妊婦に優しい消防士の制服が「画期的」と大バズリ 私服に抵抗…当事者の声届く

宇都宮市消防局が新たに導入した「パンツタイプ」のマタニティー執務服が、SNS上で「画期的な進歩」「どんなライフステージでも働きやすい環境」と大きな話題を呼んでいる。全国的にも珍しいというこの試み。導入の裏側には、これまで「制服職員」であるがゆえに抱えていた、妊娠中の職員たちの葛藤があった。

パンツタイプのマタニティー用執務服【写真:X(@Utsunomiya_119)より】
パンツタイプのマタニティー用執務服【写真:X(@Utsunomiya_119)より】

きっかけは、妊娠を経験した女性職員からの要望

 宇都宮市消防局が新たに導入した「パンツタイプ」のマタニティー執務服が、SNS上で「画期的な進歩」「どんなライフステージでも働きやすい環境」と大きな話題を呼んでいる。全国的にも珍しいというこの試み。導入の裏側には、これまで「制服職員」であるがゆえに抱えていた、妊娠中の職員たちの葛藤があった。

 これまでの執務服はパンツスタイルではあるものの、活動服や訓練用Tシャツ、ワイシャツは妊娠5か月以降になるとタックインできなくなるため、勤務時の着用に抵抗があるという。さらに下衣についても、妊娠期に着用できる被服が用意されていなかった。

 同局によると、検討を開始したのは2024年12月ごろ。きっかけは、妊娠を経験した女性職員からの「再度妊娠した際に、パンツタイプのマタニティー用執務服で勤務したい」という要望だった。

 これまで、職員が妊娠した際には、希望に応じてエプロンタイプのマタニティー執務服を貸与するとともに、私服での勤務を認めていた。しかし現場では、「制服職員として、私服で勤務することになじみにくさを感じる」という声が多くあったという。

 女性職員と意見交換を重ねる中で、具体的な悩みが次々と浮き彫りになった。

「私服など個人対応でいいと言われてもマタニティー服は金額も高いので、仕事に着ていく分や洗い替えも含め一定数準備するのは負担が大きい」

「制服職員の中で、私服を着ることには抵抗があり、私服であることを隠す心理が働いてしまう」

「マタニティーズボンでないとはけなくなる妊娠5か月前後から、上着をタックインできないため、上着の裾が出ていて見栄えが悪くなってしまう。そのため、Tシャツやワイシャツの着用に抵抗が出る」

「エプロンタイプのマタニティーは、スカート裾であるため、パンツタイプに比べて使用しにくい部分がある」

 こうした「制服職員であるため、私服での勤務に抵抗があり、妊娠時でも制服を着用して勤務したい」というプロ意識に基づいた要望を受け、同局は数種類のマタニティーパンツで実証実験を実施。その結果、2025年6月から導入に踏み切った。

「市民からも消防職員として認識される」メリット

 マタニティー執務服を着用する妊娠中の職員は、災害現場への出動を離れ、消防・救急に関する事務を担うなど、デスクワークを中心に勤務する。マタニティー執務服は、本人が希望するタイミングで着用できる。

 実際、妊娠初期から産前休暇前まで着用した職員もおり、「職場になじみやすく、市民からも消防職員として認識され対応もスムーズに行うことができ、これまでと同じように制服職員であることを意識しながら勤務できる」と好評だという。産前休暇は出産予定日の6週間前から取得でき、職員の体調などを考慮しながら柔軟に対応しているそうだ。

 今回のSNSでの反響について、宇都宮市消防局は次のようにコメントした。

「女性活躍推進に関する投稿が、世間の関心としてこれ程大きいことを改めて認識しました。消防という組織は、まだまだ男性の職場であるイメージが大きいため、女性にとっても働きやすい職場環境の改善に向けて今後も取り組んでいき、市民サービスの向上につなげるとともに、女性の採用希望者の増加にもつなげていきたい」

 消防という組織には、今なお「男性の職場」というイメージが根強い。しかし、宇都宮市消防局は女性消防職員の活躍を推進。新マタニティー執務服導入は、全国の公務員組織や企業にとっても、職場環境改善の大きなヒントになりそうだ。

次のページへ (2/2) 【写真】宇都宮市消防局が取り入れたマタニティー用執務服 全身ショット
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