「坂本龍一は本当に素晴らしかった」 マイケルの実弟が語る日本音楽への深いリスペクト

米歌手、ジャネット・ジャクソンの日本特別公演『JANET JACKSON JAPAN 2026』(6月9日から17日にかけ、神戸・横浜・名古屋で開催)のPRのため緊急来日した、兄で彼女のマネジメントも手がけるランディ・ジャクソン。ENCOUNTでは2回にわたるインタビューを実施。前編に続く、後編は半世紀以上にわたって世界の音楽シーンを生きてきたランディに、AI時代の音楽論と次世代へ残したい言葉を聞いた。

AI時代の音楽について持論を展開したランディ・ジャクソンさん【写真:高田啓矢】
AI時代の音楽について持論を展開したランディ・ジャクソンさん【写真:高田啓矢】

ランディ・ジャクソン来日インタビュー・後編

 米歌手、ジャネット・ジャクソンの日本特別公演『JANET JACKSON JAPAN 2026』(6月9日から17日にかけ、神戸・横浜・名古屋で開催)のPRのため緊急来日した、兄で彼女のマネジメントも手がけるランディ・ジャクソン。ENCOUNTでは2回にわたるインタビューを実施。前編に続く、後編は半世紀以上にわたって世界の音楽シーンを生きてきたランディに、AI時代の音楽論と次世代へ残したい言葉を聞いた。(取材・文=福嶋剛、通訳=芳岡倫子)

──2025年、AI生成の楽曲『Walk My Walk』(AIアーティスト・Breaking Rust)がビルボードのチャートで1位を獲得しました。ランディさんはアーティスト活動だけではなく、1990年代に映像圧縮技術を開発し、ハリウッド作品を1枚のCD-ROMに収めることに成功した実業家でもあります。デジタルの最前線を知る人物として、AIの台頭をどう見ていますか。

「そんなに心配はしていないんですよ。なぜかというと、AIにはできないことがあって0から自分で作るわけじゃないんです。そう、必ず人間が介在している。AIが得意なのは真似をすることですから『これをもっとこんな感じにして』と指示すれば確かにやってくれます。けれど、それはどこかから引っ張ってきて真似たものであって、本当のオリジナルじゃない。作品を制作する過程で人間の要素が必ずある以上、そんなに怖くはないんです」

──最近は、テキストを入力したり鼻歌を歌うだけでAIが自動で楽曲を生成してくれる新しいAI音楽ツール(SUNOなど)が登場し、素人でも簡単に曲が作れる時代です。

「そうですね。でも、ヒット曲というのは必ず、その人の文化や経験がそこに詰まっているから人の心を動かすんです。AIはその経験を自分から作り出すことができない。そこが決定的な違いだと思います」

──それはまさに「ライブ」の体験ですよね。

「おっしゃる通りです。まず、心の底から作った曲があって、それをAIで少し加工するという使い方はできると思います。でも大事なのは、最初の種は人間の魂から生まれるということ。機械が種になることはできない。そこが根本的に違うんじゃないかと思います」

次世代を担う若者に「自分を信じて」とメッセージを残した【写真:高田啓矢】
次世代を担う若者に「自分を信じて」とメッセージを残した【写真:高田啓矢】

次世代に贈る言葉「若い人よ、自分の心を信じて」

──話は変わりますが日本の音楽シーン、J-POPについてランディさんは、どのような印象をお持ちですか。

「とても好きなんです。どこかで聴いたことあるような音楽でも、その中に日本の文化や独特の感性がちゃんと練り込まれているのが分かります。それがほかにはない良さだと思うんです。今のアメリカの音楽制作でも、日本のスタイルを参考にしていることがある。音楽というのはそうやってみんなでシェアされるべきものですし、お互いに刺激し合っていくのがいいことだと思います」

──日本の独特なメロディーや音楽性については、いかがでしょうか。

「私は坂本龍一さんが大好きで、本当に素晴らしいミュージシャンでした。日本の伝統的な音楽スタイルを欧米のポップミュージックに自然に消化して取り入れていった。坂本さんは、音楽を通した文化の交流という観点からも本当に素晴らしい功績を残されました。同時に音楽家として素晴らしいメロディーを残されました。尊敬すべき方でした」

──ランディさんは数々の輝かしい功績の裏で自動車事故により二度と歩けないと言われながらも不屈の精神で歩けるようになりました。その後もコロンビアで反政府ゲリラで拘束され生死を分ける脱出劇を繰り広げるなどさまざまな困難を乗り越えてきました。そんなランディさんが今、世界的に不安定な時代を生きる次世代の人たちに何か言葉を残すとしたら?

「大人というのは、いろんな経験を積んでしまっているから、どうしても頭が固くなってしまうことがあります。でも若い人たちは、本当に新鮮な目を持っていて、性別や肩書きに関係なく、心からやりたいことをやれる特権があると私は思っています。だから、若い人たちには『自分の心を信じて進んでください』と伝えたいです。若いからこそ、世の中のいろんな分断を感じないで生きていくことだってできる。その純粋な心を持ち続けて、自分の心を信じて進んでいってほしいと思います」

□ランディ・ジャクソン(Randy Jackson)1961年10月29日、米・インディアナ州ゲーリー生まれ。ジャクソン家9人兄弟の末弟から2番目。兄にマイケル・ジャクソン、妹にジャネット・ジャクソンという世界的スターがいる音楽一家に育つ。自身も70年代後半から80年代にかけ活躍した兄弟グループ「ジャクソンズ」のメンバー。マイケルとともにジャクソンズの『シェイク・ユア・ボディ(Down to the Ground)』などの楽曲を共同制作。実業家としても、妹・ジャネットの独立系レーベル「リズム・ネイション・レコーズ」の共同設立者を担い、精力的にサポートを続けている。2026年3月、ジャネットの日本特別公演「JANET JACKSON JAPAN 2026」(6月9日に神戸・GLION ARENA KOBE、6月13日&14日にK横浜アリーナ、6月17日に名古屋・IGアリーナ)のPRで緊急来日した。

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