すべてが詰まったシリーズ最高傑作にして集大成 『バイオハザード レクイエム』に見た“職人技”

『バイオハザード レクイエム』(PlayStation 5 / Xbox Series X|S / PC / Nintendo Switch 2)をプレイした。本作は1996年に発売した『バイオハザード』に端を発するサバイバルホラーゲームだ。少ない弾薬を駆使し、ゾンビたちがうごめく街を生き延び、生物テロを引き起こすアンブレラ社の陰謀を暴いていくのが主な目的となっている。

シリーズ9作目となる『バイオハザード レクイエム』【画像:(C)CAPCOM】
シリーズ9作目となる『バイオハザード レクイエム』【画像:(C)CAPCOM】

シリーズの持ち味が詰め込まれた傑作

『バイオハザード レクイエム』(PlayStation 5 / Xbox Series X|S / PC / Nintendo Switch 2)をプレイした。本作は1996年に発売した『バイオハザード』に端を発するサバイバルホラーゲームだ。少ない弾薬を駆使し、ゾンビたちがうごめく街を生き延び、生物テロを引き起こすアンブレラ社の陰謀を暴いていくのが主な目的となっている。

 シリーズは30周年を迎え、多くのクリエイターによるさまざまなタイトル展開がなされてきた作品であり、本作はナンバリングの9作目に当たる(サブタイトルのrequiemのqという文字が9に見えるように描かれている)。シリーズの持ち味であったリソース管理の遊びと、TPS(三人称視点のシューティング)の爽快感、ショッキングなゴア表現に良質なホラー体験、そしてギャグにも取れるお約束の展開まで、すべてが詰まった『バイオハザード』の最高傑作として仕上がっていた。

ホラー体験としても良質【画像:(C)CAPCOM】
ホラー体験としても良質【画像:(C)CAPCOM】

 本作の舞台は2026年。主人公はグレース・アッシュクロフトというFBIの分析官だ。連続変死事件を追いかけているうちに、ヴィクター・ギデオンという男によって療養所に幽閉されてしまい、その過程で自らの出自にまつわる運命に巻き込まれていく。

主人公のグレース【画像:(C)CAPCOM】
主人公のグレース【画像:(C)CAPCOM】

 そしてもう一人の主人公は、レオン・S・ケネディ。バイオテロとそれを鎮圧するために行われたミサイル爆撃によって街が消滅した「ラクーンシティ事件」の生き残りで、DSOという対バイオテロ組織に所属しているエージェントだ。齢50を超えていまだに前線を張っている彼もまた、とある目的のためにヴィクター・ギデオンを追っていた。

もう一人の主人公であるレオン【画像:(C)CAPCOM】
もう一人の主人公であるレオン【画像:(C)CAPCOM】

 大まかなプレイ体験や、UIなどのデザインは『バイオハザードRE:2』に似ている。立ちはだかるゾンビたちを撃ち倒しつつ、散りばめられたパズルを解きながら先へ進んでいく一本道のサバイバルホラーである。多くのゲームが真似しているスタイルであり、それ自体は取り立てて珍しくもないものになってきた。

 しかしながら、本作ではグレースとレオンに操作キャラクターを分けたことにより、いくつもの相乗効果を生んでいる。

サバイバルホラーとしては王道のスタイルとなる【画像:(C)CAPCOM】
サバイバルホラーとしては王道のスタイルとなる【画像:(C)CAPCOM】

 それらを説明するためにまず『バイオハザード』シリーズが大事にしてきた長所はいくつかあり、それらを筆者なりに定義しておこう。

 ひとつは“リソース管理”だ。これは弾薬や回復薬(グリーンハーブ)を手に入れる機会が少ないため、常に手持ちのアイテムを節約しながらゾンビを倒していかなければならないという点である。実際は必要最低限を上回る量を手に入れられるので詰むことはないものの、遊んでいる最中は緊張感を持ってプレイすることができる。

緊張感を持ってプレイできる作りがある【画像:(C)CAPCOM】
緊張感を持ってプレイできる作りがある【画像:(C)CAPCOM】

 そして同時に『バイオハザード4』以降で開花した“TPSとしての歯応え”がある。さまざまな武器をふんだんに使って撃ち合いをする気持ち良さのことだが、これはある意味リソース管理の長所と矛盾しているところでもあり、シリーズ一本一本において、このどちらを重視しているかはまちまちであり、ファンの評価も割れる点であった。

ゾンビとの対決は醍醐味の一つ【画像:(C)CAPCOM】
ゾンビとの対決は醍醐味の一つ【画像:(C)CAPCOM】

ダブル主人公が実現した飽きの来ない作り

 しかしながら、本作ではこの二律背反する要素を完全にミックスしている。グレースは、FBIに所属しているものの腕っぷしが強いわけでもなく、トラウマから来る恐怖心から日中もどこかおどおどしているような、か弱い人物だ。そんな彼女が初めてバイオテロに遭遇し、顔を引きつらせて逃げ惑う姿は、まさしく往年のスクリームクイーン(ホラー映画やスリラー作品において恐怖に絶叫する演技が得意な女優)の貫禄がある。

 彼女のパートでは常に弾薬が足りず、強力な武器をぶっ放す機会も少ない。パズル的に敵を処理していき、捕まったら絶対に殺されてしまう相手に怯えながら、それでも前に進まなければならないという体験を味わうことができた。

グレースは怯えながらも前へと進んでいく【画像:(C)CAPCOM】
グレースは怯えながらも前へと進んでいく【画像:(C)CAPCOM】

一方で、レオンは老境に差し掛かりながらも、その技には磨きがかかっており、ゾンビの相手もなんのそのである。最初からいくつもの武器を携帯しており、弾薬もワンサカ手に入る。おまけに中盤からは武器の強化までできるようになり、まるで『DOOM』や『Killing Floor』シリーズのようなスカッとしたシューターを楽しむことができる。特に序盤では、グレース編で苦戦してわざわざ迂回してまでやり過ごした敵を、レオン編で派手にぶっ飛ばすことができ、キャラクターへの没入感が高まった。

 これらのパートがほぼ交互に訪れることによって、シリーズが今まで培ってきた長所をたっぷりと味わうことができるうえに、飽きが来る前に他の楽しみが押し寄せるという変化にもなっていた。

レオンの操作パートは派手なバトルを楽しめる【画像:(C)CAPCOM】
レオンの操作パートは派手なバトルを楽しめる【画像:(C)CAPCOM】

 ゲーム体験においては花丸の出来であるが、その他の点においても本作は非常に素晴らしい。

 まずカットシーンについて。これは特に一般人にほど近いステータスであるグレースというキャラクターを配置したことが何よりも功を奏しただろう。ちょっとしたことでもすぐに怯える彼女は、我々プレイヤーが何度も観てきたゾンビの出現シーンにもちゃんと驚いてくれるので、なんだか先輩として見守っているような気分になり、嬉しくなってくる。と同時に、あまりにやかましいキャラクターにはなっておらず、その塩梅も最適だった。特に中盤で守るべきものができてからは、キャラクターとしての深みがグッと増した。筆者は日本語吹き替えで遊んだが、キャラクターボイスを務める貫地谷しほりの演技は素晴らしかった。

グレースのCVを務めるのは貫地谷しほり【画像:(C)CAPCOM】
グレースのCVを務めるのは貫地谷しほり【画像:(C)CAPCOM】

 ホラー表現も充実しており、序盤のストーキングや盗撮を受けているようなねっとりとした嫌な感じから、怖い絵本によるヒタヒタとした演出、お決まりのゾンビ出現系のジャンプスケアに、血塗れ泥塗れのスプラッターまで、手を変え品を変えあらゆるパターンを用意してくれている。

絵本による演出も秀逸だ【画像:(C)CAPCOM】
絵本による演出も秀逸だ【画像:(C)CAPCOM】

 他にも、ネットミームとなって久しい“カプコンヘリ”の登場や、『バイオハザード2』に登場した豆腐のイースターエッグなど、関西ノリのギャグもちょっとしたアクセントになっている。

 一方で、メインストーリーはシリーズにしては珍しくしっかりとシリアスで整えており、特に療養所から抜け出した直後のカットシーンは涙腺を刺激するほど作りこまれたものであった(それゆえにそのあとのグレースの行動や、新しく出てきたキャラクターはいただけなかったが……)。

 また、ラクーンシティ周りの描写は、懐かしさこそあるものの、基本的にはノスタルジーに訴えかける装置である以上のものはなく、描いてくれたことに感謝はしたいが、高評価すべきかは悩ましいところである。

ノスタルジックな仕掛けも存在する【画像:(C)CAPCOM】
ノスタルジックな仕掛けも存在する【画像:(C)CAPCOM】

 30周年の集大成を感じる、古典的な一本道のゲーム体験を限界までブラッシュアップしたような素晴らしいタイトルだった。ホラー、TPS、リソース管理、ゴア表現、カットシーンと、およそシリーズに求められているものをすべて高品質な形で提供してくれた、まさしく職人の逸品である。

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