前作に続く高評価の『パラノマサイト FILE38 伊勢人魚物語』 人魚伝説×青春ミステリーの魅力とは

青春群像伝奇ミステリー『パラノマサイト FILE38 伊勢人魚物語』(Nintendo Switch / PC / iOS / Android)が19日(Steam版は20日)、発売となった。本作は2023年に発売され、じわじわと人気が広がっていった『パラノマサイト FILE 23 本所七不思議』の続編となるホラー・ミステリーアドベンチャーゲームだ。

高評価を得ている『パラノマサイト FILE38 伊勢人魚物語』【画像:(C) SQUARE ENIX】
高評価を得ている『パラノマサイト FILE38 伊勢人魚物語』【画像:(C) SQUARE ENIX】

『パラノマサイト』の続編が発売

 青春群像伝奇ミステリー『パラノマサイト FILE38 伊勢人魚物語』(Nintendo Switch / PC / iOS / Android)が19日(Steam版は20日)、発売となった。本作は2023年に発売され、じわじわと人気が広がっていった『パラノマサイト FILE 23 本所七不思議』の続編となるホラー・ミステリーアドベンチャーゲームだ。

 前作は、スクウェア・エニックスによる制作ながら比較的小規模の開発体制でリリースされ、口コミを中心とした広がりを見せた。実在する怪談を題材にして、一癖も二癖もある魅力的な登場人物たちが繰り広げる群像劇。どこか懐かしさも感じさせるストーリーが評価され、『日本ゲーム大賞2023』で優秀賞も受賞している。

 そうした経緯もあり、続編となる『FILE38』は発売前から大きな期待を寄せられていた。そして、発売から数日が経ち、Steamでの評価は記事執筆時点で「圧倒的に好評」。プレイヤーからは高めのハードルを課せられる状況となっていたが、それをしっかりと越えてきた。

(※以下、作品のネタバレを含む記述があります)

 本作の舞台は、伊勢湾に浮かぶ離島である亀島。墨田区を舞台にした前作とは異なり、海に囲まれた環境が新鮮だ。前作は深夜の公園からゲームが始まり、どこかおどろおどろしい雰囲気があったが、今作は画面上の色合いから爽やかささえ感じられる。ホラー要素も存在するものの、伝奇ミステリーとしての側面が非常に大きい作品と言っていいだろう。

 一方で実際にプレイしてみると、前作から変わらず馴染み深いゲームシステムに、懐かしさを覚えた。360度を見渡せる自由な視点操作によって、些細な変化を探す楽しみだけでなく、一度視線を外して戻した時の変化にゾクッとする体験も健在。ジャンプスケア(驚かせる演出)の数はかなり減った印象だが、要所で「何か来るのではないか」と思わせる作り(無音+振り向き必須の状況など)が秀逸だった。

 ストーリーのテーマとなっていたのが人魚伝説であり、「八百比丘尼」のキーワードも登場する。広く知られている伝承を扱う場合、ストーリーに既視感が生まれてしまうリスクもあるが、本作では主流の解釈に忠実でありながら、舞台となる亀島の地理的な要素などをうまく絡めてアレンジ。いわゆる伝奇モノに親しむプレイヤーであっても、その知識のせいで物語を予測できてしまうということはないはずだ。

勇佐とアザミの掛け合いは魅力の一つ【画像:(C) SQUARE ENIX】
勇佐とアザミの掛け合いは魅力の一つ【画像:(C) SQUARE ENIX】

爽やかで前向きな登場人物たちが織りなすストーリー

 全体的なストーリーに関しては、物語の根幹に関わるネタバレは避けるが、「青春」や「ロマン」のような、爽やかで前向きな要素が登場人物たちの動機となっていたのが印象的だ。

 一例として主人公の勇佐(ゆうざ)をはじめとする仲良しグループはそれぞれの考えを持って行動しているものの、よほどシリアスな状況でもない限り、ちょっとした掛け合いなども楽しんでいる様子が伝わってくる。前作でも軽妙な掛け合いはあったとはいえ、学生組のストーリーも含めて腹の探り合いをしていることも多かっただけに、今作での明確な違いになっていると言えるだろう。

 そうしたノリやテンポは勇佐のグループだけでなく、アヴィとキルケなら冒険のロマンと好奇心、結命子(ゆめこ)と双奴(そうど)なら経験と強さから来る余裕をベースにして表出していた。この中では結命子&双奴のパートが最も重めな雰囲気ではあったが、プレイしてみれば2人とも正義感と前向きなエネルギーに満ちていることがわかる。それぞれが最善を目指して行動した結果、島の人々や事象を動かしてエンディングを迎えるという、ある意味で王道のストーリーに収束していく流れは、まさに爽快だった。

 個人的には前作における「バラバラに動いていたキャラクターたちが最終的に交わって事態を解決に導く」という流れに魅了されていたため、そうした色がやや薄い点は今作の数少ない不満点でもある。前作は「群像ホラーミステリー」、今作は「青春群像伝奇ミステリー」と銘打たれており、その中でも“群像”という部分に重きを置く場合の感想と受け取ってもらいたい。

 また、ゲームシステムにも関係してくるところではあるのだが、ストーリー展開が「謎を追う」「伝説を解き明かす」方向に特化していることもあり、前作の呪詛(呪いによる攻撃)を行使するタイミングの探り合いのようなシーンがなかったことは、やや残念だった。「どのタイミングで呪詛を行使すればその場を乗り切れるのか」という、手に汗握るバトルが突然現れるワクワク感はあまりない。もっとも、その代わりにしっとりとした空気感をまとう伝奇ミステリーとして、大幅に完成度を上げていることも事実。呪詛バトルの色を抑えているのも、より良いものを作るため、前作からの変化を恐れなかった結果だと感じている。

 新規IPとして比較的小規模で制作され、好評を博した作品の続編という、非常に難しい背景を持ってリリースされた『パラノマサイト FILE38 伊勢人魚物語』だが、丁寧に作り込まれたゲームシステムを継続・発展させながら、舞台や登場人物との兼ね合いでストーリーと演出をチューニングした結果は、現在の評価を見ても間違いなく成功と言っていい。クリア直後から『パラノマサイト』シリーズとしての成長と、スピンオフを含めた次回作への期待を高めてくれる、理想的な“正統続編”だった。

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