渋谷“ポイ捨て罰金”条例でごみはなくなる? 清掃ボランティアが語る「24時間で元通り」の惨状

東京・渋谷区で、コンビニやスーパー、自動販売機などの飲食料販売事業者に対するごみ箱設置の義務化と、ポイ捨て行為に対する過料徴収などを定めた改正条例が4月以降から順次施行される。今回の条例改正を巡っては、街の景観向上に期待する声の一方で、実効性を疑問視する声も上がっている。渋谷のごみを巡る現状とはどのようなものなのか。渋谷や杉並・方南町周辺を中心に、ヒーローのコスプレ姿で長年ごみ拾いのボランティア活動を行うスミレンジャーZ(@iijNWqUQ7i41630)さんを同行取材。渋谷のごみを巡る実情を聞いた。

ごみ問題で注目が高まる渋谷の街
ごみ問題で注目が高まる渋谷の街

2時間半ほどの清掃活動で、45リットルのごみ袋7枚分のごみを回収

 東京・渋谷区で、コンビニやスーパー、自動販売機などの飲食料販売事業者に対するごみ箱設置の義務化と、ポイ捨て行為に対する過料徴収などを定めた改正条例が4月以降から順次施行される。今回の条例改正を巡っては、街の景観向上に期待する声の一方で、実効性を疑問視する声も上がっている。渋谷のごみを巡る現状とはどのようなものなのか。渋谷や杉並・方南町周辺を中心に、ヒーローのコスプレ姿で長年ごみ拾いのボランティア活動を行うスミレンジャーZ(@iijNWqUQ7i41630)さんを同行取材。渋谷のごみを巡る実情を聞いた。

 現在29歳というスミレンジャーZさんが、ごみ拾いボランティアを始めたのは2017年。大学進学を機に上京後、ヒーローの仮装姿で参加した渋谷のハロウィーンで、あまりの惨状に目を疑った。その後、渋谷のごみ問題がハロウィーン期間だけに限ったことではないと知り、以来長年にわたって地道な清掃活動を続けている。

「地元にいた中学の頃からボランティア活動には興味を持っていました。もとは『スミレンジャーZ』ではなく、『スラウザー』という別のダークヒーローとして活動していましたが、1年程前に勤め先のパワハラによりうつ病になってしまい、一度引退した後、心機一転新しいアカウントで仕切り直しすることを決めました。今のアカウントは昨年5月の立ち上げからまだ1年もたっていませんが、フォロワーも2万人を超えるなど、地道な活動でも理解を得られていると感じます」

 昨年12月下旬、週に2~3回ほど行っているという清掃活動に同行。午前8時、待ち合わせ場所のハチ公前に向かうと、スミレンジャーZさん含め3人の、オリジナルヒーローにふんした清掃チームが迎えてくれた。

 早朝の渋谷駅周辺を、センター街から道玄坂、宮益坂、明治通りなどの主要ルートを巡回。路上には瓶や缶、ペットボトル、カフェのテイクアウト用カップといった容器や、たばこの吸い殻、文庫本や折りたたみ傘など、大量のごみが散乱していた。印象的だったのは、ごみ袋などの大きなごみが放棄された周辺に、缶やカップなどの細かなごみが大量に集まった光景。無秩序に散乱したごみの中にも、一定の法則があることを実感した。

「割れ窓理論と言われますが、ごみが置かれているとそれが呼び水となり『どうせ捨てられているんだしちょっとくらいいいか』とどんどんとごみが放棄されていきます。排水溝をさらったところ、2000本以上の吸い殻が出てきたこともあります。効果的な対策として、ごみが捨てられがちなスポットを板張りで覆うなど、物理的に防ぐ方法がありますが、渋谷区ではあまり進んでいるとは言い難い状況です」

 井の頭通りに位置する宇田川交番前に差し掛かると、コンビニの前に数人の外国人がたむろしていた。スミレンジャーZさんによると、ごみのポイ捨てマナーに国籍は関係なく、「日本人でも外国人でも捨てる人は捨てる」そうだが、コロナ禍が明けて以降、インバウンドの増加ともにごみの総量は増えてきているという。

「そこのコンビニは騒ぎの中心地として有名で、よく乱闘の様子などがSNSなどで拡散されています。深夜になると、どう見ても素人じゃない外国人がストリートファイトをしていることもある。交番の前でそれだけの騒ぎが起きていることが、今の渋谷の治安を象徴しているとも言えます」

 2時間半ほどの清掃活動では、45リットルのごみ袋7枚分のごみを回収。この他、個人のボランティア活動では回収しきれないほどの大量のごみが山積みとなっている場所も複数確認された。集めたごみは、宮下公園の奥にあるボランティア向けの回収スポットに廃棄しているという。

ごみ箱設置の義務化と、ポイ捨て行為に対する過料徴収を定めた条例が4月から順次施行

「渋谷のごみは区から委託された清掃事業者だけでは追い付かず、ボランティアありきで回っています。それでも拾ったそばから捨てられていくので、いたちごっこの状況。毎晩終電から始発にかけて街全体が宴会場と化し、どれだけきれいにしても24時間でほぼ元通りになってしまう。監視カメラは街の至るところにありますが、これだけのポイ捨てを摘発することは現実的に不可能。結果的に、どこに捨ててもおとがめなしというのが現状なんです」

 昨年12月に改正された「きれいなまち渋谷をみんなでつくる条例」では、今年4月1日から飲食料販売事業者等に対する回収容器設置を義務化。6月1日からは回収容器の設置命令に従わない飲食料販売事業者等や、ポイ捨て行為に対する過料の徴収が行われる。事業者に対しては、行政指導、業務勧告、改善命令、事業者名公表を段階的に行い、それでも従わない場合に5万円の過料を徴収。ポイ捨て行為には、2000円の過料が科される。

 長年、渋谷でごみ拾いを続けてきたスミレンジャーZさんは、今回の条例改正を評価する一方で、「店舗へのごみ箱設置の義務化は行政側の責任転嫁」と懐疑的な思いも抱いている。

「実は、うつ病の原因となった雇用主の会社が、渋谷区が委託している環境美化関連の事業者でした。事業者は相場の1.5倍ほどの報酬を得ており、ごみが落ちていることで事業者側にもお金が落ちるという利権のような構造があって、強制参加の飲み会の度に散々その話を聞かされました。立場上日雇いスタッフとして雇用されていましたが、スラウザーとしてそこそこの知名度もあったので、イベントの無償参加を強要されたり、甘い蜜を吸いたい人たちの広告塔とされることに嫌気が差してしまって。『自殺しろ』『生きてる価値ない』など、ひどい暴言やパワハラもありました。

 今回の条例改正について、行政権限でポイ捨てを取り締まれる過料化には賛成です。ただ、コンビニなどの事業者に対し、ごみ箱設置義務化を罰則で強制するのはどうなのか。現時点でもコンビニのごみ箱設置率は高く、効果については限定的ですし、ごみ箱を設置するにしても屋外でなければ路上のごみは減りません。まずは公共のごみ箱を設置し、行政として最低限の取り組みをしたうえで、店頭のごみ箱設置や路上ごみ回収に補助金を出すといったやり方なら賛同できますが、現状は区の責任をコンビニ側へ押し付けているだけ。街からごみがなくなれば、利権関係にある清掃事業者にも仕事が与えられなくなってしまう。区の方針は根本的にごみをなくすことには消極的で、責任転嫁の場当たり的な対応に見えてしまうのは、私のうがった見方でしょうか」

 渋谷の路上からごみが消える日は来るのか、果たして。

次のページへ (2/2) 【写真】路上に積み上げられたごみの山…清掃活動で見た渋谷の惨状
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