デビュー直前に交通事故で車椅子生活…絶望から這い上がった“空手王女”、中卒で捧げたプロレス人生
プロフェッショナルレスリングJTOの稲葉ともかは、多くのタイトルを獲得し、スターダムでもその存在感を確かなものにしている。妹・稲葉あずさのデビューも大きな転機となり、地元・愛知県豊川市での凱旋興行も成功させた。その稲葉ともかへのインタビュー後編はスターダム参戦からあずさのデビュー、そして自身をプロレス界へ導いたTAKAみちのくとのシングル戦のお話を。

舞華と同じ日にデビューできなかったのが悔しかった
プロフェッショナルレスリングJTOの稲葉ともかは、多くのタイトルを獲得し、スターダムでもその存在感を確かなものにしている。妹・稲葉あずさのデビューも大きな転機となり、地元・愛知県豊川市での凱旋興行も成功させた。その稲葉ともかへのインタビュー後編はスターダム参戦からあずさのデビュー、そして自身をプロレス界へ導いたTAKAみちのくとのシングル戦のお話を。(取材・文=橋場了吾)
稲葉ともかは入寮後、MIRAIと切磋琢磨するように練習に励んだ。しかし足首をケガしてしまい、療養のために地元の愛知県豊川市に戻っていた。
「新人の女子は私たちだけで、一緒に入団テストに合格して入寮日も一緒でした。それで練習中に足首をケガしたんですが、結構大きなケガだったので地元に戻りました。治るまでに結構時間がかかってしまったので戻りづらいなと思っていたら、MIRAIはもう辞めていて。そのタイミングで代表(TAKA)はJTOを立ち上げるというのでついていくことにしました」
2019年7月のJTOの旗揚げ戦(後楽園ホール)には、ともかのほかに武蔵龍也、舞華(スターダム)、KANON(DDT)、rhythm(フリー)、新、イーグルマスクがいた。武蔵と舞華は先んじて同年5月にデビュー戦を終えていた。
「JTOの寮に入る直前に交通事故に遭ってしまって。入院するようなケガではなかったんですけど、少しの間車椅子生活で、舞華と同時にデビューができなかったんです。舞華のデビュー前のエキシビションの日は、私はサポーターを巻いて売店に立っていて……めちゃくちゃ悔しくて、帰りもずっと泣いていましたね。結果的に、JTOの旗揚げ戦では最初に入場することになりました」
デビュー戦のカードは「安納サオリ&日向小陽&rhythm vs ジュリア&米山香織&稲葉ともか」。今思うと、点と点が線となっていくカードだ。その後、ともかはしっかりと結果を出す。QUEEN of JTO、JTO GIRLS王座、JTO GIRLSタッグ王座、他団体のセンダイガールズワールドジュニア王座も獲得。そしてスターダムの若手主体のブランド『NEW BLOOD』に参戦、2022年8月には朱里率いるGOD‘S EYEに加入し本戦にもレギュラー出場するようになった。
「当時のGOD‘S EYEは朱里さん、(壮麗)亜美、MIRAIの3人で、大江戸隊(現H.A.T.E.)に襲われているところに救出に入りました。そこでMIRAIと再会したんですけど、また離れてしまいましたね」

TAKA戦は稲葉ともかのプロレス人生の中で大事な一戦になる
2023年3月3日、5歳年下の妹である稲葉あずさがJTOでデビュー。デビュー戦の相手を務めたのがともかだった。
「私のデビュー戦を見て憧れを持ってくれて。ただ当時、私は千葉にいて、妹は豊川だったので、私は自分のことに集中していました。でも妹が不登校になってしまって、心配になって電話で話したときにプロレスラーになりたいという話をしました。まあでも、妹は口だけでプロレスをなめているなと思いましたよ。道場に練習には来るようになったんですけど、ボッコボコにしていました。プロレスは命をかけて試合をしているので、なめてかかると大変なことになりますから……毎日泣かせていましたね。
ただ私は実家を離れてからそのありがたみを知ったので、練習中だけは厳しくして。デビューするときには、(あずさの)気持ちは全然変わっていましたね。二人で寮だったり、お風呂だったり、泣きながら語ることもありました。その中で、妹が『稲葉ともかの妹としてデビューするからには、お姉ちゃんの顔はつぶせない』と言ったんですよね……」
デビュー戦はともかが勝利したが、2年後の2025年7月にはQUEEN of JTOの座をあずさに奪われた。
「リングに上がったら姉妹とか、先輩・後輩とかは関係ないので、結果として負けは悔しかったですけど、“アネゴエ”された嬉しさもありましたね。ここまでやっと来てくれた、やっとここからまたバチバチ行けるんだと。やっぱり、(あずさを)下に見ていた自分もいたので、ここからいちライバルとしてバチバチにやっていけるのかという楽しみもできましたね」
その二人は地元・豊川市で凱旋興行(2.23豊川市総合体育館)を成功させたばかりだ。
「デビューしてから名古屋大会はあったんですけど、名古屋は空手でしか行ったことがなくて、全然詳しくないので凱旋と言われてもちょっと(苦笑)。なので豊川での試合を絶対にしたいと思ったんですが、会場の改装など色々あって決まるまで1年かかりましたね。その間に中野たむが引退してしまって、愛知県出身者同士でどこかでシングルで戦う夢もなくなったときに、後悔はしたくないなと思いました」
そしてJTO3.6後楽園ホール大会。ともかはTAKAとの3度目のシングルに初勝利をかけて臨む。
「代表は私が意識している選手ばかり褒めるんですよ。JTOを辞めた舞華はみちのくドライバーⅡを継承して、ずっと離れていたMIRAIにはそのみちのくドライバーⅡをシングルで初めて女子に対して使った。妹にはいろいろな技を教えていて、Aoiのことは天才だと。嫉妬といわれれば嫉妬なのかもしれないですけど、だから負けられない。それもあって、舞華にもMIRAIにも勝ちたかったんですけどね……だからこそ私が女子レスラーとして初めて、TAKAみちのくに勝って超えたい。今の稲葉ともかがあるのはファンの皆さんのおかげという気持ちなんですが、今回ばかりは男子と闘うことに反対の声があるのは承知で戦いたいと。やっぱり私のやりたいことの中には“対男子”があるので、憧れの鈴木みのるさんとも対戦しましたし。“男子には勝てないだろう”という概念を壊したいですよね、特に代表相手ですから。ただどこかで、JTOを辞めたら私も褒められるのかなという気持ちにもなりました」
誰もが認める実力がありながら、大事な試合はなかなか勝ちきれないときがあった。だかたこそ、ともかにとってTAKA戦はとても意味のある試合となる。
「ここで勝って、次に進まなきゃいけないんです。自分の今までのプロレス人生だけでなく、これからのプロレス人生の中でも大事な一戦だと思うので、稲葉ともかの今のすべてのきっかけとなる試合を見に来てほしいです。後楽園ホールで、声を出して応援してほしい。皆さんの期待を背負って、稲葉ともかは戦います。そしてMIRAIが妹から奪ったJTO GIRLS王座を取り返しに行きます」
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