「次元大介」の絆…玉山鉄二、大塚明夫と“密会” 過酷ロケ支えた唯一の夜

京都の夜。通常であれば、撮影後のスタッフやキャストと連れ立って地元の名店へ、というのがロケの醍醐味だ。しかし、WOWOW連続ドラマ『北方謙三 水滸伝』(日曜午後10時)の撮影期間中、玉山鉄二の過ごし方は徹底して「独り」だった。彼が選んだのは、華やかな会食ではなく、ホテルの自室で食べるチェーン店のカレーだった。

インタビューに応じた玉山鉄二【写真:増田美咲】
インタビューに応じた玉山鉄二【写真:増田美咲】

連続ドラマ『北方謙三 水滸伝』で李富役

 京都の夜。通常であれば、撮影後のスタッフやキャストと連れ立って地元の名店へ、というのがロケの醍醐味だ。しかし、WOWOW連続ドラマ『北方謙三 水滸伝』(日曜午後10時)の撮影期間中、玉山鉄二の過ごし方は徹底して「独り」だった。彼が選んだのは、華やかな会食ではなく、ホテルの自室で食べるチェーン店のカレーだった。(取材・文=平辻哲也)

「京都ロケ中、夕飯を食べる時間ももちろんありました。でも、僕は部屋で独り、CoCo壱(カレーハウスCoCo壱番屋)を食べていましたね。おいしいですよ、全然満足できる。でも、何より自分の中に余裕がなかったんです。食事を愉しんだり、誰かと和やかに喋ったりする余裕があるなら、一分でも長く、李富という男の孤独について考えていたかった」

 そこまで自分を追い込んだのには、本作特有の構造がある。玉山演じる李富は、禁軍を操り梁山泊を包囲する青蓮寺(せいれんじ)側の中心人物。主人公・宋江(織田裕二)や、晁蓋(反町隆史)らとは、「ニアミス」の状態で物語が進む。

「僕は青蓮寺側の撮影ばかりだったので、梁山泊側の人たちがどんな熱量で、どんな空気で芝居をしているのかが、全く見えなかった。その『見えないこと』が、僕の中の焦燥感を強めていきました。ある時、織田さんと反町さんが猛スピードで走っているのを、僕が必死になって追いかけている夢を見たんです。でも、どれだけ走っても、絶対に掴めない。見えていない分、相当なプレッシャーに精神を侵食されていたんだと思います」

 現場でも、玉山はあえて孤独を貫いた。

「もうね、それどころじゃなかったんです(笑)。1ミリずつ、必死に砂を積むようにして持ち上げた役。それが、誰かとコミュニケーションを取ってリラックスした瞬間に、ズルズルとこぼれ落ちてしまいそうな感覚があった。だから、あえて他の役者さんともほとんど喋りませんでした」

 そんな極限状態の玉山が、唯一、心を預けられた時間がクランクイン前にあった。青蓮寺チームとして共に戦う名優・大塚明夫との時間だ。アニメ『ルパン三世』の次元大介役で知られる声優界の重鎮。玉山は実写版映画『ルパン三世』や配信映画『次元大介』で次元を演じている。

「明夫さんとは以前、次元大介のお仕事でお会いした縁もあり、事前にお食事に行きました。本当に楽しい方で、お酒が大好き。帰りのタクシーの中でもいろいろお話してくださって。あの時間があったから、現場で多くを語らずとも、チームとしての信頼感は成立していたのだと思います」

玉山鉄二が京都での撮影期間中の秘話を語った【写真:増田美咲】
玉山鉄二が京都での撮影期間中の秘話を語った【写真:増田美咲】

本編をすぐに見ない理由とは

 ロケは過酷を極めた。特に国宝・萬福寺(まんぷくじ)などでの撮影は、日本ドラマの歴史に類を見ない緊張感に包まれていた。

「自分がクランクインして3日目くらいで、最も重要なシーンの一つを撮りました。1話から最終話までの感情を、数日の中で一気に飛ばして演じ分けなければならない。膨大なセリフを、ただひたすら喋り続ける。保守的なお芝居に逃げることだけはしたくなかった。もう、二度と行きたくないと思うほど、濃密で過酷な時間。プレッシャーがすごすぎて、正直、ロケ地の景色を愉しむ余裕なんて1ミリもありませんでした」

 撮影が終わった今も、玉山は完成した本編をすぐには見ないという。そこには、自らの不器用さと向き合い続けてきた彼なりの、ある美学がある。

「見ちゃうとね、色気付いちゃうんですよ。『あ、ここをこうすれば良かった』とか、後悔のモードに入ってしまう。それが次の仕事に影響するのが嫌なんです。だから、僕は全てが終わるまで、本作を見ないかもしれません。いつか、全てが終わった後、ウイスキーのグラスを傾けながら、独りでゆっくりと振り返ることができれば。それが僕にとっての最高の打ち上げですね」

 古都の静寂の中、独りカレーをすすりながら、玉山は李富という男の孤独に身を浸した。その執念が生んだ、鋭利な刃物のような演技。それは間違いなく、本作の大きな見どころとなるだろう。

□玉山鉄二(たまやま・てつじ)1980年4月7日生まれ、京都府出身。99年に俳優デビュー。2005年には映画『逆境ナイン』で初主演。09年公開の映画『ハゲタカ』で第33回日本アカデミー賞優秀助演男優賞を受賞。14年、NHK連続テレビ小説『マッサン』では、劇中のモデルとなった竹鶴政孝を彷彿とさせる熱演で、国民的人気を得た。近年の主な出演作にドラマ『全裸監督』シリーズ、『さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート~』、映画『次元大介』など。

○作品情報
連続ドラマ『北方謙三 水滸伝』
放送・配信開始日:2026年2月15日(日)
放送時間:日曜午後10:00
話数:全7話
放送局:WOWOW(WOWOWプライム)
配信プラットフォーム:WOWOWオンデマンド、Lemino(同時配信)

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