長引く喉風邪…のどあめは効果的? 医師が解説 「絶対に避けてほしい」なめ方とは
気候が春に近付く中で、まだまだ冬の乾燥が続いている。喉が痛くなり、咳が止まらないなどの症状が出る「喉風邪」はやっかいだ。咳が長引くことで生活の質が低下し、仕事にも支障をきたしてしまう。医師による診察・処方薬での治療が大事だが、のどあめをなめることは、個人としてできる対処の一つだろう。そもそも市販ののどあめはどのタイミングでなめるのが効果的なのか。それに、夜中の咳き込みで眠れないことに困っている人も多く、「なめながら寝ていいの?」という素朴な疑問も。林外科・内科クリニック理事長(福岡)の林裕章医師が寄稿し、「正しいのどあめのなめ方」について解説した。

「のどあめ・トローチは原因治療ではなく症状緩和が主役」
気候が春に近付く中で、まだまだ冬の乾燥が続いている。喉が痛くなり、咳が止まらないなどの症状が出る「喉風邪」はやっかいだ。咳が長引くことで生活の質が低下し、仕事にも支障をきたしてしまう。医師による診察・処方薬での治療が大事だが、のどあめをなめることは、個人としてできる対処の一つだろう。そもそも市販ののどあめはどのタイミングでなめるのが効果的なのか。それに、夜中の咳き込みで眠れないことに困っている人も多く、「なめながら寝ていいの?」という素朴な疑問も。林外科・内科クリニック理事長(福岡)の林裕章医師が寄稿し、「正しいのどあめのなめ方」について解説した。
今冬は乾燥と気温差の影響もあり、喉の痛みやしつこい咳に悩まされる方が非常に多いですね。家庭医として、皆さんが安全に、かつ効果的に症状を緩和できるよう、医学的エビデンスに基づいたポイントを解説します。まず、前提として「多くの『喉風邪』はウイルス性で、のどあめ・トローチは原因治療ではなく症状緩和が主役である」ということを理解していただければと思います。
市販ののどあめについて説明します。市販品は、分類(医薬品・指定医薬部外品・食品)によって成分が異なります。期待できる点として、「唾液分泌の促進」が挙げられます。これが最大のメリットです。唾液には自浄作用と免疫成分(IgA抗体)が含まれており、喉を潤すことで防御機能を高めます。「粘膜の保護」の面でも、糖分などが喉の表面を薄くコーティングし、乾燥刺激から守ります。成分によっては、メントール等の清涼感による不快感軽減といった効果もあるでしょう。
しかしながら、期待できない点もあります。ウイルスの死滅は実現しません。のどあめ自体に風邪のウイルスを退治する力はありません。あくまで「対症療法(症状を和らげるもの)」です。それに、気管支炎・肺炎・喘息など、喉以外が主戦場の咳には効果が薄いです。
お勧めのポイントは、ノンシュガーのものや、炎症を抑える生薬成分(キキョウ、カンゾウなど)配合のものを選ぶと、血糖値や歯への影響を抑えつつケアできます。ただ、注意すべきポイントとして、米国の公衆衛生を担うCDCでは「4歳未満の小児にロゼンジ(のどあめやトローチ)を与えない」と明記されています。

「痛みがMAXになってから」より…
ここで、処方薬のトローチについても解説します。市販ののどあめとは、似て非なるものと言えます。それぞれの役割を正しく理解することが治療の第一歩になります。処方される医薬品のトローチにはいくつも種類がありますが、それらの主な目的は「口腔内および咽頭の消炎あるいは殺菌・消毒」です。なぜ処方されるか。喉の炎症がひどい場合、二次感染を防ぐため、あるいは直接患部に成分を届けて炎症をしずめるために使用します。飲み薬と違い、喉の粘膜に長時間留まることで局所的な効果を発揮するのが強みです。
それでは、「いつなめるのがベストか?」。タイミングについてお話していきましょう。「喉に違和感や痛みがある」と感じた引き始めや、乾燥した場所(電車内、オフィスなど)にいる時、あるいは会話・電話・講義などで喉を酷使する前後が最も効果的です。実務的には、「痛みがMAXになってから」より「乾き始めたら早めに」がベターです。粘膜は一度荒れると、刺激で咳反射(生体の防御反応)が立ち上がりやすいので、先回りが効きます。
中には、「咳が苦しい時にのどあめをなめると痰と一緒に詰まる」という不安をお持ちの方がいるかもしれません。痰が多いときや咳が激しい時になめるのは、実は要注意です。激しく咳き込んだ際、あめが気管に入ってしまう「誤嚥(ごえん)」のリスクが存在します。対策として、咳が少し落ち着いている時に、舌の上でゆっくり溶かすようにしてください。また、痰が絡んでいる時は、あめよりもまず「こまめな水分補給」で痰の粘度を下げることを優先しましょう。誤嚥のリスクを上げないために、横になりながらなめるのは避けましょう。
また、トローチのポイントもお教えします。「かみ砕かない」ことが鉄則です。穴が開いているのは、万が一飲み込んで気道に詰まった際でも空気が通るようにするための設計です。最後まで溶かし切り、服用後30分は飲食を控えると成分が定着しやすくなります。

夜も眠れないほどの咳が続く場合は早めに医療機関を
そして、「のどあめを舐めながら寝るのはアリかナシか?」。こういった疑問もあると思います。結論から申し上げますと、医師としては「絶対に避けてほしい」とお伝えします。眠りに入る際に喉の乾燥・痛みが軽くなり、入眠しやすいというメリットはありますが、以下のようにデメリットやリスクがそれを大きく上回ります。
1.窒息・誤嚥のリスク(最大のリスク):睡眠中は飲み込む反射(嚥下反射)が低下します。無意識にあめが気管に入り、窒息や吸入性肺炎を引き起こす恐れがあり、非常に危険です
2.虫歯のリスク:糖分を含んだあめを長時間口に入れたまま寝るのは、歯を砂糖漬けにするようなものです
3.逆流性食道炎の誘発:糖分が胃酸の分泌を促し、横になることで胃酸が逆流し、かえって喉を痛める原因(酸による炎症)になることがあります
ほかに、「寝る前のケア」を紹介します。加湿器の使用、濡れマスクの着用、または寝る直前にハチミツや温かい飲み物で喉を潤すと、睡眠の質を改善する可能性があります(ハチミツは1歳未満に絶対に与えてはいけません)。
今シーズンは、ウイルスが長期間喉に居座り、咳だけが残るケースが散見されます。最後に私から予防策とメッセージをお伝えします。
・湿度管理:湿度は50~60%をキープしてください
・鼻呼吸の意識:口呼吸は冷たく乾いた空気を直接喉に送り込みます。外出時はマスクを着用し、鼻の粘膜で空気を加湿・浄化しましょう
・睡眠の確保:睡眠が不足すると“防御の運用能力”が落ちます
喉風邪に苦しんでいる方へ。のどあめ・トローチは、ちゃんと使えばつらさを下げるいい道具になります。ただし、役割は「治す」ではなく「耐えるのをラクにして、回復までの時間を稼ぐ」に過ぎません。「たかが喉の痛み」と我慢し過ぎないでください。痛みで水分が取れなかったり、夜も眠れないほどの咳が続く場合は、炎症が長引いて気管支炎に移行している可能性があります。早めに医療機関を受診し、適切な消炎鎮痛剤や鎮咳薬の処方を受けてください。
以下のような症状の時は迷わず受診をしてください。
・呼吸が苦しい、喘鳴(ゼーゼー)、血痰
・高熱が続く/強い全身状態不良
・片側だけ強い咽頭痛、開口障害(口を十分に開けられない状態)、よだれが出る
・咳が2週間以上続く
喉をいたわることは、自分自身をいたわることです。どうぞお大事になさってください。
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