港区、全区民27万人に「1万円」付与…富裕層多いのになぜ? 「生活支援」だけでない狙い

物価高騰が家計を直撃する中、東京・港区が実施する物価高騰対策事業が注目を集めている。港区民約27万人を対象に、港区版のデジタル地域通貨である「みなトクPAY」で使えるポイントを1人あたり1万円分付与するという、区として過去最大規模のポイント付与施策。ネット上では「1人1万円だから、家族3人で3万円。これはうれしい」「港区民でよかった」といった喜びの声が広がっている。一方、なぜ「1万円」という金額なのか。どのような効果を狙っているのか。事業の核心について、港区の担当者に詳しく話を聞いた。

みなトクPAY【写真:ENCOUNT編集部】
みなトクPAY【写真:ENCOUNT編集部】

還元事業は今回で10回目

 物価高騰が家計を直撃する中、東京・港区が実施する物価高騰対策事業が注目を集めている。港区民約27万人を対象に、港区版のデジタル地域通貨である「みなトクPAY」で使えるポイントを1人あたり1万円分付与するという、区として過去最大規模のポイント付与施策。ネット上では「1人1万円だから、家族3人で3万円。これはうれしい」「港区民でよかった」といった喜びの声が広がっている。一方、なぜ「1万円」という金額なのか。どのような効果を狙っているのか。事業の核心について、港区の担当者に詳しく話を聞いた。

「みなトクPAY」は、港区の楽しさを増やし、より多くの人へ届けるという想いから2025年7月に誕生した地域通貨アプリ。発行主体は港区商店街振興組合連合会、運用開始以来、港区は、港区商店街振興組合連合会とともに驚くべきスピード感で施策を重ねてきた。2025年7月、10月、12月には最大20%還元のキャンペーンを実施。2026年1月・2月には「真冬のポイント大還元祭」と銘打ち、2か月連続で還元率を最大25%に引き上げた。

 さらに、それ以外の月(8月、9月、11月)も2%還元を継続するなど、25年7月から26年3月までのわずか9か月間で計9回もの還元事業を切れ目なく展開。さらに今回打ち出されたのが「全区民への1万ポイント付与」という過去最大のプロジェクトだ。

 今回の「みなトクPAYポイント付与・商品券配付事業」は、物価高騰対策として位置付けられており、全区民に1万ポイント(または商品券)を配付。ポイントは、港区内にあるみなトクPAY参加店舗のスーパーマーケットやショッピングセンター、ドラッグストア、飲食店などで利用できる。予算規模は事務費を含め約31億円にのぼる。

 最大の注目点である「1人あたり1万円」という還元額。この設定理由について、担当者は国の調査結果を背景に挙げる。

「企画段階において、国の『家計調査』から、家計1人当たりの食料支出は、前年に比べ年間約1万9000円増加していることを把握しました。区では、これまでも物価高騰を踏まえたポイント還元事業など、様々な支援施策を行ってきましたので、こうした施策とあわせて、本事業により増加分の食料支出に対する支援を進めていくためは、1人当たり1万ポイントの付与が必要であると考えました。このため、国の交付金に加え、区の財源も追加し、1万ポイントと設定しています」

 実際に効果も出始めているという。「ポイントを使うためにアプリで検索し、気になっていた個人飲食店に家族で行ってみた」という声も届いており、区民と地元の中小店舗をつなぐ「きっかけ」として機能しているようだ。

対象を全区民とした目的は2つ

 港区といえば、全国的にも所得水準が高いイメージが強い。その中で、あえて対象を絞らず全区民としたのは「生活支援」と「地域経済活性化」という、2つの目的があった。

「物価高騰の影響を受ける区民の日常生活を支援する側面と、仕入価格や原材料費などの高騰により採算を得るのに苦労されている区内の商店街をはじめとした地域経済の活性化の側面の、両側面を重視しています。一つの施策で、二つの側面に効果をもたらすことを重視しております」

 利便性の向上も進めている。現在、みなトクPAYが利用できる店舗は約1200店舗まで拡大した。特に最近は、日常生活に直結するスーパーマーケットへの導入を重点的に進めており、利用シーンは広がっている。

 港区がこの事業の先に描くのは、一過性の経済対策にとどまらない地域の姿。

「これまで区では、区民と中小企業、商店街を『支援する側・される側』という関係にとどめず、地域の価値をともにつくり、支え合うパートナーとして位置付けてきました。近年は、物価高騰など厳しい経済環境の中にあっても、地域通貨や商店街支援施策を通じて、区民の消費行動が地域経済を支え、事業者の努力が暮らしの質を高めるという好循環が着実に育ちつつあると受け止めています。今後の区の発展において重要なのは、この関係性を一過性の対策に終わらせず、日常的なつながりへと深化させていくことです。商店街が、単なる『買い物の場』ではなく、働く場、交流の場、挑戦の場として区民に身近に感じられる存在となることで、地域への愛着と経済の持続性が同時に高まっていくと考えます」

 そのうえで「区としては、これまで培ってきた支援の枠組みを生かしながら、区民の参加意識を高め、事業者の挑戦を後押しする環境づくりを一層進めていきます。区民一人ひとりが地域経済の担い手であるという実感を持ち、事業者が地域に根ざして成長できる。その積み重ねが、にぎわいと安心が両立した、持続的に発展する港区の将来像につながるものと考えています」と説明した。

 物価高という逆風を、地域内の絆を強める好機に変えられるか。「みなトクPAY」がもたらす1万円の還元は「支え合い、持続可能な街」への大きな一歩となりそうだ。

次のページへ (2/2) 【写真】みなトクPAYの利用方法
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