小5で突然始まったいじめ…見て見ぬふりの担任 「母がいなければ」57歳の今もよみがえる記憶

小学5年生のある日、何の前触れもなしに、クラスの友達が口を聞いてくれなくなった。ただただ無視され、つらい時間は10か月も続いた。マンション販売や大手生命保険で“伝説のセールスマン”と呼ばれ、狭心症で倒れて意識不明の大病から復帰を果たした、投資家の中元大さん。57歳になる今も、いじめ被害の記憶がよみがえることがあるという。今年の年明けから、いじめや暴行動画のSNS拡散が相次ぎ、“ネット私刑”が世間を揺るがしている。母に支えられた自身の経験と社会へのメッセージを聞いた。

いじめ被害経験のある中元大さんが社会へのメッセージを寄せた【写真:本人提供】
いじめ被害経験のある中元大さんが社会へのメッセージを寄せた【写真:本人提供】

「生意気だよな」から始まった壮絶いじめ

 小学5年生のある日、何の前触れもなしに、クラスの友達が口を聞いてくれなくなった。ただただ無視され、つらい時間は10か月も続いた。マンション販売や大手生命保険で“伝説のセールスマン”と呼ばれ、狭心症で倒れて意識不明の大病から復帰を果たした、投資家の中元大さん。57歳になる今も、いじめ被害の記憶がよみがえることがあるという。今年の年明けから、いじめや暴行動画のSNS拡散が相次ぎ、“ネット私刑”が世間を揺るがしている。母に支えられた自身の経験と社会へのメッセージを聞いた。

 きっかけは今でも分からない。「ある日を境に、誰も話してくれなくなりました。ドッジボールをすれば執拗(しつよう)に狙われ、鬼ごっこをすればずっと鬼の僕を置いて全員が帰ってしまう。朝6時に野球をやろうと誘われて行ったら、グラウンドには僕一人。休憩時間も昼休みも誰とも話せない。そんなことが10か月続きました」

 勉強もスポーツもあまりできなかったが、明るく人好きのする性格。それまでみんなと仲良く学校生活を送ってきた。だが、クラスの中心的な男子から嫌われてしまったらしい。「後から聞いたのですが、『中元って生意気だよな』『あいつと話したら仲間外れにするぞ』。そんなふうになって、いじめが始まったそうです。存在がないように無視される。精神的ダメージは本当にきついものでした」。

 当初、教師は見て見ぬふり。救いだったのは、母の存在だった。学校での異変を知るようになり、「お母さんはあなたの味方だからね」と寄り添い続けてくれた。「優しく声をかけてくれる母がいなければ、命を絶っていたかもしれません」と振り返る。ずっと1人で寂しかったが、それでも学校を休むことなく、6年間無遅刻・無欠席で卒業した。

 不思議なことに、集団による無視はあっけなく終わった。「母が担任の先生に相談したと思うのですが、ある日いきなり学級会が開かれました。担任の先生が『なぜ中元君をいじめるのか』を議題にして、話し合って、最後は『明日から仲直りしましょう』で終わり。次の日からほとんどの男の子たちと普通に話せるようになりました。今でも信じられないぐらいです」と振り返る。

 守ってくれるはずの先生の“無関心”。「なんで先生は最初からきちんと対応してくれなかったのか。今でも解せません。今、教師たちの過労が問題になっているのは分かっていますが、学校の先生たちには、子どもたちのケアにもっと目を向けてほしいと思っています」。

 いじめ被害はトラウマとなり、人生に影を落とした。自信喪失、人間不信。「人の目を気にするようになり、中学校時代はとにかく目立たないように過ごしました。高校は別の地区に行ったので明るくなれましたが、『他人にどう見られているのか。他人によく思われたい』。そんなふうにばかり考えて生きるようになってしまいました」。

 大学卒業後は営業マンの仕事に就き、他人から評価される年収・数字を追い求め、顧客ありきで自分を押し殺し続ける人生を送った。独立起業後に、年収6000万円まで到達したが、人間関係の悪化などでビジネスが頓挫。48歳の時に狭心症で倒れて4日間意識不明になり、生死をさまよった。復帰後の現在は「他人にどう思われようと気にしない。いつ死ぬか分からないからこそ、今、自分が選べる中でベストな時間を大切に生きたい」と、投資家として自分のペースを大事に人生の歩みを進めている。

暴力に走る背景に「親の愛情不足」

 今も止まない、全国でのいじめ被害。今年に入り、SNS上では未成年者のいじめ暴行動画の投稿が相次ぐ。被害者が暴力を受ける姿が無限に拡散され、まるで制裁のように加害者の実名や顔写真がさらされる。そんな“正義感の暴走”のような現象が広がりを見せている。

 中元さんはSNSでの私刑の連鎖について、「まず被害者保護が大事です。いじめた側、暴力の加害者が悪いのは当然です。自分のやった責任に向き合うべきです。しかし、いじめを面白おかしく拡散して、インプレッションを稼ぐ行為は許されません。このままでは、もっと数字を稼ごうと、暴力がエスカレートしかねません」と話す。

 プラットフォーム側にも強い責任があると指摘。「社会がダメだと言っても、いじめ暴力動画がどんどん広がっています。それに、今のSNSは切り取りばかりで、真相が分からない情報にあふれています。ネット社会は自由であることは大切ですが、何をやってもいいということではありません。AIの技術が進歩している今、しっかりチェックできるはずです。暴力動画は見つけて消す。こういった社会的配慮が求められているのではないでしょうか」。

 親の愛情の大切さをかみしめているという。「他人をいじめたり、弱い者に暴力を振るう子は、親の愛情不足が背景にあると思っています。自分が満たされず、親からの愛情に飢えているのではないでしょうか。子どもが暴力に走ってしまわないよう、親・保護者が子どもとの関係を見直して、立ち直っていければ。そう願っています。これは僕の考えですが、親自身が幸せに生きることで、子どもを幸せにすることができます」と強調する。

 離婚・再婚を経験し、連れ子を含めて5人の子を育て、接してきた中元さん。いじめを受けたり、学校でつらい思いをしている子へ向けて、「なかなか自分のことを話すことは難しいかもしれませんが、親、先生、周囲の大人に相談してほしいです。警察に通報することも手段の一つです。今は苦しいかもしれないけど、必ずよくなるから。未来を信じてほしいです。早まって自分を傷付けないでほしいです。つらい時間はずっと続くわけではありません。僕はたまたま学校に通い続けましたが、無理して学校に行かない。そんな選択肢もあると思います。逃げてもいいんだよと伝えたいです。それに、人生は可能性の連続です。学校に行っても行かなくても、自分の好きなこと、得意なことを追求してほしいです」と語りかけた。

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