「言ったらビックリする金額」かかった経費は2億円以上 日本版“蛇の穴”代表が「最終章」へと突き進む理由

東京・高円寺にC.A.C.C.スネークピットジャパン(日本版“蛇の穴”)を運営する宮戸優光代表は、2029年には設立から30年を迎えることから、2025年に「最終章」と銘打った大会を実施し、すでに4大会を開催してきた。宮戸代表の考える「最終章」とは何か? 今回はその真意を聞いた。

A猪木VSロビンソン戦から丸50年の記念日に、選手として再びリングに立った宮戸代表
A猪木VSロビンソン戦から丸50年の記念日に、選手として再びリングに立った宮戸代表

猪木VSロビンソン戦の丸50年後、30年ぶりに選手としてリングに立つ

 東京・高円寺にC.A.C.C.スネークピットジャパン(日本版“蛇の穴”)を運営する宮戸優光代表は、2029年には設立から30年を迎えることから、2025年に「最終章」と銘打った大会を実施し、すでに4大会を開催してきた。宮戸代表の考える「最終章」とは何か? 今回はその真意を聞いた。(取材・文=“Show”大谷泰顕)

 実を言うと、2025年12月11日は、アントニオ猪木が“人間風車”ビル・ロビンソンと蔵前国技館で一騎打ち(結果は60分闘って時間切れ引き分け)を行ってから、丸50年という記念日だった。

 宮戸代表は、「自分があの時、国技館に行っていなければ間違いなく違う人生になっていた。小学校の6年生でしたけどね」と50年前を振り返る。

 そして宮戸代表は1999年にC.A.C.C.スネークピットジャパンを立ち上げ、レスリング古来のスタイル「C.A.C.C.(キャッチ・アズ・キャッチ・キャン)」を根付かせるべく、ビル・ロビンソンをヘッドコーチとして招へい。日本版“蛇の穴”流の「心・技・体」を後進に受け継ぐべく、10年以上もの間、日本に定住してもらっていたこともある。

「結果的にはロビンソン先生にトータル20年以上、指導をしていただいたことによって、猪木会長とも出会えたと思う。そうじゃなければ、僕はその後、(猪木が立ち上げたプロレス団体)IGFの現場部長を丸4年も務まらなかったと思う」

 だからこそ両者の生き方に多大なる影響を受けた宮戸代表は、昨年末に訪れた記念すべき日に、選手として「最終章」のリングに立ち、野上彰(AKIRA)を相手に10分間のスパーリングマッチを闘うことになった。

 果たして宮戸代表は、何かに導かれるように、猪木VSロビンソン戦から丸50年後のリングに、選手として再び立つことになった。それはUWFインターナショナルでの試合以来、実に30年以上ぶりの“事件”だった。

 だが、すでに還暦を過ぎた宮戸代表の体調は決して万全ではなかった。数年前にヒザを痛めると、そこに付随して股関節を痛めてしまっていた。

「一時期は歩くのも、30メートル歩いたらしばらく立ち止まらなきゃ歩けない時もあった」

 それでも、決めたからにはやるしかない。宮戸代表はリハビリからはじめて、リングに立つだけの「コンディションまでには持っていくことができた」結果、「試合が終わったら、自力で立てないことは承知の上」と覚悟を決めてリングインした。

「最後、ホントに動けなかったですからね。(終了の)ゴングが鳴った時にね。ただ、横を見たら野上さんも動けない感じだったから」

 それでも、場内に湧き起こった“宮戸コール”の大合唱は、あきらかに両者の激闘を祝福していたように思う。

宮戸代表(右)は野上彰(AKIRA)相手に得意のソバット(二連発)を繰り出した
宮戸代表(右)は野上彰(AKIRA)相手に得意のソバット(二連発)を繰り出した

まさかの“サムライシロー”越中詩郎が参戦

 宮戸代表は、試合中には「30年間、一度も練習していない」はずだった、得意のソバットも2回繰り出し、野上が足四の字固めを出したところでタイムアップ。10分間の時間切れとなった。

 年が明け、2026年の「最終章」開幕戦は3月3日に開催されるが、さらなるサプライズとして、まさかの“サムライシロー”こと越中詩郎の参戦が決定した。

 だが、宮戸代表は越中参戦に対し、これまでとは違う微妙な心境の変化を感じていた。

「越中さんが元気にされていると聞いて、しかもいざ参戦していただけるとなった時に、僕としてもこの間、(選手としてリングに)上がっちゃったし、当時、若手だった僕が(越中という)レジェンドに挑んでみたいなと思っちゃって。『最終章』と決めて、この3月で設立から丸27年になるんです。残り3年。悔やむことはしたくない」

 熟慮の結果、宮戸代表は再びリングに立つことを決めた。正式には宮戸が藤原ライオンと組み、越中が門馬秀貴と組んでのタッグマッチ(20分三本勝負)になることが決定したのだ。

「怖いよね。自分は自分のスタイルで、ロビンソン先生からいただいたものをぶつけるしかないわけだけど、それに対して(越中から)どういう反応が来るのか。想像つかないっていうかね。カードだけは組んでみたけど、実際はどんなものなんだろうと」

 そこまで話した宮戸代表は、「ただ、どう来られても大丈夫なように、というつもりではありたいですね」と話したが、気になるのは、C.A.C.C.のリングで、果たして越中が得意とするヒップアタックは出るのか。どうしてもその部分には注目してしまう。

 これに関して宮戸代表は、「昨年の第1回大会(6月29日)に鈴木みのる選手に出てもらった時もそうだったんだけど、頭から落とす技とか、そういった部分の制約を、スプリングが入っていないリングであるという構造上、かけざるを得ないので、その辺は逆に越中さんのほうが違和感が出ちゃうかもしれないけど、そこら辺はお互い様というか。だから基本はレスリング勝負というか、ある程度はそうなっていくと思いますよ」と静かに語った。

 ちなみに今回は日程的にビル・ロビンソンの十三回忌にあたる。

「十三回忌っていうのは仏教の考え方だから、それをロビンソン先生に当てはめるのは……って思う人もいると思うけど、昔から仏教に関わってきた日本人の感覚としては、十三回忌って結構大事な一つのご供養っていうかね。だから、ただ十三回忌を供養する大会をやりました終わりましたっていうことではなく、儀式として、最初に十三回忌の法要をお坊さんを呼んでやらせてもらおうと思っています」

 律儀にそう考えるあたりは非常に宮戸代表らしいが、「もちろん、試合で供養という考え方もあるんだけど、これはひとつの儀式として執り行わさせていただきたいなという気持ちですね」と話した。

240平米、72.6坪を維持していくための闘い

 それにしてもC.A.C.C.スネークピットジャパン内には、6年前から「ちゃんこの台所」(完全予約制)を食堂スペースに設け、昨年からは今回のように大会(道場マッチ)を開催できるスペースがある。この形式は、少なくとも都内においては他に類を見ないものがあるだろう。

「最初、36歳の時でしたからね、これをやりはじめたのは。それから、あっという間に27年経っちゃったけど、その間は常に240平米、72.6坪を維持していくための闘いっていうかね。正直、言っちゃえば、もう辞めたいなんて思ったことは、10回どころではないっていうかね」

 となると、これは多少無粋な話になるかもしれないが、ひと口に27年と言ってもそれだけの広さを運営して行くために払った家賃だけでも、相当の金額になっているはずだ。この問いに対し宮戸代表は「そんなことを言うのも恥ずかしいですね。ただ言ったらビックリする金額ですよ。例えばベンツの一番高いのがいくらするか分からないけど、そのベンツが20台以上買えちゃうんじゃないの?」と笑った。

 思わず、「億単位ですね」と告げると、「億のダブル(2億円以上)って感じですよ。まさか27年やるとは思っていなかったから想像もつかなかった。まずはじめることで精一杯じゃないですか」と答えた。

 しかしながら家賃だけで2億円以上だとすると、日本に10年以上住み続けたロビンソンの滞在費やヘッドコーチとしての指導料他、諸々合わせると、優に3億円以上はかかっていると思って間違いはない。

 すると、宮戸代表は27年前の立ち上げ当初を思い起こしながら、「一番最初は半年で青くなりましたよ」と銀行の預金通帳を見ながらそう思ったことを明かしたが、それでも「簡単にあきらめきれない理由があった」と話した。

「ロビンソン先生に声をかけて、“鉄人”ルー・テーズさんに手伝って(最高顧問)もらって。それを維持できなくて辞めました、なんてそんなカッコ悪いことで辞めることはできないじゃないですか。だからもし、それがなければとっくに辞めていましたね」

 そこまで話した宮戸代表は、こう続けた。

「よく『自分のために』とかって言うじゃない。だけど自分のためなんて大したことはないね。三島由紀夫先生が『人間は自分のためだけに生きられるほど強くない』っておっしゃっていましたけど、これはホントだよなっていう」

 そして、宮戸代表は来るべき30周年に向け、「3年後、今のようにカラダが動いているのか定かではないし、ケジメをつけないとどんどん月日だけ過ぎて行ってしまう。それでも、向こうの世界に行って、猪木会長やロビンソン先生、テーズさんと『やるだけのことはやりました』って顔を合わせたいんですよ。それだけのことですよね」と語った。

 最後に宮戸代表は、30年ぶりに再びリングに立つ意気込みを改めて口にした。

「僕の役割はC.A.C.C.を次の世代に残すこと。どこまでやれるか分かりませんけど、まずは今度の試合で、その思いをぶつけたいと思います」

(一部敬称略)

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