り返すということが初めての経験だったので、正直とても不安な気持ちでした。公演期間中に行き詰まってしまったこともありました。でも、周囲の方々から助言をいただいたり、役に対しての私の中での概念のようなものを変えたことで、一気に見える景色が変化していきました。自分自身の成長を実感することができて楽しかったです」

 今作で演じるアビゲイル・ウィリアムズは、ストーリーをかき乱す役どころとなる。

「前作の『エドモン』は再演だったので、初演で同じ役をやられていた平祐奈さんをお手本にすることから始めました。そして、そこから自分の形にしていきました。でも、今作は手探りの状態からだったので。前作は舞台の転換も出演者が行っていたので、そういった部分の忙しさもありましたが、今作は役にだけ集中できます。そういう意味では、自分自身と向き合う時間が長くなるだろうなと思っています」

 映像作品と舞台作品を経験したことで演技の幅が広がったことも感じている。

「映像はカット割りで決まりますが、舞台だとつねにお客さまの目に入るので、どんなに細かいシーンでも、『この瞬間ってどういう感情を抱くんだろう』と、その役の人生そのものを深く考えるようになりました。生でお客さまの反応を体感できることは舞台の醍醐味だと思います」

舞台『るつぼ The Crucible』ではストーリーをかき乱す役どころに挑戦【写真:藤岡雅樹】
舞台『るつぼ The Crucible』ではストーリーをかき乱す役どころに挑戦【写真:藤岡雅樹】

初の演技仕事が決まるまで約3年「1番苦しい時期でした」

 芸能界入りのきっかけとなったのは、「アミューズ 全県全員面接オーディション 2017 ~九州・沖縄編~」での準グランプリ受賞。このオーディションも自ら応募したわけではなく、スカウトされたことが始まりだった。

「小6の時に、福岡・天神のパン屋さんの前で弟と遊んでいたところでスカウトの方に声を掛けられました。『怒られるのかな』と思いましたが、『オーディションを受けてみない?』というお誘いでした。芸能界というものを意識したこともなかったので、まさか私にそういった機会が巡ってくるとはと驚きました」

 興味本位でオーディションに挑戦。気付けば準グランプリを受賞していた。「人前が苦手だったので、『どうにでもなれ!』と全力でがむしゃらにステージに立ったことを覚えています」と笑う。

 事務所所属も決まり、華々しい日々が待っているかと思いきや現実は違った。初の演技仕事が決まるまでに、約3年もの期間を要することとなった。

「1番苦しい時期でした。事務所には所属させていただいているのに、何もできていない自分にすごくモヤモヤしていました。レッスンなどもやっていたのですが、お芝居の楽しさすらも分からずにいました」

 中学時代は芸能事務所に所属していることが知れわたり、同級生からは好奇の目で見られることも多かった。そもそも目立つことが好きではない瀧にとってはつらい日々でもあった。

「私としてはあまりうれしくないような言われ方をされてしまい、落ち込んだこともありました。『自分を変えたい』と思い、100メートルハードルに挑戦する機会があり、県大会にも出場することができました。私はネガティブな方向に目がいきやすい性格なので、思うようにお仕事ができていないことばかりを気にしていました。でも、ほかに夢中になれるものを見つけることができて、生活が充実していった感覚でした」

 20年のCM出演が初の演技仕事。時期を同じくして、演技への意識も変化していった。

「当時のマネジャーさんとの出会いが大きかったです。私のことをちゃんと見てくださっていて、私もその期待に応えたいと思うようになりました。最初は演じることへの恥ずかしさなどもありましたが、普段の自分の顔との使い分けができるようになってからは、楽しさを感じるようになりました。苦い思い出すらも糧にして、役と向き合うことができる。人生で起きたこと全てが演技の材料になる。これは役者というお仕事の面白さだと思っています」

インタビュー中には真面目な素顔を垣間見ることができた【写真:藤岡雅樹】
インタビュー中には真面目な素顔を垣間見ることができた【写真:藤岡雅樹】

自分の想像の斜め上な体験に刺激「興味が湧いてしまう」

 インタビュー中、手元にはびっしりと書き込まれたメモ帳があった。質問を投げかけるたびに、言葉を選びながら丁寧に答えていた。その姿からは、一つ一つに真摯に向き合う真面目な性格が伝わってきた。

「学ぶことが好きなんです。でも、忘れっぽいところがあるので、メモは怠らないようにしています」

 ひょんなことから始まった役者人生。「もともと生物学が好きだったので、お医者さんや看護師さんになりたかったです。誰かの役に立てるようなお仕事に就きたいと思っていたので、刑事さんも真剣に考えていた時期もありました」。

 役者はどんな職業も“体験”できることが魅力の一つ。「いつか憧れていた医療系や刑事系の作品などに挑戦してみたいです」と目標も口にする。

 苦手だった演技も今では「役として生きている瞬間」に楽しさを覚えている。「それがつらい役だったとしても、私がその役に入り込み、作品の中で生きていることを実感できた時に、達成感が湧き出てきます」。

 憧れていたモデル仕事へ挑戦する機会にも恵まれた。「フィガロジャポン」では、独創的なスタイリングに驚かされたと明かす。

「山本マナさんのスタイリングは衝撃でした。お仕事に合わせて、髪を切ったり、染めたりしたいと思っていたので、これまで髪の毛を短くしたことがありませんでした。初めてのオン眉でのボブで、くちびるも真っ赤。これまでの私からは想像もできない、スタイリングをしてくださったんです。ファッションの世界って底が見えないなと感動しました」

 黒髪ロングの「バージンヘア」を貫くのは、自分自身を“素材”であると捉えているからだ。「私という素材を生かした役と出会えると信じてますし、これからも、私にしかできない役と巡り会えたらうれしいです。髪の毛や眉毛など、何かの作品をきっかけに変えていくということを味わっていきたいです」。

 生真面目な性格で何事にも、幾重に想像したうえで現場に臨む。だからこそ、想像の斜め上な体験をした時に衝撃を受けるという。「自分が考えてもいなかったことが起きると『この先どうなるんだろう』と、予測できない方向に興味が湧いてしまうんです」。

 思えば、芸能界への挑戦も興味本位から始まったものだった。小学6年生の彼女にとっては、想像すらもしていなかった20歳を迎えていることだろう。

「誰かの役に立ちたい」――。かつて抱いていたその思いは、形を変えて現実のものになりつつある。「私と関わった方々が笑顔になってくれたらうれしいです」。

“瀧七海”という素材は、これからどんな色にも変わっていく可能性を秘めている。

□瀧七海(たき・ななみ)2005年11月9日、福岡県大牟田市出身。17年に「アミューズ 全県全員面接オーディション2017~九州・沖縄編~」で準グランプリを受賞。20年にCM「ネスタリゾート神戸」で初の演技仕事に挑戦した。23年に日本テレビ系『ブラッシュアップライフ』、25年には映画『ナイトフラワー』など話題作に出演。26年3月14日から上演中の舞台『るつぼ The Crucible』に出演中。

ヘアメイク:小園ゆかり/YUKARI KOZONO
スタイリスト:Yuki Yajima
衣装:ジャケット、シースルーパーカー:BOCBOK/その他スタイリスト私物

○『るつぼ The Crucible』
作:アーサー・ミラー
翻訳:水谷八也
演出:上村聡史
出演:坂本昌行、前田亜季、松崎祐介、瀧七海、伊達暁、佐川和正、夏子、大滝寛、那須佐代子、大鷹明良、斉藤直樹、内田健介、浅野令子、米山千陽、長村航希、武田知久、星初音、安藤ゆり、山本毬愛
東京公演:2026年3月14日~29日東京芸術劇場プレイハウス
兵庫公演:2026年4月3日~5日兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
豊橋公演:2026年4月11日~12日穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール
製作:フジテレビジョン、サンライズプロモーション

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